猫のペット保険には、大きく分けると2つのタイプがあります。通院・入院・手術の3つを補償するフルカバー型と、「通院のみ」「入院・手術のみ」といった補償範囲を限定した特化型です。
今回は、猫のペット保険のタイプ別の補償範囲と、それぞれのメリット・デメリット、加入前に知っておきたいポイントなどを解説します。
もくじ
フルカバー型とは、通院や入院、手術の治療費が補償対象となるペット保険です。日常の通院治療だけでなく、入院や手術などを含めた幅広いリスクに1つの保険で備えられます。
例えば、補償対象になるものは以下の通りです。
ただし、ペット保険によって補償対象となる治療費は異なります。特に、時間外診療費が補償されるペット保険は少ないため、補償範囲については必ず事前に確認することが大切です。
フルカバー型のメリットは、入院や手術だけではなく、通院を含めた補償対象となる治療全般が補償される点です。病気やケガの症状によっては、通院だけでなく入院が必要になったり、手術が必要になったりするケースがありますが、そんな場合でも安心して治療を続けられます。
例えば、猫がかかりやすい病気に腎臓病や尿路結石症があります。これらは通院治療が中心となり、症状をみながら長く付き合っていく必要のある病気で、症状が重くなると入院や手術が必要になることもあります。幅広い補償内容をカバーするペット保険に加入しておけば、飼い主さんの経済的負担も軽減されます。
飼い主さんの中には「手術のみ」といった特化型のペット保険に加入したあと、「不安だから」と他のペット保険に追加で加入するケースもみられます。ただ、ペット保険の掛け持ちは、結果的にトータルの保険料が高くなることもあります。特にペットが高齢になると保険料も上がるため、事前の確認が必要です。
フルカバー型であれば、複数の保険に加入するよりも保険料を抑えられるでしょう。
フルカバー型のデメリットは、補償範囲が広いことから、保険料が高いものもあります。窓口精算に対応している保険など補償内容や利便性が高いものを求めるほど、保険料も高くなります。保険料が気になる場合は、求める補償内容やサービス内容と不要な内容の精査が必要になるでしょう。
また、高齢になった際に保険料が高額になり、類似した補償内容で安い保険に乗り換えを検討する人もいます。加入時に高齢になったときの保険料も見ておきましょう。
入院・手術特化型は、入院と手術のみを補償するペット保険です。通院は補償外になるものの、その分、高額になりやすい入院や手術が補償されます。
入院・手術特化型は、入院と手術の両方に備えられる点がメリットです。手術を受けるケースでは、入院が必須になることも少なくありません。入院と手術は治療費が高額になりやすいため、保険で備えられる点は経済面での安心感が大きいといえます。
入院・手術のみを補償する保険のデメリットは、通院が補償されない点です。そのため、継続的な通院が必要な病気やケガの場合には自己負担額が多くなってしまいます。また、入院や手術は通院よりも発生頻度は少ないため、毎月の保険料によってはもったいないと感じる可能性もあるでしょう。
入院・手術特化型のペット保険から通院補償のあるペット保険に乗り換える場合は、慢性疾患などの既往症があると、新規加入は難しい可能性があります。補償内容を重視する場合は、健康なうちから手厚い補償を選ぶことが大切です。
また、歯科疾患や遺伝性疾患(膝蓋骨脱臼や椎間板ヘルニア)などが補償になっているか、年間の限度額や利用回数、限度額に達してしまった場合も保険契約が失効してしまう恐れはないか、なども確認しておくと安心です。
手術特化型は、手術のみを補償するペット保険で、通院や入院の補償は受けられません。猫の手術は頻度が少ない傾向にあるものの、1回の費用が高額になる可能性があります。
手術特化型のメリットは、安い保険料で高額な手術に備えられる点です。手術費は数十万円になる場合も珍しくありませんが、手術特化型であれば万が一の際も自己負担額を減らすことが可能です。
月々の保険料を抑え、手術が必要な大きな病気やケガのみに備えたいと考える飼い主さんに向いているといえるでしょう。
手術特化型のデメリットは、通院や入院の治療費が補償されない点です。手術が必要となるケースでは、手術の前後に入院や通院を伴うことがほとんどです。手術費はカバーされても、入院や通院で自己負担額が多くなる可能性があります。
手術特化型のペット保険は多くありません。加入を検討できるペット保険の選択肢が限られてしまう点は注意が必要です。
また、猫の平均手術費用は、1回あたり約19万円ともいわれています。1回あたりの保険金支払額が十分にあるか確認しましょう。
猫のペット保険の補償内容はさまざまです。そのため、どのタイプの保険を選べばよいか迷う飼い主さんも多いでしょう。
ここでは、通院・入院・手術の3つを補償するフルカバー型と特定の治療費を補償する特化型、それぞれに向いている人の特徴を解説します。
フルカバー型の保険が向いているのは、充実した補償を求める人です。通院・入院・手術の3つが補償されるため、愛猫が突発的な病気やケガに罹患しても、補償対象の傷病であれば自己負担額を抑えることができます。
フルカバー型のペット保険は補償が充実している一方、保険料は高いものから安いものまでさまざまです。補償内容と保険料のバランスを見て判断するのがおすすめです。
また、ペット保険の多くは通院・入院・手術を補償します。「さまざまな選択肢の中から、愛猫に合ったペット保険を選びたい」という人にはフルカバー型が向いているといえます。
特化型のペット保険は、保険料を抑えて必要な補償のみが欲しい人に向いています。特化型はフルカバー型と比較すると、保険料が安くなる場合が多いからです。
ただし、通院補償のないペット保険は、保険料が安くなったとしても慎重に加入を検討することが大切です。猫は腎臓病など泌尿器系の病気にかかりやすく、長期の通院が必要になることも珍しくありません。高額になる通院が増えた場合にどうするかを考えておく必要があります。
経済的にある程度の蓄えがあり「日常的な出費は自己負担でも問題ない」という人は特化型が向いているといえるでしょう。また、すでにペット保険に加入しており、乗り換えは希望しないものの補償を手厚くしたいという人にも特化型が役立つでしょう。ただし、重複加入が可能かという点と、実際の治療費を超える保険金は受け取れないという点に注意が必要です。
猫のペット保険が必要かを検討する上で役に立つのが、猫の平均寿命と平均医療費です。
ここでは、信頼性のあるデータを用いて、それぞれを詳しく解説します。また、実際の保険金の支払い事例もご紹介します。
猫の平均寿命は15.79歳とされ、2010年と比べて1.43歳も延びています(※)。医療技術の進歩やペット保険の普及により、平均寿命は今後も伸び続けると想定されます。
愛猫と一緒に過ごせる時間が増える一方、年を重ねるごとに病気やケガのリスクが高くなるのは人も猫も同じです。また、高齢になるほど、命に関わる深刻な病気やケガに罹患する可能性が高く、治療費も高額になるかもしれません。
ペット保険に加入していない場合、猫の治療費は全額自己負担です。自己負担を減らしたいと考えるのであれば、ペット保険への加入がおすすめです。
※一般社団法人ペットフード協会|令和5年(2023年)全国犬猫飼育実態調査
猫の1回あたりの平均治療費は、通院・入院・手術によって大きく変わります。
<犬猫の1回あたりの平均治療費>
手術費 | (犬)20万0,515円 (猫)19万1,571円 |
入院費 | (犬)10万0,495円 (猫)10万1,397円 |
通院費 | (犬)1万3,739円 (猫)1万2,402円 |
手術費と入院費は、通院費に比べて高くなる傾向があります。
とはいえ、「いつもの通院費は安いから通院補償は必要ない」と考えるのはあまりおすすめできません。通院は何度も繰り返すことが多いからです。病気の症状によっては、年間に10回以上通院することもあります。例えば、不調の原因が特定できない場合など、検査が必要になると通院でも数万~数十万円の治療費がかかることもあるでしょう。
猫の病気やケガの治療費は、1回の通院のみであればそれほど高額になることは少ないものの、病気の種類や症状、回数によっては結果として高額になる可能性があります。
ここでは、治療費が高額になった事例をご紹介します。
異物誤飲で2日間入院し、手術を伴いました。
入院2日間、手術1回
治療費総額 | 11万0,484円 |
ペット&ファミリー損保のペット保険、「げんきナンバーわんスリム プラン70」に加入していた場合、自己負担額例は以下の通りです。
お支払い保険金 | 7万0,339円 |
自己負担額 | 4万0,145円 |