犬の肉球が赤いとき、何らかの炎症がおきている可能性があります。肉球を何度も舐めたり噛んだりしている場合は、かゆみや痛み、不快感があることも考えられます。犬の肉球が赤いときに考えられる原因、対処法を解説します。
もくじ
肉球には人間の靴のような役割があり、体重がかかる足や手先を保護しています。
厚くてやわらかく弾性に富む組織の皮膚(角質層)でおおわれ、その奥は柔らかい脂肪組織でできています。
このような構造により、犬が走ったり飛び跳ねたりした際に足の関節や骨などにかかる衝撃を吸収し、衝撃を和らげるクッションの役目をしています。
肉球の地面に接する部分に毛は生えておらず、肉球の表面には表皮(皮膚の一番外側)が発達した乳頭(にゅうとう)と呼ばれるざらざらした突起物があります。
この突起物のおかげででこぼことした触り心地になっており、地面との摩擦が生み出され、走っている最中にブレーキをかけても滑らずに止まることができます。
肉球にも神経や血管が多数分布しており、地面の状態、温度を感じ取れます。
肉球内部は毛細血管を通さず、動脈と静脈が直接繋がっており、肉球裏の静脈が冷えても動脈を通る血液で温め直すことが可能です。
そのため、地面の熱や冷気による影響をある程度緩和でき、寒い場所でも元気に走れるのです。
肉球には、犬の体の中で唯一、エックリン汗腺という汗を作る器官が存在しています。
犬は主に舌を出してハァハァと呼吸(パンティング)することで、熱を外へと排出させますが、呼吸ととともに肉球に汗をかくことでも体温の調節を行えるようになっています。
また、人と同じように緊張によっても肉球に汗をかきます。
「かゆみ」「痛み」など、本人にとって違和感や不快感があるときに見られる行動です。
あまりに頻繁に舐めると、唾液成分の反応で肉球周辺の毛の色が涙焼けのように赤茶色に変色することがあります。
舐め続けることで肉球の表面は赤みを増し、腫れたり、ジュクジュクと浸出液が出てきたりします。外傷をともなう場合は、出血が見られることもあります。
肉球が赤いだけでなく痛みを感じていると、足をひきずったり、足を蹴り上げたりするような行動をすることがあります。
散歩などの日常生活で歩こうとしなかったり、痛みに敏感な犬は元気や食欲が低下したりする場合もあります。
肉球が細菌感染を起こすとにおいがきつくなります。悪化すると膿が出て、悪臭につながります。
肉球の赤みがアレルギーや内分泌疾患によって引き起こされている場合、体のほかの部位でも症状が起きることがあります。
原因によっては、肉球の間が炎症を起こし(指間炎)赤くなる場合や、肉球以外も赤くなるなど全身症状が現れる場合もあります。
環境の変化や留守番など飼い主さんとのコミュニケーション不足によるストレス(精神的要因)で手先足先、お腹や太ももを舐めて炎症を起こすことがあります。
初期なら舐める際の唾液で毛や皮膚が赤茶色に変色するだけですが、かじるようになってしまうと脱毛や皮膚炎につながる可能性もあります。
犬がストレスや不安を抱えていると行動に変化が見られる場合があります。日頃から様子を確認し、変化に早く気づいてあげましょう。
「泥や湿った場所を歩く」「不衛生な飼育環境」など、肉球が常に汚れたり濡れたりしている状態が続くと、細菌感染が起こりやすくなります。
湿度の高い季節や環境下で肉球の間の通気性が悪い状態が続くと、細菌感染が起こり指間炎を引き起こしてしまう場合もあります。
細菌や真菌(カビ)、外部寄生虫の感染で指間炎が起きます。まれにホルモンに関わる内分泌疾患、自己免疫疾患、腫瘍などの基礎疾患が原因となっている場合もあります。
皮膚に赤みや腫れ、かゆみを引き起こし、特に細菌感染症の場合、脱毛や悪臭があることが特徴的です。
感染症が原因であれば、抗生物質の処方や抗菌作用のあるシャンプー療法が行われます。基礎疾患が原因の場合は、その疾患の治療を行います。
原因や状態を自己判断することは避け、まずは獣医師に相談しましょう。
食物アレルギー、ハウスダストや花粉、植物、ノミなどの環境要因によるアレルギー反応(アトピー性皮膚炎)で肉球が赤くなっている場合があります。
肉球の赤みだけでなく顔や体などほかの部分の腫れや蕁麻疹、嘔吐や下痢などが見られるときは、重度のアレルギー反応を起こしている可能性があります。
早期の治療が必要なため、すぐに動物病院を受診しましょう。
食物が原因の場合、症状は通年性のかゆみがよく見られ、1歳以下で発症することが多いです。皮膚症状以外に、下痢や嘔吐、排便回数の増加などの消化器症状も併発することがあります。
原因となる食材や成分を避けた食事に変更し、症状の改善があるかを確認(除去食試験)します。
改善後、再度以前の食事に戻し(負荷試験)、皮膚症状の再燃が認められれば、以前の食事に対する食物アレルギーを診断できます。
ハウスダストや植物などの環境要因によるアレルギー反応の場合は、原因となるもの触れないよう工夫をしながら、ステロイド薬や、かゆみ止め薬などでかゆみをコントロールすることが重要です。
炎天下のアスファルトや砂浜などの散歩が火傷につながることもあります。肉球が火傷すると、痛みを和らげるために何度も肉球を舐めることがあります。
特に真夏日の地面は人間の体感温度よりも熱いため、夏は散歩の時間帯を早朝や日が陰って涼しい時間帯にずらすなどの工夫をしてあげましょう。
肉球に植物やとげ、ガラスのような鋭利なものが詰まったり刺さったりする、肉球の間の毛をバリカンでカットする際に傷つくなど、散歩やトリミングで外傷を負うこともあります。
肉球の傷が炎症を引き起こすと痛みや違和感が生じ、痛みを和らげるために何度も肉球を舐めてしまいます。
爪が伸びすぎて先端が皮膚や肉球に食い込み、痛みや刺激を引き起こす場合もあります。
何かに引っかかって爪がはがれ、出血したり痛みを生じたりして傷を舐め、炎症につながることもあります。
「肉球が赤い」「痛がる」「舐める」「びっこをひく」などの症状が出たら、まずは動物病院を受診しましょう。
動物病院では、問診・視診・触診などで外傷や火傷、関節炎の有無をチェックし、顕微鏡検査で細菌・真菌の感染を調べます。飼育環境や犬の性格等から心因性の可能性も検討します。
患部周囲の毛を刈り、洗浄した後、赤みの程度や原因に応じて治療し、心因性が疑われる場合は環境の改善を行います。
ぬるま湯とコットンで患部を洗浄します。乾燥が気になるようなら、ワセリンや肉球クリームで保湿します。
頻繁に塗ったり、一度に大量に塗ったりして不快感が増すと逆に舐める原因となるため、少量を薄く塗るようにしましょう。
肉球の間の被毛が伸びて肉球表面を覆っていると滑りやすくなります。濡れると蒸れて細菌が増殖しやすくなるため、定期的にカットしましょう。
炎症や感染を起こしている場合は治療が必要です。動物病院を受診しましょう。
外用薬を使用する際、薬で余計に気になって舐めてしまう子もいます。食事前や散歩前など、犬が気を紛らわせられるタイミングで行うとよいでしょう。
エリザベスカラーや特別な靴下を使用し、赤くなった肉球を舐めたり噛んだりしないよう対処しましょう。
まずは肉球を清潔にすることが重要です。散歩後には手足を拭いたり洗ったりする、皮膚が濡れたら放置せずにすぐに水分をふき取りましょう。濡れたまま放置すると乾燥の原因にもなります。
また、定期的に手足を薬用シャンプーで洗ってあげることは指間炎対策にも効果的です。
散歩時間の変更を検討しましょう。暑い時期は、時間帯や歩く場所など飼い主さんが工夫してください。
早朝や深夜に散歩し、冬は霜焼けを予防するために雪や氷を避けることが大切です。
定期的なトリミングで肉球付近の衛生管理もしてください。定期的に爪を切ることも忘れないようにしましょう。
肉球周りの毛が長すぎると、滑りやすいだけでなく地面に触れて汚れやすく、感染症などを引き起こすことがあります。伸びた爪は肉球に食い込む可能性もあります。
肉球の乾燥やひび割れの予防として、ワセリンや保湿クリームを塗ると、肉球の保湿性が高まります。
精神的なストレスや不安による行動で肉球が赤くなっている場合は、コミュニケーションを十分に取り、遊んだり散歩したりする時間を増やすと、ストレスや運動不足を解消でき、安心につながるかもしれません。
犬の肉球が赤くなっているときは、何らかの炎症がおきているサインが考えられます。何度も肉球を舐めたり噛んだりするようなら、かゆみや痛み、不快感がないかチェックしましょう。
動物病院で診てもらうと安心です。