便は健康のバロメーターといわれています。そのため、愛犬のうんちが黒いと、すぐに受診すべきか心配になることでしょう。黒いうんちは様子を見ていてよい場合もあれば、病気が隠れていて早めに病院を受診したほうがよい場合もあります。今回は、犬のうんちが黒いときに考えられる原因、病院受診の目安、対処法を解説します。
もくじ
レバーのように鉄分が多く含まれた食品を食べる、貧血治療に用いられる鉄剤や下痢の治療に用いられるビスマス製剤、鉄分が含まれるサプリメントを飲んでいると、便が黒くなることがあります。
原因と考えられる摂取物があれば病気の可能性は低いため、様子を見てもよいでしょう。
黒っぽいこげ茶色の便ではなく炭のように真っ黒な便、粘り気があって黒いコールタールに似ている「タール便」がみられる場合、胃や十二指腸などの上部消化管からの出血が疑われます。
大腸など肛門に比較的近い消化管や肛門からの出血なら便に血が混じったり、赤い血が付着したりすることがあります。しかし、肛門から遠い場所で出血していると、便全体が黒く見えるようになります。
これは、体の外に出るまで時間がかかり、血液が消化管を通る際に胃酸や消化酵素の影響を受けて黒色に変化するためです。
このような便が出ている場合は、便を持参するか写真を撮るかして、早めに動物病院を受診しましょう。
串のように尖った物、割れたプラスチックなどを誤飲し、異物が胃腸を傷つけて出血すると便が黒くなります。幼犬や若齢犬、異物を口に入れる癖がある犬などで見られます。
胃や小腸にただれ(潰瘍)ができて出血すると、便が黒くなります。
重度の胃炎や、胃腺癌(いせんがん)、ガストリノーマ(癌の一種で胃酸の分泌を刺激するホルモンが過剰に分泌される病気)などで胃潰瘍が発症しやすいです。
食欲不振や嘔吐、吐血があります。重度の場合は黒いタール便が見られ、胃に穴が開いて危険な状態になることもあります。
下痢や嘔吐といった消化器の症状が3週間以上続く、原因不明の慢性胃腸炎を慢性腸症といいます。慢性腸症はどのような治療で改善するかによって以下の4つに分類されます。
分類 | 分類方法 |
食事反応性腸症 | 食事の変更で改善する場合 |
抗菌薬反応性腸症 | ・抗生剤や食物繊維・オリゴ糖などのプレバイオティクス ・ビフィズス菌・乳酸菌などのプロバイオティクス により改善する場合 |
免疫抑制薬反応性腸症 | ステロイド等の免疫抑制剤のみで改善する場合 |
治療抵抗性腸症 | 上記の治療で改善がない (腫瘍を発症している場合がある) |
腸粘膜の炎症は、腸粘膜の過剰な免疫反応や腸粘膜のバリアの異常、腸内の細菌の構成の変化、免疫反応を引き起こす食物の成分等の複数の要因が関わって引き起こされます。
胃や十二指腸などの上部消化管での炎症が重度であれば、便が黒くなることがあります。
胃や小腸などの上部消化管に腫瘍(しゅよう)ができて出血すると、便が黒くなります。高齢で起こる傾向があり、犬はリンパ腫が多いです。
食欲不振や嘔吐、体重減少、吐血などが見られ、消化管内腫瘍の場合も炎症が重度であれば便が黒くなることがあります。
中毒を起こす可能性のある物を摂取して胃腸に炎症が起こり、出血すると便が黒くなります。
血液が固まるのを予防する薬(抗凝固剤)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)など、特定の薬剤の副作用によって出血が引き起こされることがあります。
愛犬のうんちがいつもより黒いと感じたら、飼い主さんはどのようなことを確認すればよいでしょうか。
まずは、普段と違う物を口にしなかったか、鉄分の多い物を食べなかったか思い起こしてみましょう。服用している薬やサプリメントがあれば、成分などを確認してください。
黒いうんちをする数日前に、いつもより肉類を多く与えていた場合や、獣医師からうんちが黒くなりやすいと説明を受けている薬やサプリメントなどを与えている場合には、一旦様子をみてもよいでしょう。
思い当たるものがない場合や、元気がない、食欲がないなど、うんちが黒い以外にも症状が出ている場合は、体のどこかで出血している可能性が考えられます。
便を持参するか、写真を撮ってすぐに動物病院で診てもらいましょう。
便の色のほかに、以下の症状があれば早めに動物病院を受診しましょう。
便は健康のバロメーターです。日頃から愛犬の便の色や硬さ、回数、状態をチェックしておくことで、愛犬の体調の変化にいち早く気づけます。
食べ物やサプリなどで一時的に便が黒くなることもありますが、胃腸からの出血が原因の場合もあります。出血が疑われたり、判断が難しかったりする場合は、すぐに動物病院で診てもらいましょう。