猫の病気は人と同じくたくさんの種類があり、1つの症状だけで特定の病気を言い当てることは基本的には困難です。そのため、日々ケアを行うことで、全身をチェックし「普通」が何かを知っておくことが異常を察知する上でも大切です。特に猫がかかりやすい病気の症状を知ることで、いち早く異変に気付き、動物病院を受診しましょう。
もくじ
子猫は免疫が安定するまで猫風邪などの感染症にかかりやすく、またペットショップなどの集団生活をしている場所から寄生虫などを連れてくる場合が多いです。
新しく猫を迎え入れる際は特に、ワクチンやノミダニの予防をしっかりすることが大切です。
また環境の変化によって、胃腸炎を起こしたり、活発で何でも口にしてしまうことから、外傷を負ったり異物を誤飲してしまったりすることも多いです。
成猫となると、尿石症や心筋症などの病気が少しずつ増加し、さらに高齢になると腎臓や甲状腺、腫瘍などの病気が増えてきます。定期的な健康診断を行うことで、早期発見に努めましょう。
ヘルペス、カリシといったウイルスや、クラミジアなどの細菌感染が原因に挙げられます。
感染症は、ワクチン接種である程度防げますが、免疫の整っていない子猫は細菌に感染・発症すると症状が重くなりがちのため注意してください。
逆さまつげなどの眼の構造の異常、異物が入った、誤って目をこすったといった場合でも、炎症が起き同じように目やにや涙が出ます。
外から見える範囲で炎症が起きると目が赤くなり、強い炎症が長く続くと眼の表面を覆う結膜がくっついて眼を完全に開けたり閉じたりすることができなくなります(眼球癒着)。
場合によっては眼に穴が開いてしまう(眼球穿孔(がんきゅうせんこう))こともあります。
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猫は眼に痛みを感じていると顔周りを触られるのを嫌がり、時には怒ったりします。代表的な原因として、角膜の傷や緑内障が挙げられます。
角膜に傷(角膜潰瘍)があると、眼をしょぼしょぼさせます。
緑内障にかかると、眼の中で作られては、排出される眼房水という液体が溜まり、眼球内の圧力(眼圧)が高まることで、強い痛みを生じます。
最終的には眼が大きくなったり(牛眼)、視神経を圧迫することで、失明したりすることがあります。
角膜の傷も緑内障も症状が軽い場合は点眼薬で治療を行いますが、症状が重い場合は麻酔をかけた処置や手術を行う場合もあります。
など
歯周病などの口の中の問題だけでなく、腎臓病の悪化など全身状態に関わることも挙げられます。
歯周病が進行し、口の中に汚れが溜まり細菌が繁殖することで、匂いがきつくなっていきます。定期的な歯磨きで口腔環境を清潔に保つことが大切です。
悪化した場合は、麻酔をかけて歯石除去を行い、歯の温存が難しい場合は抜歯を行います。
腎臓病が悪化し、本来腎臓から排泄される体に不要な物質が蓄積していくと尿毒症を引き起こします。体に溜まった不要な物質の匂いが口から感じられる場合もあります。
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歯肉炎や舌炎症などによる口の中の痛みや、異物によってよだれを垂らすことがあります。
熱中症では、よだれとともにハアハアと口を開けて呼吸をしたり、ぐったりしたりといった症状が現れることもあります。
また、てんかん発作の症状のひとつに口をくちゃくちゃさせて泡を吹くといったこともあります。病的なものではありませんが、投薬などで嫌いな味のもの与えると一過性によだれを垂らすこともあります。
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ヘルペスウイルスやカリシウイルスなどの猫風邪の原因となる病気から、異物、歯根のトラブルや腫瘍などによっても引き起こされます。
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くしゃみや鼻水、腫瘍が悪化することで出血が起こることが多いです。
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など
ノミアレルギー性皮膚炎やニキビダニ症などは、かゆみによって自身で舐めたりかき壊したりすることで脱毛します。
細菌感染(膿皮症)やカビの感染(皮膚糸状菌症)などは自然と毛が抜けていきます。また、内分泌疾患によって脱毛を示すこともあります。
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耳ヒゼンダニや外耳炎などが主な原因として挙げられます。
ヒゼンダニの感染によって耳垢が多くなることがあります。集団生活をしている子猫のときに感染することが多く、耳掃除をしても綺麗にならない、耳をかゆがるといったことから気づく場合が多いです。
また、細菌や真菌(カビ)の繁殖による外耳炎も、放置すると耳ダレ(耳から膿などの液体を排出)を起こし、中耳炎や内耳炎のように耳の中に炎症が波及することもあります。
構造的に耳垢が溜まりやすい子もいるため、定期的な耳の状態のチェックが大切です。
食物アレルギーなどの基礎疾患により、外耳炎を治療してもなかなか治らないということもあるため、耳だけでなく全身の検査を行う必要があります。
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など
胃に入る前に、食べたものを吐き出すことを「吐出(としゅつ)」、胃まで入った食べ物が吐き出されることを「嘔吐」といいます。
吐出は食道疾患(食道狭窄や巨大食道)によって引き起こされることが多いです。また、食事を一度に大量に食べることで、胃に到達する前に吐き戻すこともよくあります。
嘔吐は、胃腸炎や、異物誤飲、寄生虫、グルーミングにより毛を大量に飲み込むことなどでよく起こります。
食欲がなくなったり、下痢や軟便を併発することもあります。
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消化管の蠕動(ぜんどう)運動の低下によって引き起こされることが多く、放置していると結腸が拡張し巨大結腸症という病気になることもあります。普段から排便の様子や頻度を確認しておきましょう。
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高齢になると猫の3頭に1頭は罹患するといわれる非常に多い病気です。
腎臓病は機能のおよそ1/3程度にならないと症状を示すことはなく、多飲多尿から始まり、ステージが進行すると嘔吐下痢、場合によっては痙攣などを引き起こします。
定期的な健康診断でなるべくはやく腎臓病を発見し、進行度に応じたケア(食事療法や薬の投与)をすることで、今ある腎機能を維持することに努めます。
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腎臓から尿管・膀胱・尿道の中に結晶や結石ができる病気。結晶や結石が膀胱粘膜を刺激し、頻尿や血尿などの症状を引き起こします。
結石が尿道でつまって排尿が困難になる状態を「尿閉」といい、緊急性の高い状態になることもあります。
排泄した尿がキラキラして見えたり、ざらざらとした粒が見えたりすることで発見することもあります。
尿石症の原因となる結晶・結石には種類があり、一般的には、飲水量を増やし食事療法を行うことで維持管理を目指します。
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甲状腺機能亢進症
代謝を司るホルモンを分泌する甲状腺の機能が過剰になることで、年齢の割に活発である、体重が痩せてくる、攻撃的な性格になるなどの症状が見られます。
予防法はないため定期的な健康診断で早期に発見し、薬でコントロールすることが大切です。
猫コロナウイルスが突然変異を起こすことで発症する病気です。腹水や胸水がたまるウェットタイプ、体のあちこちに炎症を起こし肉芽腫を起こすドライタイプに分けられます。
数年前までほぼ100%が死亡する病気でしたが、近年治療薬が見つかり早期に発見・治療することで救命できるようになってきました。発症初期は特徴的な症状がなく、発熱、食欲がない、嘔吐、下痢などを引き起こします。
腎臓に嚢胞ができる病気。ペルシャ系やアメリカン・ショートヘアなどに起こりやすい遺伝性の疾患です。
涙が排泄される管(鼻涙管)が詰まったり細かったりするために涙があふれ、湿性皮膚炎を起こす病気。スコティッシュ・フォールド、エキゾチックショートヘアなどの短頭種に多いです。
スコティッシュ・フォールド、マンチカン、アメリカン・カールなどは、軟骨の形成がほかの品種と異なり、一般的な品種より外耳炎になりやすいといわれています。
前肢や踵の関節に骨瘤(骨のかたまり)ができる遺伝性疾患です。スコティシュ・フォールド、マンチカン、アメリカン・カールなどに多く、耳折れのスコティッシュ・フォールドは、100%発症します。
さまざまな病名を紹介しましたが、最も大切なことは、病気を予想することではなく、なるべく早く異変を察知し、動物病院へ連れていき、検査・治療をすることです。
猫は体調が悪いことを隠す生き物です。たいしたことないだろうと思い、動物病院へ行くことが遅れないようにしていきたいですね。