【獣医師監修】猫が震える原因を解説!考えられる病気や対処法とは
2024.09.10 作成

【獣医師監修】猫が震える原因を解説!考えられる病気や対処法とは

獣医師/ペット栄養管理士

岩切裕布

岩切裕布

愛猫が震える姿を見ると「可哀そう」と感じる飼い主さんは多いのではないでしょうか。一般的に震えは、体温を上昇させるための生理現象のひとつですが、それ以外にもさまざまな理由があります。愛猫を可哀そうと思うだけでなく、猫が震える理由をきちんと理解し、愛猫の体と心を守りましょう。

もくじ

    猫が震える原因は?

    【獣医師監修】猫が震える原因を解説!考えられる病気や対処法とは
    (Kashaeva Irina/shutterstock)

    寒さ

    震えは体温を上昇させるための生理現象のひとつです。外気温が低すぎると、生理的に体を震わせることで体温をあげようとします。

    完全室内飼育の猫が震えるほどの寒さの中で暮らしていることは少ないです。室内で猫が震えている場合は、寒さ以外の原因を探りましょう。

    ただし、子猫の場合は注意が必要です。体表面積が大きい子猫は体温調整が苦手で、成猫よりも温かい環境で過ごすことが推奨されます。室内全てを子猫に合わせて温める必要はありませんが、子猫が暖をとれる環境を整えましょう。

    ストレス、恐怖

    普段過ごしている家の中でも、近所で大きな音が出る工事を長期間している、花火大会があるといったことがストレスや恐怖になり、体を震わせることがあります。

    また、「このケージに入れられると動物病院を受診する」など、嫌だ、怖いと思う記憶が行為と紐づけされると、その行為をしようとするだけでも震えることがあります。

    痛み

    猫は痛みを隠すといわれ、犬に比べて痛みで声をあげることが少ないです。

    痛みがあると、運動量が減る、震えるなどの変化があるのが一般的で、震えるほどの痛みでは既に状態が悪化している可能性が高いです。寒くない環境で震えているようなら、早めの動物病院受診を検討してください。

    老化

    年齢を重ねると運動量や食欲が低下して筋肉量が落ち、体を支える筋肉量不足で震えることがあります。この震えは立ち止まっているときに起きるのが一般的です。

    変形性膝関節症による痛みが原因で震えることもあります。痛みがあれば運動量も減り、それがさらに筋肉量の低下を招くという悪循環に陥ります。

    年齢を重ねて運動量が落ちてきた場合は、痛みがないか動物病院で診てもらいましょう。

    愛猫の震え、実は病気かも?

    愛猫の震え、実は病気かも?
    (Kitirinya/shutterstock)

    寒さ、ストレス、老化などではなく、病気が原因で震える可能性もあります。低血糖や中毒など、一刻を争う状況もあるため、急に震えだした場合は早めの動物病院受診を検討しましょう。

    てんかん

    てんかんが原因で震えているかは、見た目だけでは分かりません。必ず動物病院の先生に相談して確認しましょう。

    てんかんには脳の構造的な異常(脳腫瘍など)による構造的てんかんと、検査をしても原因が特定されない「特発性てんかん」があります。

    てんかんと聞くと意識がなく、全身を大きく震わせるようなイメージがあるかもしれませんが、体の一部のみが震える部分発作もあります。

    発作のような症状が出たら動画を撮影し、かかりつけの先生に共有すると診断の手助けになることがあります。

    代謝性疾患

    低血糖

    血糖値が著しく下がり震えることがあります。特に子猫は、長時間の空腹で低血糖を引き起こし、命に関わるケースもあります。

    成猫でも糖尿病の治療でインスリンを投与しすぎて低血糖に陥ることもあります。低血糖の場合は、震えるだけでなく元気消失、ふらつき、意識の低下などが生じることがあります。

    腎臓病

    腎臓は体内の毒素を尿として排泄する役割をもち、腎臓の機能が低下すると毒素を排泄できなくなって尿毒症に陥ります。

    尿毒症になると気持ち悪い、食欲がない、だるいなどの症状や、体が震えることがあります。

    肝臓病

    アンモニアなどの体内の毒素を解毒する役割をもつ肝臓の機能が低下し、毒素が体の中に溜まって肝性脳症に陥ることもあります。

    肝性脳症になると、よだれが出る、気持ち悪い、ふらつき、食欲がないなどの症状と合わせて体が震えることがあります。

    中毒

    毒性がある物質を摂取することで中毒症状が出て、震えることがあります。摂取する中毒物質によって症状はさまざまですが、一般的に多いのは嘔吐、下痢、食欲不振、震えなどです。

    中毒の原因としてよく知られているネギ類やチョコレートはもちろん、観葉植物の球根や解熱鎮痛剤といった薬剤など、中毒を起こす原因は身近に存在するため誤食には極めて注意が必要です。

    愛猫が震えていたら?対策と対応

    愛猫が震えていたら?対策と対応
    (savitskaya iryna/shutterstock)

    最も重要なのは震える原因を把握し排除することです。病気の場合は動物病院で診断・治療することが最優先です。

    病気以外で愛猫が震えて辛い思いをすることがないよう、原因となりうるものを事前に把握しできる限り排除することを心がけましょう。

    環境に対する配慮

    寒さ

    人の体感はもちろん、室温計を置いて把握できるようにする、体温調整がしやすいよう温度差がある空間を自由に生き来できるようにするなど、適切な気温が維持できるようにしましょう。

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    ストレス、恐怖

    大きな物音がでる環境は猫が不安になるので避けましょう。動物病院の受診などストレスになることが予測される行為は、健康なうちから慣れるようにトレーニングすることも重要です。

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    老化

    老化による愛猫の変化に気づいてあげることが重要です。シニアになる前から定期的に健康診断を行い、シニアになってからは年に2回以上を目安に検診を受けましょう。

    検査結果に合わせて生活環境や食事内容の見直すことも大切です。

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    病気

    猫自身が「自分は病気だから動物病院に行って、治療をしなくちゃいけない」と思い立つことはありません。飼い主さんがいかに変化に気づいて、受診を先延ばしにしないかが重要になります。

    愛猫を守るためにも前向きな受診をおすすめします。

    まとめ

    愛猫が急に震えている場合は、SOSサインの可能性が高いです。震えが落ち着くかもしれないと何日も様子を見ていると、必要な治療が間に合わなくなることもあります。

    ずっと一緒に、元気に過ごしてもらうためにも、愛猫に震えなどの気になる症状があった際は動物病院を受診し、獣医師に相談してください。

    著者・監修者

    岩切裕布

    獣医師/ペット栄養管理士

    岩切裕布

    プロフィール詳細

    所属 yourmother合同会社 代表
    (獣医師によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)


    日本ペット栄養学会
    日本小動物歯科研究会
    日本獣医腎泌尿器学会

    略歴 1987年 東京都に生まれる
    2005年 麻布大学 獣医学部獣医学科に入学
    2011年 獣医師国家資格取得
    2011年~2016年 都内動物病院に勤務
    2017年~2018年 フードメーカー勤務
    2018年~ DC one dish 設立
    2020年~ yourmother合同会社 設立

    資格 獣医師免許
    ペット栄養管理士

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