猫はおしっこのトラブルが多いことで知られる動物です。異常があると、不適切な場所で排尿をしたり、回数、色、ニオイに変化があったりします。いつものおしっこの状態を把握することで、すぐに異変を察知できます。健康の指標として、日々注意を払いましょう。
もくじ
猫のおしっこには、体に不要な老廃物や有害物質、余分な水分を排泄する役割があります。
全身を流れる血液が腎臓の「糸球体(しきゅうたい)」でろ過され、おしっこの元(原尿)となります。原尿は、尿細管や集合管を通ることで、必要なものは再吸収され、まだ血液に残っている不要な物質を排泄する分泌という機能によって、尿となります。
原尿のほとんどは体に再吸収され、約1%程度が尿となって実際に体外へ排泄されます。
一般的に健康な猫のおしっこの回数は、1日あたり2~4回といわれています。猫はもともと乾燥地帯の生き物であるため、体に必要な水分を飲むことで確保することよりも、尿を濃縮し排泄を最低限にすることで、水分を維持しようとする傾向があります。そのため、なかなか水を飲まない猫もいます。
排尿回数が少ないと、尿道から細菌が膀胱へと上がってきやすくなり、細菌性の膀胱炎を引き起こすことがあります。また、水を飲む量が少なく尿が濃い状態になっていると、尿中のミネラル分があつまり、結晶や結石になりやすくなってしまいます。結晶や結石は、膀胱粘膜を傷つけ、こちらも膀胱炎の原因となります。
透明感のある濃黄色~淡黄色が普通です。飲んでいる水の量が少なく生成される尿が少ないと色は濃くなり、飲んでいる水の量が多く生成される尿が多いと色が薄くなります。
膀胱炎を起こすと膀胱壁の細胞や炎症細胞が尿中へ現れるため、尿が白く濁り透明度が低下します。膀胱炎の原因が結晶や結石の場合は、尿がキラキラと光ったり、ざらついたりすることがあります。
膀胱炎を放置すると出血を起こし尿が赤く色づきます。出血後長時間膀胱に貯留していた尿は、暗褐色と色が変化します。微量の出血では尿の色が変化しません。明らかに色が赤い場合は、すぐに病院へ受診しましょう。
猫のおしっこのニオイは独特。この独特なニオイは「尿素」と「フェニリン」という物質によるものです。尿素は放置すると細菌によりアンモニアへ変換され、アミノ酸の1種であるフェニリンは、空気に触れると「チオ―ル」という物質に変化し、尿のニオイの原因となります。
フェニリンは、縄張りを示したり、メス猫を引き寄せたりするフェロモンの元と考えられており、未去勢のオスの尿に多く含まれています。去勢済みのオス猫やメス猫と比べ、ニオイがきつく感じるのはそのためです。
尿のニオイが変化し、かつおぶしのようなニオイを感じる場合は要注意。膀胱炎を起こしている可能性が高いため、すぐに動物病院を受診しましょう。
排尿にストレスを感じて排尿回数が減ると、猫は膀胱炎になることがあります。
細菌性膀胱炎:膀胱内に細菌が繁殖することで起こる
尿路結石による膀胱炎:結晶や結石が膀胱壁を傷つけることで起こる
特発性膀胱炎:原因不明。ストレスが関与していると言われている。
排尿時に次の様子が見られるときは要注意です。
排尿時にトイレから体がはみ出ているのは、トイレが小さい可能性があります。理想的なトイレのサイズは、「猫の体長×1.5以上」といわれており、トイレの中で猫が方向転換できる余裕のある大きさが必要です。
お掃除が簡単な全自動のトイレは、猫の体に対して小さい場合が多いです。体のサイズに合ったトイレを選びましょう。
トイレ以外で排尿する際は、次の点が考えられます。
トイレのサイズを確認し、好みの猫砂を用意しましょう。鉱物系、紙系、木系・シリカゲルなどさまざまなタイプの猫砂が販売されています。
また、トイレを設置する場所も大切です。落ち着いてトイレができるよう静かな場所に設置し、暑かったり寒かったりしないよう室温に注意を払いましょう。
多頭飼育の場合は、猫同士の関係性により、トイレへ行くことがはばかられることがあります。いつもいる場所や、猫同士の関係も見ながらトイレの設置場所を考えましょう。
汚いトイレは使用したがりません。定期的に掃除を行いましょう。多頭飼育では、ほかの猫のニオイがついたトイレを使用しない場合があります。猫の頭数+1のトイレの数を用意するのが理想です。
縄張りをアピールするマーキング行為として、スプレー行為をすることがあります。多くは、発情による行動のため、不妊(去勢・避妊)手術を行わないと定期的にスプレー行為を行ってしまいます。不妊手術を検討しましょう。
トイレの時間が長い場合は、排尿・排便がスムーズにできていない可能性があります。トイレが小さく排便・排尿をする位置決めに時間がかかっている場合もあれば、便が固く、踏ん張っている時間が長い場合もあります。
排尿や排便に痛みを感じている可能性があります。ひどい膀胱炎にかかっていたり便が固かったりするときに多くみられます。すぐに動物病院を受診しましょう。
尿検査は猫の体に対する負担が比較的低く、費用もそれほど高くありません。血液による健康診断と一緒に尿検査もすることをおすすめします。
尿検査では次のことがわかります。
尿の濃い・薄いを数値で判断します。飲水量がしっかり確保できているかの確認や、腎臓病の症状である多尿を判断できます。
おしっこに糖が漏れていないかを確認します。糖尿病で陽性となります。
腎臓病が進行すると尿に蛋白が漏れ出ることがあります。UPC(尿蛋白クレアチニン比)という検査で数値化して評価することもあり、薬の投与や食事療法の開始の基準となります。
ビリルビンが過度に検出される場合は、肝臓や胆道系の病気が疑われます。
尿の酸性・アルカリ性を評価します。ストルバイトという結晶・結石は、尿を酸性にもっていくことで溶けるため、尿石症の食事管理の指標にもなります。
糖尿病や何らかの原因で食事がとれていない場合に陽性になることがあります。
猫は、人が認識していない「何か」にストレスを感じ、突然排尿トラブルを引き起こすことがあります。普段から猫の排尿状態に気を配り、異変があった場合にすぐに動物病院へ受診しましょう。
その際、環境に変化がなかったかなど思い返して、獣医師へ伝えることも大切です。
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