愛猫の目や、目の周りが赤いときの病気のサイン、原因、対処法を解説します。目の周りが赤い、充血している、目をショボショボしている、涙が多い、目を開けるのが痛そうなど、愛猫の目の症状は飼い主さんにとって気づきやすいもの。気になることがあれば、症状がひどくなる前に動物病院を受診しましょう。
もくじ
炎症が起こることにより血管が拡張(充血)したり出血したり、慢性的な刺激や損傷によって、もともとはなかった場所に血管が新しくできたり(血管新生)すると赤く見えます。
目の表面が赤いのか、目の中が赤いのか、まぶたが赤いのか、赤い場所によって考えられる病気が異なります。
など、まずは猫の目のどこが赤いのかを確認しましょう。
赤い場所によって考えられる原因を紹介します。
ただし、ひとつの症状から考えられる病気は多岐に渡るため、早めに動物病院を受診し必要な検査により診断・処置してもらうことが大切です。
目の表面が赤く見えるのは、炎症や充血、出血、血管新生(新しく血管が作られること)が起きているからと考えられます。
原因になる病気として結膜炎や角膜炎、ぶどう膜炎、緑内障、網膜剥離などが挙げられます。
目の中が赤い場合は、眼球内で出血が起きていると考えられます。眼内出血は失明を起こす可能性が高い状況です。
原因となる病気としては、重度のぶどう膜炎、緑内障、腫瘍、網膜剥離などが挙げられます。また、高血圧や心臓病、内分泌疾患を原因とした眼内出血が起こる時もあります。
まぶたが赤い時には、まぶたの炎症(眼瞼炎(がんけんえん))や腫瘍(しゅよう)が考えられます。
目だけでなくまぶたも赤い場合には皮膚の病気も考える必要があります。原因として外傷、感染、アレルギー性が考えられます。
まぶたの裏側の眼瞼結膜(がんけんけつまく)と、白目の上にある眼球結膜(がんきゅうけつまく)に炎症が起きている状態を結膜炎といいます。
結膜の充血や腫れ、涙・目ヤニが増えるため、しきりに目をこすったり、まぶたがくっついて開かなくなったりすることがあります。
結膜炎は猫風邪(猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス感染症)や猫カリシウイルス感染症)の症状のひとつでもあり、体調不良で免疫が低下したときに発症しやすいです。
猫ヘルペスウイルスは一度感染すると体内にウイルスを持ち続け、再発することもあります。再発予防のためにも3種混合ワクチンを受けましょう。
また、細菌(特にクラミジア)の感染、アレルギーや異物が目に入ることでも起こります。結膜炎が慢性化すると、涙が常に出る流涙症(りょうるいしょう)になる可能性があるため要注意です。
黒目の一番外側を覆っている膜を角膜といい、この角膜に炎症が起きている状態を角膜炎といいます。外傷や乾燥、異物、化学物質等何らかの原因で角膜に傷ができるなどのケガが原因の場合と感染症やほかの目の病気が原因の場合があります。
主な症状は、目の痛みや違和感によりまぶしそうに目を細める、しきりにまばたきをする、充血する、涙がたくさん出る、目が濁ったように見えるなど。
違和感や痛みで目を手でこすったり、どこかにこすりつけたりすると悪化してしまいますので気をつけましょう。
角膜に潰瘍ができる場合もありひどい場合には穴があいてしまいます。
ぶどう膜とは眼の内側の膜の総称で黒目の周りの眼球の色がついている部分の「虹彩(こうさい)」、水晶体を取り囲み水晶体の厚みを調節する「毛様体(もうようたい)」、白目の内側にある膜「脈絡膜(みゃくらくまく)」を指します。
ぶどう膜には血管が密に走っており、水晶体(レンズ)や硝子体など血管のない組織や網膜に栄養を供給する役割があります。このぶどう膜の中のどれか、またはすべてに炎症が起こった状態をぶどう膜炎といいます。
ウイルスによるものが多いですが、高齢猫では高血圧により発症することもあり原因は多岐にわたります。全身疾患のひとつの病状としてぶどう膜炎を発症している場合もあるため、隠れている病気を追求する必要があります。
症状としては目の充血、痛み、瞳孔が小さくなる、涙が増える、眩しそうに瞬きをする、目の中が白く濁る、などが現れます。
ぶどう膜炎が慢性化すると網膜剥離や続発性白内障、続発性緑内障等を引き起こし、失明につながることもあるため早期発見・早期治療が大切です。
眼球内の「眼房水(がんぼうすい)」と呼ばれる液体の流れが何らかの要因で阻害され、眼球内の圧力が異常に上昇し、視神経が圧迫され強い痛みを感じる病気です。
主な症状は、瞳孔がいつも開いている、目が大きく飛び出すなど。症状が進行すると、眼内出血などを起こし、視力低下や失明の恐れがあります。
猫の緑内障はほかの目の病気(ぶどう膜炎、網膜剥離、眼内出血など)や全身疾患をきっかけに発症することが多いです。
眼球内の圧力を下げることで、目の障害を抑えられますが、一度失われた視力は元に戻せないため早急に治療が必要です。
網膜(もうまく)とは、目の奥(眼底)の内側を覆う膜で、目に入ってきた光の情報を視神経から脳に送る役割があります。この網膜が剥がれる状態を網膜剥離といいます。広範囲の網膜剥離では、視覚異常や失明につながります。
猫の網膜剥離の原因の多くは全身性高血圧。慢性腎不全、甲状腺機能亢進症、肥大型心筋症など高血圧状態に陥る病気は、すべて網膜剥離の原因となりうるため注意が必要です。
腫瘍は目の中にも目の周りにも起こり得ます。眼球が発生源の悪性黒色腫(メラノーマ)やほかの部位で発生したリンパ腫が目に転移した腫瘍が挙げられます。
まぶたでの発生は猫では多くはありませんが、代表例に扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)が挙げられます。
眼球腫瘍はその存在に気付くのが難しく、確認ができたときには腫瘍はかなり大きくなって周囲に広がっていることが多いです。大きくなった腫瘍が眼球内を圧迫すると激しい痛みや眼球の変形など重篤な症状を起こし、最終的に眼球を取り出す手術必要になります。
角膜潰瘍や緑内障、ぶどう膜炎の原因が実は腫瘍だったという場合もあるため、日頃から目や目の周りをよく観察し、気になる症状があれば動物病院に連れて行きましょう。
眼瞼炎とは、目のふち部分、まぶた、まぶたの周辺に炎症を起こしている状態をいいます。上まぶたと下まぶたのどちらでも発症する可能性があります。眼瞼炎の原因としては、細菌感染、アレルギー、外傷、目の構造や機能の異常などが考えられます。
症状としては、目の周りの腫れ・赤み・かゆみ・脱毛・化膿、まばたき・涙・目やにが多くなるなどがみられます。結膜炎や角膜炎をともなう場合もあります。
猫同士のけんかや、物などが目に当たることなどが原因に挙げられます。外傷によってまぶたや角膜が傷つき、腫れる、赤くなるなどの症状のほか、皮膚から血が出る場合があります。
猫のアレルギーは、環境中のダニ、カビ、花粉、普段食べている食事やおやつに含まれる食材が原因で起こります。代表的なアレルギー症状はくしゃみや鼻水、涙、かゆみなど。
目に炎症が起きると、目の周りが赤くなる、目の中が充血するなどの症状が現れます。
アレルギーは強いかゆみをともないやすく、猫がかいて傷ができたり赤くなったりして症状が悪化する場合があるため要注意です。
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早期発見・治療が重要です。早めの対処で重症化を防止しましょう。猫の目の赤くなっている場所や原因によって使用する薬剤は大きく異なります。
目薬に含まれている成分によっては症状を悪化させてしまう可能性があるため、自己判断で自宅にある人用の点眼液を使用して様子を見るのではなく、すぐに動物病院を受診しましょう。
炎症や慢性的な刺激や損傷によって、目は赤くなります。赤い場所によって考えられる病気が異なり、ひとつの症状から考えられる病気は多岐に渡ります。
飼い主さんが判断せずに早めに動物病院を受診しましょう。必要な検査により診断・処置をしてもらうことが大切です。