猫の尿路結石は、年齢や性別に関係なく発症しやすい病気のひとつです。対応が遅れると、急性腎不全から尿毒症を引き起こし、命に関わります。猫のトイレの様子がおかしいと感じたら、尿の状態やトイレの頻度などをよく観察しましょう。猫の尿路結石の症状や原因、治療法や予防法を解説します。
もくじ
尿路結石とは、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)にできる結石のことをいいます。結石ができる部位によって「腎結石」「尿管結石」「膀胱結石」「尿道結石」と病名が変わります。
膀胱炎や、尿路閉塞の原因となるため、早期発見、早期治療が大切です。
特に、尿道が細いオスは結石が詰まって尿道閉塞を起こしやすく、2~3日で急激に悪化し、命に関わることがあります。一方でメスは尿道が太く、尿道に結石が詰まることはあまりないでしょう。
外科治療が必要になると治療費が高額になりやすいため、尿検査で結晶が見つかったら、大きくなって結石ができてしまう前に生活習慣を意識することで治療・再発の予防をしましょう。
小さな粒子である「結晶」が集まり、徐々に大きくなることで結石が形成されます。結石の成分は、若い猫に多い「ストラバイト」、中~高齢の猫に多い「シュウ酸カルシウム」の2つが代表的です。
結石は砂粒くらいの小さなものから、数cmの固まりまでさまざま。結晶化する成分によって対処法が異なります。
「ストラバイト」の正式名称は、「リン酸アンモニウムマグネシウム」です。尿のpHがアルカリ性に傾くと作られやすく、リンやマグネシウムが結晶化して結石となります。
尿を酸性に傾けると溶解するため、食事の工夫で結石を溶かすことができます。
尿のpHが酸性に傾くと作られやすく、カルシウムが結晶化して結石になります。
ストラバイトと違って食事の工夫では溶かせず、一度できると、排泄されるのを待つか、症状によっては積極的な外科処置の検討が必要になります。
尿酸アンモニウム、炭酸カルシウム、シスチン、シリカなどがあります。
結石で膀胱炎を生じることが多く、主に尿の状態やトイレの頻度に変化が表れます。
尿がキラキラとするのは、結晶成分の影響が考えられます。結晶成分が集まり大きくなって結石ができて尿道に詰まると、尿路閉塞を起こすことがあるため注意してください。
以下の症状がみられた場合には病院を受診しましょう。
また、結石が尿管や尿道に詰まって尿が全く出ない状態になると、体の中に毒素がたまって「尿毒症」になり、食欲の低下や嘔吐などがみられることもあります。その場合は、すぐに病院を受診しましょう。
水を飲む量が不足すると尿が濃くなり、結晶が結合して結石が形成されやすくなります。特に、冬場は寒さから飲水量が減りがちになるため注意しましょう。
食事の内容により尿のpHのバランスが崩れたり、結石の成分となりうるミネラルの過剰な摂取により結石が形成されやすくなったりします。
遺伝的にできやすい結石があり、ダルメシアンは遺伝的な尿酸の代謝障害により尿酸アンモニウム結石ができやすい傾向にあります。また、遺伝的なシスチンの代謝障害によりシスチン結石ができやすい犬がいます。
尿道が脂肪で圧迫されて狭くなると、結石が詰まり閉塞を起こしやすくなります。特に去勢手術後は、ホルモン量の変化によって肥満になりやすいため注意しましょう。
ストレスを受けた猫は、飲水やトイレの回数が減る傾向があります。尿が濃縮されて結石のリスクが高くなるため注意しましょう。
引越し、近隣の工事、同居猫の増加、トイレ位置の変更など、環境の変化が猫のストレスになっている可能性があります。
ストラバイトによる尿路結石は、食事で結石を溶かすことが治療の基本です。シュウ酸カルシウムの結石は食事では溶かせませんが、今後、シュウ酸カルシウムができにくくすることが大切です。
マグネシウム、カルシウム、リンなどの成分が多い食事をなるべく避け、結石に配慮されたフードを選びましょう。
尿道が詰まっている場合は、尿道口からカテーテルを挿入するといった処置をします。結石を膀胱に押し戻し、閉塞を解消することが第一優先です。
カテーテル処置で尿路の閉塞が解消されなかったり、療法食で溶けなかったりするタイプの結石は、手術で結石を取り除く必要があります。
また、オスで再発をくり返す場合は、ペニスを整形して尿道を短くする手術を行うこともあります。
尿石症は、生活習慣を意識することで予防が期待できます。尿路結石は治療後も再発しやすいため、生活習慣の見直しが重要です。
水をよく飲ませて排尿させることで、結石ができるリスクを軽減できます。
猫が欲する以上に水を飲ませるには工夫が必要です。常に新鮮な水を飲める環境を整え、冬場は水飲み場を増やしたり、ぬるま湯を与えたりするとよいでしょう。
ドライフードにお湯やスープを足したり、水分含有量が多いウェットフードをトッピングしたりするのもおすすめです。
水飲み場は猫がよく通る導線に複数か所設置し、多頭飼育なら少なくとも猫の頭数+1個は用意しましょう。
トイレを我慢させない環境づくりが重要です。トイレは静かで落ち着ける場所に設置し、常に清潔にしましょう。多頭飼育の場合は、猫の数+1のトイレ数が理想的です。
結石ができやすい場合は、結石に配慮したフードを与えることを検討しましょう。
肥満になると、水を飲みに行ったり、トイレに行ったりすることが億劫になり、水を飲む量や排尿する回数が少なくなることがあります。
食事量をコントロールし、室内でも運動ができる機会(キャットタワーの設置など)を作るなど、肥満に注意しましょう。
猫の尿路結石は、年齢や性別に関係なく発症しやすい病気のひとつです。対応が遅れると、急性腎不全から尿毒症を引き起こします。命に関わることもあるため、早期発見、早期治療が大切です。
猫の尿の状態やトイレの頻度などがおかしいと感じたら病院へ連れて行きましょう。再発防止のための生活環境や食事への配慮も重要です。