【獣医師監修】猫の尿路結石とは?病気の症状や原因・予防法を解説
2024.04.30 作成

【獣医師監修】猫の尿路結石とは?病気の症状や原因・予防法を解説

獣医師/ペット栄養管理士

森井知里

森井知里

猫の尿路結石は、年齢や性別に関係なく発症しやすい病気のひとつです。対応が遅れると、急性腎不全から尿毒症を引き起こし、命に関わります。猫のトイレの様子がおかしいと感じたら、尿の状態やトイレの頻度などをよく観察しましょう。猫の尿路結石の症状や原因、治療法や予防法を解説します。

もくじ

    猫の尿路結石とは?

    【獣医師監修】猫の尿路結石とは?病気の症状や原因・予防法を解説
    (Anbu-Creations/shutterstock)

    尿路結石とは、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)にできる結石のことをいいます。結石ができる部位によって「腎結石」「尿管結石」「膀胱結石」「尿道結石」と病名が変わります。

    膀胱炎や、尿路閉塞の原因となるため、早期発見、早期治療が大切です。

    特に、尿道が細いオスは結石が詰まって尿道閉塞を起こしやすく、2~3日で急激に悪化し、命に関わることがあります。一方でメスは尿道が太く、尿道に結石が詰まることはあまりないでしょう。

    外科治療が必要になると治療費が高額になりやすいため、尿検査で結晶が見つかったら、大きくなって結石ができてしまう前に生活習慣を意識することで治療・再発の予防をしましょう。

    結石の種類

    結石の種類
    (Evan Lorne/shutterstock)

    小さな粒子である「結晶」が集まり、徐々に大きくなることで結石が形成されます。結石の成分は、若い猫に多い「ストラバイト」、中~高齢の猫に多い「シュウ酸カルシウム」の2つが代表的です。

    結石は砂粒くらいの小さなものから、数cmの固まりまでさまざま。結晶化する成分によって対処法が異なります。

    ストラバイト

    「ストラバイト」の正式名称は、「リン酸アンモニウムマグネシウム」です。尿のpHがアルカリ性に傾くと作られやすく、リンやマグネシウムが結晶化して結石となります。

    尿を酸性に傾けると溶解するため、食事の工夫で結石を溶かすことができます。

    シュウ酸カルシウム

    尿のpHが酸性に傾くと作られやすく、カルシウムが結晶化して結石になります。

    ストラバイトと違って食事の工夫では溶かせず、一度できると、排泄されるのを待つか、症状によっては積極的な外科処置の検討が必要になります。

    その他

    尿酸アンモニウム、炭酸カルシウム、シスチン、シリカなどがあります。

    猫の尿路結石の症状

    猫の尿路結石の症状
    (Natasha Zakharova/shutterstock)

    結石で膀胱炎を生じることが多く、主に尿の状態やトイレの頻度に変化が表れます。

    尿がキラキラとするのは、結晶成分の影響が考えられます。結晶成分が集まり大きくなって結石ができて尿道に詰まると、尿路閉塞を起こすことがあるため注意してください。

    以下の症状がみられた場合には病院を受診しましょう。

    • 繰り返しトイレに行く(頻尿)
    • トイレに行くがほとんど排尿しない
    • 排尿姿勢をとってから尿が出るまでに時間がかかる
    • 尿が少しずつしか出ない
    • 排尿時に力み、痛そうに鳴く
    • トイレ以外の場所で排尿する
    • 落ち着きがない
    • ピンク色、濃い赤茶色の尿、明らかな血尿
    • 尿にキラキラしたものが混じっている
    • 尿が濁っている
    • いつもより尿の臭いがきつく感じる

    また、結石が尿管や尿道に詰まって尿が全く出ない状態になると、体の中に毒素がたまって「尿毒症」になり、食欲の低下や嘔吐などがみられることもあります。その場合は、すぐに病院を受診しましょう。

    猫の尿路結石の原因

    猫の尿路結石の原因
    (Yaya Photos/shutterstock)

    水分不足

    水を飲む量が不足すると尿が濃くなり、結晶が結合して結石が形成されやすくなります。特に、冬場は寒さから飲水量が減りがちになるため注意しましょう。

    食事の内容

    食事の内容により尿のpHのバランスが崩れたり、結石の成分となりうるミネラルの過剰な摂取により結石が形成されやすくなったりします。

    遺伝的素因

    遺伝的にできやすい結石があり、ダルメシアンは遺伝的な尿酸の代謝障害により尿酸アンモニウム結石ができやすい傾向にあります。また、遺伝的なシスチンの代謝障害によりシスチン結石ができやすい犬がいます。

    肥満

    尿道が脂肪で圧迫されて狭くなると、結石が詰まり閉塞を起こしやすくなります。特に去勢手術後は、ホルモン量の変化によって肥満になりやすいため注意しましょう。

    ストレス

    ストレスを受けた猫は、飲水やトイレの回数が減る傾向があります。尿が濃縮されて結石のリスクが高くなるため注意しましょう。

    引越し、近隣の工事、同居猫の増加、トイレ位置の変更など、環境の変化が猫のストレスになっている可能性があります。

    猫の尿路結石の治療法

    猫の尿路結石の治療法
    (Impact Photography/shutterstock)

    食事療法

    ストラバイトによる尿路結石は、食事で結石を溶かすことが治療の基本です。シュウ酸カルシウムの結石は食事では溶かせませんが、今後、シュウ酸カルシウムができにくくすることが大切です。

    マグネシウム、カルシウム、リンなどの成分が多い食事をなるべく避け、結石に配慮されたフードを選びましょう。

    尿道の詰まりをとる

    尿道が詰まっている場合は、尿道口からカテーテルを挿入するといった処置をします。結石を膀胱に押し戻し、閉塞を解消することが第一優先です。

    外科治療

    カテーテル処置で尿路の閉塞が解消されなかったり、療法食で溶けなかったりするタイプの結石は、手術で結石を取り除く必要があります。

    また、オスで再発をくり返す場合は、ペニスを整形して尿道を短くする手術を行うこともあります。

    猫の尿路結石の予防法

    猫の尿路結石の予防法
    (Bianca Grueneberg/shutterstock)

    尿石症は、生活習慣を意識することで予防が期待できます。尿路結石は治療後も再発しやすいため、生活習慣の見直しが重要です。

    飲水量を増やす

    水をよく飲ませて排尿させることで、結石ができるリスクを軽減できます。

    猫が欲する以上に水を飲ませるには工夫が必要です。常に新鮮な水を飲める環境を整え、冬場は水飲み場を増やしたり、ぬるま湯を与えたりするとよいでしょう。

    ドライフードにお湯やスープを足したり、水分含有量が多いウェットフードをトッピングしたりするのもおすすめです。

    水飲み場は猫がよく通る導線に複数か所設置し、多頭飼育なら少なくとも猫の頭数+1個は用意しましょう。

    トイレの環境を整える

    トイレを我慢させない環境づくりが重要です。トイレは静かで落ち着ける場所に設置し、常に清潔にしましょう。多頭飼育の場合は、猫の数+1のトイレ数が理想的です。

    食事を工夫する

    結石ができやすい場合は、結石に配慮したフードを与えることを検討しましょう。

    肥満を防ぐ

    肥満になると、水を飲みに行ったり、トイレに行ったりすることが億劫になり、水を飲む量や排尿する回数が少なくなることがあります。

    食事量をコントロールし、室内でも運動ができる機会(キャットタワーの設置など)を作るなど、肥満に注意しましょう。

    まとめ

    猫の尿路結石は、年齢や性別に関係なく発症しやすい病気のひとつです。対応が遅れると、急性腎不全から尿毒症を引き起こします。命に関わることもあるため、早期発見、早期治療が大切です。

    猫の尿の状態やトイレの頻度などがおかしいと感じたら病院へ連れて行きましょう。再発防止のための生活環境や食事への配慮も重要です。

    著者・監修者

    森井知里

    獣医師/ペット栄養管理士

    森井知里

    プロフィール詳細

    所属 yourmother合同会社
    (獣医師によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)

    日本ペット栄養学会

    略歴 1992年 三重県に生まれる
    2011年 麻布大学獣医学部動物応用科学科に入学
    2013年 麻布大学獣医学部獣医学科に転学科
    在学中、料理教室で講師を務める
    2018年 獣医師国家資格取得
    2018年 東京都内動物病院に勤務
    2019年~2021年 千葉県内動物病院に勤務
    2022年~2023年 東京大学附属動物医療センターで内科系研修医として勤務
    2023年4月~ yourmother合同会社に勤務

    資格 獣医師免許
    ペット栄養管理士

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