ペット保険の補償内容は大きく分けて、通院・入院・手術の3つがありますが、保険加入後の発症であれはアレルギー性皮膚炎の治療費も補償対象となるのが一般的です。ただし、アレルギー発症後は新規加入が難しくなったり、関連する病気が補償対象外になったりすることがあります。
そこで今回は、一般的なペット保険の補償内容をはじめ、犬がかかりやすいアレルギー性皮膚炎や外耳炎の原因と症状、犬のペット保険選びのポイントを解説します。
もくじ
一般的な犬のペット保険の補償範囲は、大きく分けて以下の3つです。
保険によって、通院・入院・手術の3つが補償されるフルカバー型と、「手術のみ」「入院・手術のみ」など補償範囲を限定している特化型に分かれます。特化型の場合、例えば「手術のみを補償する保険」であれば、入院や通院に対する治療費は補償対象外になり、入院や通院にかかった治療費は全額自己負担となります。
以下では、通院・入院・手術の3つの補償範囲について詳しく解説します。
通院補償は、愛犬が病気やケガで通院した際の治療費に対する補償です。
通院とは、入院や手術を伴わない診療目的で動物病院を訪れることを指します。補償対象となる治療費はペット保険ごとに異なりますが、治療のための処置、薬の処方、検査などの費用が補償されるのが一般的です。
通院補償のメリットは、治療費の経済的な不安を抑え、安心してペットを動物病院に連れていけるという点です。
犬の場合、下痢や軟便、外耳炎、皮膚炎などで通院する機会が多いため、日常的な通院の自己負担額を減らすことができます。愛犬の体調不良に気がついたとき、速やかに診察を受けられれば、病気やケガの早期発見や悪化の防止につながるでしょう。
入院補償は、愛犬が病気やケガで動物病院に入院した費用に対する補償です。入院時には、入院中の診察や処置費用、投薬費などのほか、愛犬が動物病院に宿泊する費用(入院料)が発生します。
長期にわたる治療が必要なケースや安静を要する病気やケガでは、入院を勧められることがあります。入院期間が長くなるほど治療費は高額となるため、入院を勧められても経済的な理由から自宅療養を選ぶ飼い主さんもいます。
しかし、療養中の愛犬を自宅で24時間看護するのは負担が大きく、飼い主さんの生活や仕事に影響を及ぼしかねません。入院補償が充実したペット保険に加入していれば入院中の治療費の負担を軽減できるため、安心して動物病院での入院治療を受けられるでしょう。
手術補償は、愛犬が病気やケガで手術が必要となった際にかかる手術費に対する補償です。ペットの手術費は高額になることが多く、経済的な理由から手術を諦める飼い主さんもいますが、手術補償があると安心です。
通院補償や入院補償が付いていない場合、手術前後の入院費用や、術前・術後・退院後の通院費用は補償の対象外となります。術後の通院が長引いたとしても、手術補償では補償されないため注意が必要です。
アレルギー性皮膚炎は、加入後の発症であれば多くのペット保険で補償対象となります。ただし、補償内容はペット保険によって異なるため、ペット保険の補償内容を事前にしっかり確認しましょう。
アレルギー検査については、皮膚のかゆみや炎症などの皮膚症状がみられ、その治療として獣医師が必要と判断しアレルギー検査を行う場合は補償対象です。しかし、症状を伴わず、飼い主さんの要望でアレルギー検査を実施した場合は補償対象外となるのが一般的です。
アレルギーとは、体内に侵入した異物から身を守る免疫機構が過剰に反応して現れる身体症状のことです。皮膚や眼のかゆみ、くしゃみ、発疹などの症状が一般的ですが、犬の場合は皮膚炎として現れやすい傾向にあります。
犬のアレルギーの主な原因となるアレルゲン(外的要因)は、主に次の通りです。
アレルギー発症のメカニズムは複雑で、アレルゲンがあるからといって必ずしもアレルギーが起きるわけではありません。体調や体質などの内的要因が組み合わさることでアレルギーは発症するといわれています。
特に起こることが多いのが、次のアレルギーです。
アトピー性皮膚炎では、ダニやハウスダストなど住環境に存在する物質がアレルゲンとなって発症するケースが多くみられます。
牛乳や穀類、肉類などの食物を起因とする食物アレルギーや、ノミの唾液に含まれるたんぱく質が皮膚炎を引き起こすノミアレルギー、食器やじゅうたんなど特定のものがアレルゲンとなる接触性アレルギーなどもあります。
犬のアレルギー性皮膚炎の主な症状は皮膚のかゆみです。かゆみ症状は次の部位に多く現れます。
これらの部位に強いかゆみが出ると、その部位を頻繁に掻くほか、舐めたり噛んだりするようになり、皮膚に赤みや発疹が出てきます。皮膚炎が長く続いて慢性化すると症状は悪化し、皮膚が厚くガサガサした状態に変化して、脱毛や皮膚が腫れた状態になる腫脹(しゅちょう)がみられることもあります。
食物アレルギーの場合は、下痢や外耳炎などの内科的症状を併発するケースも少なくありません。また、舐めたり噛んだりした部分から細菌が入り込んで二次感染を引き起こす可能性もあるため、動物病院で診察を受けるほか、こまめに状態を確認することも大切です。
アレルギー性皮膚炎を発症しやすい犬種は、以下の通りです。
上記はあくまで発症しやすい犬種であり、これらの犬種以外にもアレルギー性皮膚炎を発症する可能性はあります。
特に、生後半年から3歳くらいまでの間は、アレルギー性皮膚炎を発症しやすいといわれています。年齢が上がるにつれて、かゆみ症状がひどくなる傾向もあるため、早期発見・早期治療が大切です。
犬のアレルギーの有無を調べる代表的な検査は次の4つです。
これらのアレルギー検査は一般的に外部検査機関に依頼して行われます。ここからは、それぞれどのような検査を行うのかを詳しく解説します。
皮内反応検査とは、皮膚層に予想されるアレルゲンを少量注入して、一定時間内にその部位に赤みや腫れ、硬化などが現れるかを測定する検査方法です。皮膚の変化の程度に応じて、アレルゲンに対する反応の有無を判定し、赤みや腫れ、硬化がみられた場合には、陽性と判定されます。
なお、皮内反応検査を行うには、抗原(アレルゲン)を注射する必要があるため、動物病院に抗原がない場合には検査を実施できません。すべての動物病院で実施されてはいない点に留意しましょう。
皮内反応検査で調べられるアレルゲンは、ハウスダストやダニ、花粉、食物のほか、薬剤なども含まれます。検査は15分から20分程度で済むことがほとんどです。
アレルゲン特異的IgE検査とは、血液検査の一種です。環境中や食物などの約40種類に及ぶアレルゲンに対して行う検査で、血清中のIgE抗体の濃度や量によってアレルゲンを特定できます。
測定値はクラス0から6までの7段階で示され、値が高く出るほうが抗体量が多いと判別されます。ただし、値が高いからといってアレルギー症状がひどくなるという相関関係はありません。
食物の場合には、値が高くてもアレルギー症状が出ないケースもあることから、他の検査と組み合わせて総合的に判断することもあります。
リンパ球反応試験とは、食物アレルゲンを特定するための血液検査です。少量採取した血液サンプルからリンパ球と抗原提示細胞を分離させ、抗原として予想される食物アレルゲンを添加したものを培養します。アレルゲンに反応するリンパ球は、抗原提示細胞の刺激によって活性化するため、その活性割合をマーカーに対する抗体として検出します。
食物アレルギーはアレルゲン特異的IgE検査によって検出可能ですが、そもそもIgEが関与しないタイプの食物アレルギーもあります。アレルゲン特異的IgE検査では検出しきれなかった、リンパ球が関与するアレルゲンを特定できるのがリンパ球反応試験です。
アレルギー強度試験とは、血液検査の一種で、皮膚炎を引き起こすリンパ球を血中から検出する検査です。アレルゲン特異的IgE検査やリンパ球反応試験はアレルゲンを特定できるものの、アレルギーの病状は把握できず、治療の方針を決定づけられる検査ではありません。
アレルギー強度試験では、炎症を引き起こすリンパ球の割合を測定し、ペットがアレルギー体質であるかの判断や、アレルギーの病状の数値化が可能です。アレルギー強度検査の値が高い場合には炎症が強いと判断でき、ステロイドをはじめとする抗炎症剤の使用が検討されます。
アレルギー性皮膚炎は症状や治療内容によって治療費にはばらつきがありますが、アレルギーの検査を行う場合1日の通院でも治療費が高額になることがあります。
ここではアレルギー検査の保険金請求事例から「げんきナンバーわんスリム」に加入していた場合の支払い事例を2つ紹介します。