【獣医師監修】子犬のくしゃみの原因は?考えられる病気や対処法を獣医師が解説
2023.12.14 作成

【獣医師監修】子犬のくしゃみの原因は?考えられる病気や対処法を獣医師が解説

獣医師/ペット栄養管理士

森井知里

森井知里

犬も人のようにくしゃみをします。人であれば「風邪の引き始めかな?」「アレルギー?」「花粉症?」などと原因が思い当たることも多いかと思いますが、子犬のくしゃみは、体調不良が原因なのでしょうか。子犬のくしゃみの原因や、対処法を知っておきましょう。

もくじ

    犬のくしゃみとは?

    【獣医師監修】子犬のくしゃみの原因は?考えられる病気や対処法を獣医師が解説
    (Firn/shutterstock)

    くしゃみは、鼻の内部に刺激があった際、異物を肺へ侵入させないよう空気を思い切り排出させるという生理現象です。

    人と同じく犬も、くしゃみは正常な体の反応であり、それ自体は病気ではありません。しかし、くしゃみの回数や様子次第では、病気の可能性も考えられるため注意が必要です。

    子犬のくしゃみの原因は?

    子犬のくしゃみの原因は?
    (Petr Smagin/shutterstock)

    強いニオイや異物による刺激、アレルギー物質への反応で出るくしゃみは、年齢関係なく出る場合があります。

    成犬期では、くしゃみの背景に腫瘍や歯周病などが隠れている場合がありますが、子犬期ではそれらの可能性は低く、子犬期にかかりやすい感染症の可能性を考えるのが一般的です。

    ここでは、子犬に多いくしゃみの原因を紹介します。

    強いニオイによる刺激

    犬は嗅覚がとても優れているため、タバコやお香などの煙、香水やハーブ、香辛料、殺虫剤といった刺激の強いニオイでくしゃみが誘発されます。

    くしゃみをしている犬の近くにニオイの強いものがある場合には、犬から遠ざけてあげましょう。

    アレルギー(ハウスダスト、花粉)

    犬も、アレルギーが原因でくしゃみをすることがあります。代表的なアレルゲンとしては、スギやイネ科の植物や花粉、ハウスダストなどがあります。

    犬にアレルギーがあるとアレルゲンに反応して、くしゃみや鼻水などの症状が現れます。同時に、皮膚や耳のかゆみ(アトピー性皮膚炎)をともなうことが多いです。

    感染症(ケンネルコフ/犬伝染性気管支炎)

    ケンネルコフ(犬伝染性気管支炎)は伝染性の呼吸器疾患の総称で、「犬の風邪」ともいわれる呼吸器の感染症です。

    6週齢~6か月齢くらいの子犬に起こりやすい傾向があり、特に子犬が気を付けたい病気のひとつとなっています。

    ケンネルコフは、ウイルス感染や細菌感染、マイコプラズマ属菌が原因で起こります。症状は、今にも嘔吐しそうな乾いた咳の発作が特徴で、そのほかに発熱やくしゃみ、鼻水、食欲不振などの症状が見られることもあります。

    細菌やマイコプラズマが原因であれば、抗生物質を投与します。ウイルスが原因の場合、ウイルスを排除するための効果的な治療法がないため、ネブライザーという機械を使った吸入治療や、咳止め薬の投与といった対症療法を行います。

    すぐに治療を始めれば1週間程度で完治しますが、重症化すると命にかかわることもあるため要注意です。ケンネルコフは、人から犬、あるいは犬から人へうつることはありません。

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    鼻腔内異物による刺激

    室内のほこりや室外の砂、草の種や葉、食べたものの欠片などが鼻に詰まることも、くしゃみの原因となります。体外から鼻へ入ったり、嘔吐した際の嘔吐物などが食道から鼻へ入り込んだりする場合が多いです。

    くしゃみをすることで異物が排出されれば症状は治まるのが一般的ですが、異物がなかなか排出されずにくしゃみが止まらないこともあります。

    異物が長期間鼻に入ったままになると、鼻の内部の粘膜で炎症を生じ、鼻血や食欲不振を引き起こすリスクもあります。

    元気そうに見えても長時間くしゃみが続くようなら早めに動物病院を受診し、異物を取り除いてもらいましょう。異物が取り除ければ症状は改善します。

    逆くしゃみとは?

    逆くしゃみとは?
    (Fernando Coelho/shutterstock)

    逆くしゃみは、鼻の内部の刺激によって鼻から勢いよく空気を吸い込む、発作性の呼吸の一種です。

    トイ・プードルやパピヨンのような小型犬やチワワ、フレンチ・ブルドック、パグ、 シー・ズー、ペキニーズのような短頭種で発症しやすい傾向があります。

    正確にはくしゃみではなく、一見苦しそうにみえますが、実際に呼吸が苦しいことはほとんどありません。たいていは数分以内におさまり、犬は何事もなかったかのように元の様子に戻るため、基本的には治療は不要です。

    長期間続いたり頻度が増えたりしている場合は、病気が隠れている可能性もあります。動物病院へ連れて行きましょう。

    受診前に逆くしゃみが疑われる症状の動画を撮影しておき、獣医師に見せるとよりスムーズに診断できます。

    動物病院に連れていくべきくしゃみ

    動物病院に連れていくべきくしゃみ
    (A.UDOMRATSAK/shutterstock)

    食欲低下をともなう

    粘り気の強い鼻水が出ている場合は、鼻詰まりを起こしている可能性が高くなります。くしゃみと同時に鼻詰まりがあると嗅覚が低下し、食欲も落ちる場合があります。

    食べられない時間が長く続いた場合、低血糖を引き起こす恐れがあるため要注意です。また、食欲低下につながる他の病気がないかどうかも考える必要があります。

    鼻水の状態がおかしい

    • 鼻水が膿のように白い
    • 粘り気がある
    • 臭いがきつい
    • 鼻出血もみられる

    色の付いた粘り気のある鼻水が出ているようであれば、鼻の内部の細菌感染によって出血や炎症を引き起こしている可能性があります。

    一日に何度もくしゃみが出る

    一日に数回や、ごくたまに出る程度のくしゃみであれば、鼻の内部に刺激が加わっていることが多いです。あまり心配はありませんが、くしゃみを一日に何度も繰り返す場合は注意が必要です。

    なかなかくしゃみが止まらないようであれば、異物の吸い込みや病気も考えられます。早めに動物病院を受診し、くしゃみの原因を調べてもらいましょう。

    長期間にわたってくしゃみをしている

    一日の間ではそれほど回数が多くなくても、長期間にわたってくしゃみが出続けている場合は、動物病院を受診しましょう。動画を撮っておくと診察に役立ちます。

    くしゃみ以外に下痢や嘔吐などの症状がある

    くしゃみだけでなく、下痢や嘔吐などほかの症状がある場合は、何か病気が隠れている可能性が高くなります。くしゃみ以外にもいつもとは違う様子が見られたら、すぐに動物病院へ連れていきましょう。

    まとめ

    人と同じく、犬のくしゃみも生理的に正常な体の反応であり、それ自体は病気ではありません。しかし、くしゃみが長時間または頻繁に続いたり、ほかに症状が見られたりする場合は、病気の可能性もあるため注意が必要です。

    いつもと様子が違う、くしゃみが長く続くといった場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

    犬のくしゃみの様子を動画で撮影しておくと、診断時の判断材料になります。余裕があれば、用意しておくことをおすすめします。

    著者・監修者

    森井知里

    獣医師/ペット栄養管理士

    森井知里

    プロフィール詳細

    所属 yourmother合同会社
    (獣医師によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)

    日本ペット栄養学会

    略歴 1992年 三重県に生まれる
    2011年 麻布大学獣医学部動物応用科学科に入学
    2013年 麻布大学獣医学部獣医学科に転学科
    在学中、料理教室で講師を務める
    2018年 獣医師国家資格取得
    2018年 東京都内動物病院に勤務
    2019年~2021年 千葉県内動物病院に勤務
    2022年~2023年 東京大学附属動物医療センターで内科系研修医として勤務
    2023年4月~ yourmother合同会社に勤務

    資格 獣医師免許
    ペット栄養管理士

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