犬を1頭飼っているだけで癒される飼い主さんは多いでしょう。しかし、日中は家を留守にしがちなお家も多い中で、「お留守番中、愛犬は一人で寂しくないのかな?」「もう1頭飼って遊び相手がいた方がいいのでは?」「もし新しく迎える子と相性がよくなかったらどうしよう?」と考える飼い主さんも多いのではないかと思います。そんなお悩みを抱える飼い主さんのために、多頭飼いのメリット・デメリットをお話します。
もくじ
犬を多頭飼いすること自体に問題はありません。犬の歴史を辿っていくと、オオカミが起源となっています。オオカミといえば群れで生活する動物です。
犬がオオカミから家畜化され狩猟や番犬として飼われ、現代では愛玩動物として家族の一員になったのは、犬の長い歴史から考えるとほんの最近の出来事です。
今では各家庭に飼育されているので犬の群れをみることはありませんが、野犬が問題となっている地域のニュースで野犬が集まっているのをみると、本来は群れで生活する動物なのだと感じる人も少なくないのではないでしょうか。
家族が大好きでいつも嬉しそうな犬も、飼い主さんと遊ぶ時とは違った、犬同士ならではの遊びもできるため、お家の中にいても暇を感じることが少なくなることが期待できます。
また、お留守番中は飼い主さんがいなくなることで不安を抱えてしまう可能性があります。事故防止のため別々にケージに入れることをおすすめしますが、お留守番仲間がいることで不安の解消にもなるでしょう。
1頭で飼っている犬の中には、自分が人だと思い込んでいる犬もいます。その場合、人は大好きだけれど犬に会ったときは怖くて威嚇したり吠えたりしてしまいます。
多頭飼いで犬とのコミュニケーションをとることで自分が犬であることを認識し、ほかの犬とも仲良くなるトレーニングにもなります。
若いときには積極的に運動したり1頭でもはしゃいでいたりする犬ですが、中高齢になってくると性格も落ち着いてきて自ら積極的に運動しなくなってきます。
若くてパワフルな若い犬と一緒に生活することで、遊び相手になり、よい刺激を受けて運動不足の解消や若返りが期待できます。
人同士でも仲良くなれない相手がいるように、犬の性格もさまざまで、どうしても合わないことは考えられます。4、5頭いる中で2頭の仲が悪い場合は、ほかの子と仲良くしてくれればよいですが、2頭で飼っている中で仲が悪いと大変です。
食事のときにだけ険悪なムードになる場合もあるため、そういった場合は部屋を分けて食事させるなどの対応をしてあげるとよいでしょう。
多頭飼いでは、どの子が体調を崩しているかすぐに判断できないことがあります。
たとえば、飼い主さんが帰宅したとき。嘔吐物、下痢、血尿などを発見し、すぐにでも病院に連れていきたいと思っても、どの子を連れて行けばよいかわかりません。
明らかに元気がない子がいればわかりやすいのですが、様子に変わりがないときは次にまた症状が出るまで待つのか、それともとりあえず全員を病院に連れていくべきか悩ましいところです。その結果受診が遅れてしまう原因になります。
闘犬としての性質もあるピットブルなどは、個体によっては攻撃的な性格の子もいます。個体差もあるためそのような犬種の子すべてが攻撃的なわけではありませんし、しつけなどの飼育環境によってはセラピー犬として活躍する子もいます。
しかし、多頭飼育の際には細心の注意が必要なことは言うまでもありません。
一般的に生後3ヶ月くらいまでを社会化期と呼び、この頃までにほかの犬と触れ合うことで社会性が身につくと考えられています。
あまりにも早い時期にお母さんや兄弟犬と離されて1頭で育てられると、社会化期に社会性が身につかず、ほかの犬とうまく関係性を築けなくなってしまう恐れがあります。
大きな犬と小さな犬が寄り添って寝ている様子はとても微笑ましいものです。しかし、あまりにも体格差が大きいと、お互い遊びでじゃれているつもりでも小さい犬にとっては重大な事故につながる可能性があります。
また、必要な運動量やお散歩のペースが合わず、それぞれに合ったお散歩が必要になることもあります。まったく同じ体格でなければいけないことはありませんが、ある程度考慮してあげる必要があるでしょう。
一般的に犬種が同じであれば、多頭飼育は上手くいきやすいです。犬種が同じということはかかりやすい病気も同じであるため、飼育にあたって気を遣っていあげるポイントも同じです。
また、体格が近い犬種であれば、ただのじゃれ合いからどちらか一方がケガをするというリスクを回避でき、運動量やお散歩のペースも大きな差がないため管理もしやすいです。
上述したように、体格差が大きい場合にケガの危険があるのは小型犬です。大型犬が活発でパワフルな性格だと、小型犬の怪我のリスクは高くなります。
小型犬の怪我のリスクを少なくするためには、性格が穏やかな大型犬を選んであげることも重要です。
犬同士の相性は、実際に会わせてみなければわからないことも多いです。保護犬の受け入れのようにトライアル期間がある場合は、先住犬に会わせ、相性をみてみましょう。どうしても受け入れてくれなさそうな場合には、諦めることも大切です。
ペットショップやブリーダーから迎える場合は、実際に顔合わせして相性をみることができないことも多いです。その場合は特に、先住犬の性格を考慮して慎重に2頭目以降を考えましょう。
先住犬としては今まで自分のテリトリーだった場所にほかの犬が入ってくるわけですから、すぐに受け入れられないことも考えられます。
すでに多頭飼育をしていれば、その感覚はそれほど強くないかもしれませんが、これまで1頭だったところに2頭目を迎える場合は、先住犬にとってより大きな変化といえるでしょう。
飼い主としてはすぐに仲良くなってくれることを期待してしまう気持ちもわかりますが、犬たちのペースで距離を縮めていくのを根気強く見守ってあげることも飼い主さんには必要です。
飼い主さんの感情として、「先住犬は新しく迎えた子よりも上だから、おやつをあげる順番も先住犬から」と思う場合もあるかと思います。
最初は先住犬の方が上の立場にありますが、時間とともに犬同士の上下関係が逆転することも十分に考えられます。飼い主さんは、犬同士のルールで決まった上下関係を乱さないようにしましょう。
上下関係が上の犬より下の犬が優遇されていると感じれば、上の犬はストレスを感じ下の犬への攻撃を始めるかもしれません。
犬の多頭飼いのメリット・デメリットや多頭飼いの際の注意点などを解説しました。多頭飼いをする際には正しい知識を身につけ、犬の気持ちになって入念に準備をし、新しい子を迎えたあとも、ときには根気強く見守ることが大切です。
先住犬と新しく迎え入れた子がともに幸せになれるよう、また、家族の生活がより豊かになるようにしっかりとポイントを押さえて迎えましょう。
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