犬の皮膚は人よりも薄く、トラブルが起きやすいです。特にかさぶたは、犬の皮膚トラブルに多い症状のひとつです。そもそも、なぜ、かさぶたはできてしまうのでしょうか。そして愛犬にかさぶたができていたら、飼い主さんはどう対応すればよいのでしょうか。犬のかさぶたについて、正しい知識を解説します。
もくじ
かさぶたは、角質や漿液(しょうえき:傷口から滲み出た体液)などが固まって、皮膚の表面に付着したもののことで、医療用語では、「痂皮(かひ)」といわれます。
かさぶたの炎症は表皮(皮膚の表面)より深くまでダメージが及んでしまうことにより発生します。
かさぶたは、転んだ時など外傷でできるイメージがあると思いますが、犬では外傷だけでなく感染など別の原因でもできることがあります。
かさぶたのほかに犬の皮膚に見られる症状としてフケもあります。
フケとかさぶたの違いは、フケは角質の塊で、かさぶたはそこに血液や漿液(しょうえき:傷口から滲み出た体液)などいろいろなものが混ざっています。
フケは正常でもでてきますが、かさぶたは必ず皮膚にダメージがある場合にできます。ただし、あまりにもフケが多い場合は、そこに感染や炎症があることもあるので、フケが増えてきたら病院を受診しましょう。
病気についてより理解するためには、皮膚の正常な構造を知る必要があります。まず、簡単に皮膚の構造について説明します。
皮膚は3層(表皮、真皮、皮下組織)に分かれており、それぞれ役割が異なります。
一番表面に見えていて、菌などの侵入を防いでいます。基本的には分裂を繰り返していて、古くなったものは「角質」として剥がれおちていきます。
表皮のすぐ下にあり、コラーゲンを主体とした組織です。肌の形や弾力を保っています。
外部からの圧力や温度変化からのバリアの役割や、エネルギーを脂肪として貯留している組織です。また、血管も豊富で栄養もここから運ばれてきます。
かさぶたは表皮だけでなく、真皮以降まで炎症が起こったときに発生します。炎症の原因はさまざまですが、この章では、かさぶたができる代表的な原因を紹介します。
散歩中の怪我、ケンカ、交通事故などで外傷を受け、真皮より深くダメージが与えられるとかさぶたができます。
比較的多く発生する病気で、皮膚の細菌感染を膿皮症(のうひしょう)といいます。皮膚の環境の乱れによって発生することも多く、アレルギーやホルモンの病気が関わっていることもあります。
かなり頻度が高く、外に出る若齢の犬に多い病気で、人への感染リスクの恐れもあります。
ノミやダニなどの感染症で非常に強いかゆみや炎症を引き起こすことも多く、人へも感染するリスクがあります。また、これらの寄生虫は皮膚のかゆみだけではなく、さまざまな病気を媒介する可能性があるので要注意です。
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アトピーやアレルギーも重度になるとかさぶたが出てくるケースがあります。とくにかき壊してしまうことによりかさぶたができてしまいます。
アレルギーは大きく分けると2パターンあり、環境中のアレルゲンが皮膚に付着してかゆみを生じるアトピーと食べ物に反応してしまう食物アレルギーがあります。
腫瘍によるものの場合は抗生剤などの一般的な治療には反応せず、発見が遅れることも多いため注意が必要です。中には命にかかわるものもあります。
まれな病気として、自分の免疫が自分を攻撃してしまう自己免疫疾患などがあります。
人の場合、かさぶた程度で病院にかかることは多くありません。犬の場合は、感染症やアレルギーなどきちんと治療しないと治らない、もしくは再発を繰り返してしまうケースも多いです。
たとえ小さなかさぶたでも、放置してよいものなのか病院で確認してもらうことをおすすめします。
真皮より深い部分まで炎症が存在しているとかさぶたになります。ちょっとすりむいただけですぐに治ってしまうようなものであれば問題ありませんが、上記に解説したように、かさぶたの原因はさまざまです。
きちんと治療しないと繰り返してしまうものも多いです。頻繁に再発をくり返す場合は何らかの原因(基礎疾患)が存在している可能性が高く、中には危険な病気もあるため注意しましょう。
かさぶたを見つけたらとりあえずシャンプーをする飼い主さんもいますが、これはケースバイケースです。
シャンプー自体はそこまで悪い効果は与えないのですが、表面の菌なども洗い流すので、診断がつきにくくなってしまいます。
かさぶたの原因がわかっていて、動物病院から指示されているときはシャンプーをしても大丈夫です。
また、かさぶたを剥がすことは絶対にやめてください。かさぶたの下には菌が存在している場合も多く、衛生的ではありません。治癒も遅くなったり、診断を妨げたりしてしまうので、百害あって一利なしです。
「かさぶたで病院を受診?」と疑問に思う飼い主さんもいると思います。しかし、次のようなケースでは、特に注意が必要です。迷わず動物病院を受診してください。
まず、進行性の病変は早めに病院を受診しましょう。みるみるうちにかさぶたが広がる場合は、自分の免疫では対処しきれていない可能性が高いです。
また、かゆみが強くなっている場合も、早めに治療介入して広がりを食い止める必要があります。
治ってもすぐまたかさぶたができて、なかなか完治しないといった場合も要注意です。
繰り返すかさぶたは、アレルギー、ホルモンバランスの異常など何らかの基礎疾患が存在している可能性が高いです。これらも自分の免疫だけで治すのは困難です。
最後にこれが衛生上もっとも大切なのですが、人にも感染する病気(人獣共通感染症)に罹患している場合です。
寄生虫やカビなどは人にも感染し、害を及ぼす可能性があります。犬に症状が出てから、同じような症状が人にも出てくる場合はすぐに対処する必要があります。
この場合、動物病院はもちろんのこと、人の病院へもすぐに受診しましょう。
このように、犬のかさぶたは人と同じように考えることはできません。自分の力だけでは治らないもの、他の犬や人に感染させてしまうものなど、放置すると被害が拡大してしまうものも多いからです。基本的にはかさぶたは放置せず、早めの病院受診を推奨します。
特に
は要注意です。これらのサインを見逃さないよう、普段からスキンシップを心がけ、ちょっとした変化に気づいてあげられるようにしましょう。