子犬の食事(餌)は、成長や発達、健康維持にとって大切なもの。子犬は約1年かけて成犬(小型・中型犬は8~12か月、大型犬は12~24か月)になりますが、この時期の栄養は免疫系・身体構造・成長速度・骨格の発達に大きく影響します。子犬と暮らし始めたばかりで、どのような食事(餌)をどのように与えればよいのか迷う飼い主さんのために、食事内容や頻度、与え方など子犬の食事の基本を解説します。
もくじ
出産後2~3日間に分泌される母乳を初乳といいます。初乳は高栄養(高タンパク、高脂肪、高免疫グロブリン、抗菌成分であるラクトフェリン、ビタミンAやカルシウム等のミネラルが豊富)であり、子犬は初乳を通して母親から免疫を受けとります。
生後2~3週間までは、1日あたり4~6回の授乳が必要となります。
何らかの事情で母乳を飲ませられない場合は、代用乳を用います。おすすめは市販の犬用ミルクです。
液体・リキッド、粉末タイプなどがありますが、どれも生乳を原料とし、製造過程で乳糖を大幅にカットしてあるため、乳糖不耐症の犬にも与えられます。
初乳の後に分泌される母乳は、牛乳より高濃度、高タンパク、高脂肪、高エネルギー。高乳糖・低エネルギーな牛乳とは成分が異なります。
また、犬は牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)を分解する酵素「ラクターゼ」の保有量が少ないために、牛乳を飲んで下痢や腹痛を起こすことがあります(乳糖不耐症)。代用乳として、人用の牛乳を与えることは避けましょう。
生後4~5週目頃には乳歯が生え、離乳が始まります。この時期の子犬は、母犬が食べているフードに興味をもつようになります。
子犬用のドライフードにぬるま湯や犬用ミルクを加えた粥状のものや、ウェットフードタイプの離乳食を与えます。状況を見ながら、少しずつぬるま湯や水の量を減らしていきましょう。
次第に食べる量が増え、生後6週目頃には離乳が可能なくらいの量のドライフードが食べられるようになります。
一般的にペットショップやブリーダーなどからのお迎えは、離乳が済んでいる時期となります。その場合、最初のうちは子犬が家に来る前に食べていたフードを与えるようにしましょう。
迎えたばかりの子犬は、急な環境の変化で精神的なストレスを感じ、食欲が低下することがあるためです。
フードを切り替える際は、子犬用・成長期用のもので「総合栄養食」と表示のあるフードを選びましょう。いつものフードに新しいフードを少量ずつ混ぜ、1週間ほどかけて段階的に切り替えてください。
子犬の頃は消化機能がまだまだ未熟なため、消化吸収がうまくできません。空腹による低血糖もおこりやすいため1回分の量を少なくし、食事の回数を多くします。
理想としては、離乳が始まってから生後3か月までは1日あたり4~5回と回数を多くし、生後3か月から6か月は1日3~4回ほどにするとよいでしょう。
大きく成長するのは生後6か月目であり、体重は出生時の40~60倍になります。その時期を過ぎると成長のスピードはゆっくりになります。
生後6か月~1歳頃までの食事の回数は、1日あたり2~3回が目安。その後、徐々に1日2回に減らすことが一般的です。
犬の大きさや、成長の速度に合わせて成犬用フードへ切り替えます。切り替えの時期は犬の大きさによって次のように変わります。
超小型犬:8か月
小型犬:12か月
中型犬:18か月
大型犬:24か月
超大型犬:24か月
子犬の食事を突然変更すると、胃腸の調子が悪くなることがあります。成犬用フードに切り替えるときや製品を変えるときは、1週間かけて徐々に新しいものに変えていくほうがよいでしょう。
フードを切り替える際の割合目安は次のとおりです。
1日目と2日目:現在の食事75%に新しい食事を25%混ぜる
3日目と4日目:現在の食事50%に新しい食事を50%混ぜる
5日目と6日目:現在の食事25%に新しい食事を75%混ぜる
7日目:新しい食事を100%にする
フードを切り替えた際、下痢をしたり食べなかったりする場合は関連記事をご参考にしてください。
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大型犬が子犬期に過剰な栄養摂取をすると、筋骨格系の異常などの整形外科疾患をひきおこすことがあります。整形外科疾患のリスクを減らすために、カルシウムやエネルギー含量が調整された子犬用のフードを適切な量与えましょう。
以下の中毒症状を起こす可能性が高いものは与えないようにしましょう。
玉ねぎ(ねぎ類)、にら・ニンニク、アボカド、グレープフルーツ、ブドウ・レーズン、アーモンド・ピーナッツ、イカ、キシリトールを含む食べ物、チョコレート・ココア、コーヒー、アルコール類
子犬の食事(餌)は、子犬の成長や発達、成犬になってからの健康維持に影響します。成長段階に応じて食事内容を選び、食事の与え方を工夫しましょう。食事の与え方に迷ったときはかかりつけの動物病院に相談しましょう。
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