「猫同士、仲良く過ごしてくれるといいのに、なかなか仲良くしてくれない」「ケンカが多くて困っている」という場合、猫同士にストレスがかかっている可能性があります。猫を多頭飼いしている飼い主さんに改めて知っておいてほしいこと、猫のストレス対策などを紹介します。
もくじ
愛猫の留守番中に仲間がいたほうがよいだろうと考えている飼い主さんもいることでしょう。
しかし、猫は単独で生きてきた生き物です。家という狭い生活圏内で、ほかの猫との生活を強いられることは猫にとって大きなストレスになります。
犬の場合、飼い主さんが犬社会について学び適切な接触の仕方をさせてあげられれば、犬同士は上手に関係性を築きやすい生き物です。
しかし、猫は犬のように社会性が高くはなく、かといって社会性が全くないわけでもありません。猫同士には相性があり、折り合いをつけることが苦手な生き物だと考えましょう。
仲良くできない猫同士はとことん合わないため、時間がたっても上手な関係性を築けないことがあります。
相性の合わない猫同士を多頭飼育する場合は、行動圏が重ならないような広い場所を提供したり、お部屋を分けたりするといった配慮をしてあげることが飼い主さんの役割です。
ストレスを少しでも和らげるために、相性は重要です。猫同士の相性については関連記事を参考にしてください。
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マーキングは、爪を研いだり、頭をこすりつけたり、場合によっては排泄したりすることで「ここを最近こんな状態の私が通りましたよ」「ここは私のお気に入りの場所ですよ」と記すものです。
そして、その匂いが新しいものか古いものかなどの情報を上手く読み取って、ほかの猫とのむやみな接触を避けて過ごすのが猫の習性です。
しかし、マーキング情報からほかの猫を避けようとしても室内の限られたスペースでは避けられないことも多く、猫のストレスにつながります。
ストレスが原因でおこりやすい症状をいくつか挙げてみましょう。
環境の変化に敏感だったり、不仲の猫がトイレまでの通り道にいることで排泄を我慢したりすることによって、突発性膀胱炎になりやすいです。
食事の影響や神経疾患、腎機能不全などの病気が隠れていることもあるため、トイレで鳴いたり、頻尿になったり、血尿が出たりするといった症状が見られたら、動物病院に相談し、診察や尿検査などを実施してもらった上で対策をしましょう。
ストレスによって嘔吐や下痢などの症状が出ることもあります。感染症やそのほかの原因も考えられるため、糞便検査ができるように便を持参して動物病院を受診しましょう。
長い間一匹で過ごしてきた猫は特に、家にほかの猫が来たと感じただけで(対面していなくても)ストレスを感じ消化器症状が出ることがあります。また、動物病院を受診した後に下痢になる猫も少なくありません。
因果関係をとらえられるように、いつどんな状態の便だったか記録を残しておくことをおすすめします。
食欲が落ちたり過食になったりするなど、食欲の増減もストレスの影響を受けやすいものです。ストレスや病気のサインに気づきやすい食欲の変化は、飼い主さんがしっかりチェックしてあげましょう。
また、気がついたら瘦せていた・太っていた…というとき、食べている量がいつもと同じ量なのか・わからないのかでは、診断までのスピードに影響するため、食事は日々計量してください。
ストレスは免疫機能の低下も引き起こします。
多頭飼育によるほかの猫との接触がストレスになって免疫機能が低下し、以前あったものの落ち着いていた猫かぜ症状が再び現れる、新しく迎えた猫がもっていた感染症をうつされてしまうといったことも起こり得ます。
感染症はさまざまな要因が重なった結果、起こり得ることではありますが、ストレスが小さければ免疫機能が働いて発症しない場合もあります。
猫は、長い歴史の中で外敵から身を守るために、痛みをはじめとした不調を隠して生きてきました。愛猫に次のような様子が見られたら、不調を疑ってみてください。
もちろん、大きな病気が隠れていることもあるため「ストレスのせい」と決めつけずに、愛猫に不調があった際はまず動物病院を受診してください。
日々注意深く観察することで、愛猫のいつもと違う様子に気づける飼い主さんになりましょう。
どんなに対策しても、愛猫がまったくストレスを感じない状態を作ることはできません。少しでも愛猫のストレスを減らせるよう、飼い主さんが知っておきたいこと、心がけておきたいことを解説します。
「愛猫のためにストレス対策をしよう」と飼い主さんがストレス対策に力を入れて、一気に家の環境を変えてしまうことも大きなストレスになり得ます。猫に無理強いをしていないかをきちんと振り返りながら取り組みましょう。
進行方向と反対側から苦手な猫がやってきても別の道へ回避できるなど、猫の生活動線が複数あるように家具やキャットステップ、トイレなどの配置を考えましょう。
たとえばキャットステップ。頂上でくつろいでいたときに下から苦手な猫が登ってきたとします。登れるルートが1本道だと、避けて逃げることができませんが、頂上までのルートが2方向あれば、反対側のルートを使って降りられます。
「逃げ道があるか?」と考えながらお家を見渡してみてください。
新しく迎えた猫との対面までの準備期間中や、対面してから折り合いがつかない場合、仲はよくてもそれぞれの時間が必要な場合などは生活スペースを分ける必要があります。
猫の多頭飼育では、生活スペースとして別室を用意し、トイレや食器、ベッドはそれぞれ専用のものを準備しましょう。
また、一匹が動物病院を受診し、病院の匂いをつけて帰宅するとほかの猫から威嚇されてしまうこともあります。
そういったトラブルを避けるため、バスタオルで包んで別室で過ごしお家の匂いにして合流させたり、受診後の緊張を落ち着かせてからほかの子に会わせたりするなど、別室は重要な役割を果たします。
ストレスを緩和させるためのサプリメントやフェロモン剤も活用しましょう。導入する際は、かかりつけの獣医師に指示を仰ぎながら丁寧に進めていくのがおすすめです。
多くのストレス対策製品は、問題が起こる前から利用することで効果が発揮されます。新たに猫を迎えようかと考え始めた時点でフェロモン剤の使用を始め、先住猫に慣れ親しんでもらっておくなど、導入のタイミングはしっかり見極めましょう。
既に問題が起きている場合は、状況によって行動診療専門の獣医師を紹介してもらうことも検討してみてください。
多頭飼育は、猫のストレスになる可能性があります。ストレス症状が起きてから対策を始めるのではなく、受けるストレスを少しでも小さくできるよう先回りして対策しましょう。
猫たちが心穏やかに過ごすことができるよう、少しでも気になる点があればかかりつけの獣医師に相談してください。細やかな対策をしつつ、愛猫の日々の健康管理に力を入れるきっかけになると嬉しいです。
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