犬と猫、それぞれに異なる魅力があって、どちらかを選択するのは難しいものです。「犬と猫の両方を家族に迎えてみたい!」でも「犬と猫を一緒に飼っても大丈夫なの?」「何に気を付けてあげればよいの?」という飼い主さんの疑問にお答えします。
もくじ
犬か猫かにかかわらず、先住の子がいる場合は、新しい子を迎える前に次の点を考えておきましょう。
家庭内がコミュニティのすべてである犬猫にとって、飼い主さんに関心を向けてもらうことは最重要。先住の子は、新しく迎え入れた子を飼い主さんの関心を奪うライバルだととらえるかもしれません。
新しい子を迎えれば、「遊び相手ができて先住の子も喜ぶだろう」というのは、私たちの勝手な思い込みかもしれません。
もちろん、相性がよければお互いによい遊び相手、パートナーになることも充分考えられます。多頭飼育が本当に先住の子のためなのかは、よく考えましょう。
人と同じように犬猫にも性格や個性があり、どうしても相手を受け入れられない場合もあります。新しい子をどこから迎え入れるかにもよりますが、正式な家族として迎える前にできれば先住の子に会わせてみて、相性がよさそうかを確認したいところです。
相性が悪いのに逃げ場がなく、同じ空間で過ごさざるを得ないような状況では、お互いにストレスで病気になることもあります。いざというときに生活空間を完全に分けられるかどうか、迎える前に検討しましょう。
また、災害などで万が一避難しなければならなくなったとき、すべての子を一緒に連れて行けるかも考える必要があります。
犬と猫のどちらとも一緒に暮らしたい場合、子犬と子猫を同時に迎えるのがお互いを受け入れやすいといわれています。これは、生後2~3か月齢は社会化期といい、外部からの刺激を受け入れやすい時期であるためです。
ただし、同じように歳を重ねていくことになるため、同じタイミングで老齢期に入り、病気になって医療費がかさんだり、介護が大変になったりする可能性があることを忘れてはいけません。
犬は元来群れを作って暮らし、猫は単独行動で生きる動物です。この社会構造を行動学的にいうと、犬は「複合的社会性」、猫は「独居縄張り性」と呼ばれます。猫がいる場合の多頭飼いは、猫のプライバシーに注意しましょう。
単独飼育の成猫がいる家庭に、新しい子、特に犬を迎えることは、先住猫にとって縄張りに見知らぬ個体が入ってくることになります。もちろん個体差はあり、直ぐに受け入れてくれる猫もいますが、強いストレスになる可能性があるため注意しましょう。
先住猫と新しく迎え入れる子をいきなり対面させるのではなく、部屋を分けてしばらく飼育してからケージ越しで過ごさせるなど、少しずつ距離を詰められるか確認してみてください。
反対に、成犬がいる家庭に子猫を迎える場合は、比較的受け入れてくれやすいと思われます。犬は群れで暮らす動物であるため、子猫を序列が下だと認識して面倒を見てくれることもあるでしょう。
また、どれだけ気をつけていても、犬と猫の多頭飼いでは少なからず群れでの暮らしに近い形態になります。猫の生活の質を保つためにキャットタワーを設置して猫しか行けない場所を作るなど、猫が1人になれる場所を確保することが大切です。
トイレへのこだわりが強い猫は多いです。トイレにほかの子の臭いがついたり、排泄を邪魔されたりするとストレスになり、膀胱炎などのトラブルになることもあります。
猫のトイレは犬がなるべく近づけず、人通りが少ない静かな場所に設置するのが望ましいでしょう。
多頭飼いでは、お互いのご飯を取り合わないように、食事の場所や時間はできれば分けたいところです。
犬は与えられたご飯をその場ですぐに食べ、猫はダラダラ食べることが多いです。犬はケージの中などで食事を与えて食べ終わったらケージから出す、猫のご飯は犬が届かない高さの場所に置くなどの工夫が必要になります。
猫は肉食動物、犬は肉食に近い雑食動物のため、求められる栄養素が異なります。少しくらいならお互いのご飯を食べてしまっても問題はありませんが、日常的に犬が猫のご飯ばかりを、猫が犬のご飯ばかりを食べていると栄養素の欠乏による病気になる可能性があるため注意しましょう。
たとえば、猫はアミノ酸の仲間であるタウリンを体内で合成できないため、食事から摂る必要があるのに対し、犬は体内でタウリンを合成できるようになっています。そのため、ドッグフードには猫に必要な量のタウリンが含まれていません。
これにより犬のご飯ばかりを食べている猫は、タウリン欠乏による拡張型心筋症を引き起こす可能性があります。
犬は外に散歩に行くためノミダニ予防をしていても、家の中でしか過ごさない猫は予防していないケースは多いかもしれません。しかし、犬の体についてきたノミダニが、家庭内で猫に移ることもあります。
猫を屋外に出さなかったとしても、飼っている動物はすべてノミダニ予防をすることが望ましいでしょう。
また、ほとんどの犬は蚊が媒介する寄生虫であるフィラリア予防をしていると思いますが、猫は予防していないことも多いです。猫はフィラリアに感染しにくいのですが、万が一感染がしてしまうと猫の突然死に繋がることもあります。
そのため、近年では猫のフィラリア予防を推奨する病院も増えてきています。
犬と猫の種を越えた多頭飼いは、気をつけなければならないことも多いです。しかし、飼い主さんが十分な注意を払って環境を整え、なおかつ犬と猫の相性がよければ、一緒に暮らすことは可能です。
逆にいえば、たとえ犬同士・猫同士でも、必ず仲良くなるとは限りません。
どのような場合でも共通していえるのは、安易に新しい子をお迎えせず先住の子を優先することが大切。新しい子を迎えるかどうかはよく検討し、愛犬・愛猫と楽しい暮らしを送りましょう。
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