トイレへのこだわりが強い猫は多く、トイレの大きさや形状、猫砂、置く場所など、さまざまな要因でトイレの好き嫌いが決まります。気に入ったトイレで落ち着いて排泄できないと、膀胱炎などの泌尿器系のトラブルを起こすことも。飼い主さんは、その子にあったトイレ環境を用意しましょう。猫の多頭飼いではさらに気をつけるべきポイントが増えます。愛猫たちのトイレ環境を整え、トラブル防止に努めましょう。
もくじ
猫にとっての理想のトイレは、公園の砂場がイメージに近いです。具体的な猫の理想のトイレ環境を紹介します。
猫は窮屈なトイレを好みません。普段は狭い場所で寝るのが好きな猫たちでも、トイレは別問題なことが多いようです。猫のトイレの理想的な大きさは、猫がすっぽり入れるくらいの大きさ、体長の1.5倍ほどがよいといわれています。
猫は排泄した後に砂で排泄物を隠す習性があります。そのため、砂の量が少なかったり、砂を掻いたらすぐに底が見えてしまったりするような、浅いトイレは好きではないようです。
排泄後の砂掻きで周りに砂が飛び散ってしまうと、飼い主さんは掃除が大変になります。砂が飛び散ることなく掃除の手間が省けるカバー付きのトイレを用意したいところですが、残念ながらカバー付きのトイレを好まない猫が多いようです。
とはいえ、あまり気にしない子もいるので、すでにカバー付きのトイレを使っているなら、普段の排泄の様子を確認し、不満を感じていないようならそのままでもよいでしょう。猫のトイレに対する不満行動については、のちほど解説します。
一言で猫砂といっても、今やかなり多くの種類があります。排泄後に固まるもの、砂の材質が鉱物系・木系・紙系・おから系・シリカゲル系など多岐に渡ります。
どんな砂が好きかは個体差があるので、一概にこのタイプがよいとはいえませんが、2020年2月に発表されたデータによると、鉱物系の砂を好む猫がもっとも多いようです。
ただ、鉱物系の砂は飛び散りやすいため、それが気になる場合は、猫が気に入ってくれるようであれば、飛び散りにくいタイプの砂にしても良いでしょう。
砂の種類を変更する際は、家にあるすべてのトイレの砂を一気に変えるのではなく、1つずつ変えて様子をみながら変えていきましょう。砂が気に入らない場合、そのトイレで排泄する頻度が落ちるはずです。
人がよく通ったり、洗濯機の音が騒がしかったりするところでは、猫も落ち着いて排泄ができません。逆に静かでも真っ暗なところでは、いくら夜目が利く猫でも排泄はしにくいでしょう。
静かで真っ暗にならないところが最適だと考えられますが、猫によって好みがありますし、家の構造もあるので何か所かトイレを置いてみてベストな場所を判断しましょう。
いつまでも排泄物が放置されていたり、臭ったりするトイレは当然猫も好みません。排泄物はなるべく早く片付け、月に1~2回は猫砂をすべて交換し、トイレの容器を洗浄するようにしましょう。
猫は柑橘系のニオイを好まない子が多いため、洗浄の際には柑橘系のニオイがする洗剤は使わないほうが無難かもしれません。
次の様子が見られる場合は、トイレに何かしらの不満を抱えている可能性があります。
トイレに不満を抱えている様子が見られたら、次の点を見直してみましょう。
ただし、急激なトイレ環境の変化はそれ自体がストレスになりかねません。トイレ環境を変えるときは、それまで使っていたトイレは一旦そのままにしつつ、新しいトイレを設けてみるとよいでしょう。
猫のトイレへのストレスが、膀胱炎に繋がることもあります。膀胱炎になると、オシッコを膀胱に溜めておくことが痛くなるため、少しでもオシッコが溜まったらすぐにトイレに行くようになり、少量頻回尿になります。また、血が混ざることもしばしばです。
トイレが気に入らず排泄を我慢してしまうとオシッコが長時間膀胱に貯留し、濃いオシッコになることも。尿路結石のリスクも上がるため注意しましょう。
多頭飼いの場合は、猫のトイレに関して次の点も注意しましょう。
猫同士の相性がよければトイレを共有することもできますが、仲の悪い猫が使ったトイレは使いたがりません。1匹ずつ自分のトイレを使えるよう、トイレの数は少し余裕を持って「猫の数+1」を用意しましょう。猫の数が多くトイレを置くスペースが確保できない場合は、「仲のよいグループの数+1」は最低限用意してあげたいところです。
また、トイレはそれぞれ離れたところに置くと良いでしょう。横並びにして置いていると、隣のトイレから他の子のニオイがして落ち着かず、力の強い子がどちらも使ってしまうことになりがちです。
また、複数の猫でトイレを共有していると、下痢や血尿などのトラブルが起きた際にどの子のものなのか把握しにくくなります。万が一寄生虫に感染している子がいた場合、ほかの子に感染してしまう可能性も高くなるため、やはりそれぞれに専用のトイレがあることが望ましいでしょう。
トイレの数が多くなると、使用頻度の少ないトイレが出てくるかもしれません。その場合、トイレ自体や猫砂が好みでない、置き場所が気に入らないといったことが考えられます。
多頭飼いにおすすめのトイレの数はキープしつつ、使用頻度の少ないトイレの環境を見直してみてもよいかもしれません。
トイレが非衛生的だと猫にとっても人にとってもよいことはありません。最低限、1日1回はトイレを掃除するようにしましょう。
また、猫の数が増えればトイレの数も増え、掃除の手間も増えます。トイレの数が「猫の数+1」と考えたとき、毎日無理なく掃除できるか考慮した上で新しく猫を迎えるか判断してみてください。
トイレへ行けるルートが1つしかないと、仲が悪い猫が道を塞いでいて排泄を我慢する猫が出てくるかもしれません。特に家庭内での序列の低い猫ほど我慢をさせられてしまうでしょう。
多頭飼いの場合は、トイレへのルートを複数確保することでそういったトラブルを防げます。
猫はトイレへのこだわりが強い動物。猫を多頭飼いする際は、1匹ずつのトイレ環境に配慮しなければなりません。
猫砂の好みや、カバーの有無を気にするか、充分なトイレの数を置けるスペースはあるか、などをよく考えた上で多頭飼いを始めましょう。
参照元:
服部 幸他, 猫が好むトイレ用砂(猫砂)およびトイレ容器の大きさに関する検討, 第16回日本獣医内科学アカデミー学術大会, 2020年2月
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