【獣医師監修】トイ・プードルがご飯を食べないのは風邪?知っておきたい愛犬の食欲不振・体調不良のサイン
2023.07.20 作成

【獣医師監修】トイ・プードルがご飯を食べないのは風邪?知っておきたい愛犬の食欲不振・体調不良のサイン

獣医師/ペット栄養管理士

岩切裕布

岩切裕布

食欲は、犬の体調を確認する上で大切な指標のひとつです。トイ・プードルが突然ご飯を食べなくなった場合、「風邪などの病気だったらどうしよう」「どうやって対処すればよいのだろう」など、飼い主さんも不安になりますよね。トイ・プードルがごはんを食べない理由や対処法について解説します。

もくじ

    食欲がないだけで犬の不調の原因はわからない!?

    【獣医師監修】トイ・プードルがご飯を食べないのは風邪?知っておきたい愛犬の食欲不振・体調不良のサイン
    (KlavdiyaV/shutterstock)

    小さいころから、食欲にムラがあるトイ・プードルは比較的多い印象を受けます。しかし、病気でも食欲がなくなることがあるため、食欲不振の原因を特定することは困難です。

    このように、特徴的な病気の症状でないものを「非特異的な症状」といいます。

    病気なのか病気ではないのか、病気であるならどういった病気なのかを判断するためには、非特異的な症状以外の症状や状況まで含めて考え、検査して原因を探していく必要があります。

    食欲不振を起こす病気以外の原因

    食欲不振を起こす病気以外の原因
    (Nukul Chanada/shutterstock)

    病気以外で、トイ・プードルの食欲不振の原因となるものを挙げてみましょう。

    ストレス・恐怖

    環境の変化によって、食欲が低下することがあります。ペットホテルや旅行先、来客や工事の音、花火の音などが、ストレスや恐怖の原因となっていることがあります。

    食べ飽きる

    もともと食にあまり興味がない犬は、同じフードを与え続けると突然食べなくなることがあります。フードをローテーションするなど、工夫してみるとよいでしょう。

    美味しいものが出てくるまで待つ

    食べずに待っていると、おやつやトッピングが足されることを学習している犬もいます。「愛犬が食べないからといってすぐに対処をしない」という、飼い主さんの我慢が必要なこともあります。

    発情

    ホルモンバランスの変化によって、食欲にムラが出ることもあります。特に、飼い主さんも愛犬も初めての経験となる初回発情時は、戸惑うことが多いです。通常は、発情期が過ぎれば自然と食欲は元に戻ります。

    しかし中には、ホルモンバランスの影響で、ずっと食欲がイマイチな犬もいます。検査で食欲不振の原因がみつからず、不妊手術がされていない子の場合、食欲を改善するために手術をすすめられることもあります。

    食べない以外にも症状がある!愛犬の風邪?体調不良?

    食べない以外にも症状がある!愛犬の風邪?体調不良?
    (Benjamin Freeden/shutterstock)

    トイ・プードルでも、風邪が原因でご飯を食べないことがあります。

    風邪と聞くと、一般的には、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、たん、発熱、のどの痛みなどの上気道(鼻やのど)に異変が起こると思いますが、風邪という名称はこれらを起こす総称であって正式名称ではありません。正式には「風邪症候群」といいます。

    犬の場合、人の風邪に似たような症状を引き起こす病気を「ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)」と呼ぶことがあります。ケンネルは「犬」、コフは「咳」という意味で、「犬の風邪」と呼ばれるものです。

    ケンネルコフは、複数のウイルスや細菌の感染によって引き起こされる呼吸器の病気です。犬の風邪という表現は、人と同様、正式な診断名ではなく、飼い主さんにわかりやすい例えとして、獣医師は使用したりします。

    うちの子が咳をしていることでケンネルコフに気づくことが多く、気づかずに状態が悪化すると、目やに、鼻水を伴い、発熱し、元気や食欲がなくなることがあります。

    基本的に「食欲がない」「元気がない」状態は、犬にとってはそれなりに悪化した状態であるため、このような症状がみられた場合は、すぐに病院へ受診することが望ましいです。

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    食欲不振を起こす病気

    食欲不振を起こす病気
    (TShaKopy/shutterstock)

    次のような病気が、食欲不振の原因になっていることもあります。

    胃腸炎や膵炎などの消化器の病気

    食べ慣れないものを食べるなどして、お腹の調子を崩すとご飯を食べなくなることがあります。

    嘔吐や下痢、お腹がキュルキュル鳴るなどの消化器症状が見られた場合は、胃腸炎や膵炎である可能性があります。

    腎臓病

    腎臓は、体の中の不要な物質を尿として排泄する臓器です。この機能が衰えると、本来排泄されるべき不要な物質が体の中に溜まり、食欲不振を引き起こします。

    初期の腎臓病では特に症状がありません。しかし、進行すると水をたくさん飲んで尿として排出する「多飲多尿」が見られます。さらに悪化すると、嘔吐や貧血などを引き起こします。

    門脈シャント

    肝臓と全身の静脈をつなぐ、余分な血管ができる病気です。

    体内で作られたアンモニアなどの毒素は、肝臓を通って解毒されます。しかし、余分な血管があることで、本来肝臓で解毒されるはずの血液が直接全身を回り、さまざまな症状を引き起こします。

    先天性であることが多く、不妊手術の術前検査で見つかることもあります。子犬なのに活発さにかける、成長が遅いなど「なんとなく気になる」場合は、動物病院に相談してみましょう。

    重症の場合は、壁に頭を押し付けたり(ヘッドプレス)、痙攣を起こしたりします。

    腫瘍

    消化管やその近くに腫瘍ができることで消化管を圧迫する、脳や鼻などに腫瘍ができて、視覚や嗅覚で食べ物を認識できないといったことから、食欲が落ちることもあります。

    腫瘍の場所や種類によって食欲への影響はさまざまですが、腫瘍から食欲を低下させる物質が出ることもあります。

    感染症

    風邪だけでなく、傷口からの細菌感染、膀胱炎、マダニに噛まれるなど、感染症に罹患すると、体はそれに対抗しようとします。これにより発熱や倦怠感などが出て、元気や食欲が低下することもあります。

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    ごはんを食べないときは基本的に病院で診察を

    ごはんを食べないときは基本的に病院で診察を
    (Menghan/shutterstock)

    小さい頃から食欲にムラがあるトイ・プードルはいます。そんな子の場合は特に、「今、食欲がない」のは、もともとの食欲のムラからくるものなのか、体の異変によるものなのかを見極めるのが困難です。

    一般的には、食欲不振以外の症状がなく、元気に動き回っているようであれば、1食~1日程度まで経過をみることもできます。しかし、それ以上の様子見や、元気がないといったほかの症状がみられる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

    「今日は気分がのらないのかな」「風邪でも引いたのかな」と考える飼い主さんも多いですが、愛犬に食欲がないときは、注意深く愛犬を観察しておきましょう。

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    著者・監修者

    岩切裕布

    獣医師/ペット栄養管理士

    岩切裕布

    プロフィール詳細

    所属 yourmother合同会社 代表
    (獣医師によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)


    日本ペット栄養学会
    日本小動物歯科研究会
    日本獣医腎泌尿器学会

    略歴 1987年 東京都に生まれる
    2005年 麻布大学 獣医学部獣医学科に入学
    2011年 獣医師国家資格取得
    2011年~2016年 都内動物病院に勤務
    2017年~2018年 フードメーカー勤務
    2018年~ DC one dish 設立
    2020年~ yourmother合同会社 設立

    資格 獣医師免許
    ペット栄養管理士

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