犬を多頭飼いすることを決めたら、一緒に寝たり遊んだりするところを想像してワクワクするものです。しかし、「トイレは共用でもよいの?」といった悩みも発生します。新しく迎える犬だけでなく、先住犬への接し方についても知っておき、楽しい多頭飼いライフを送りましょう。
もくじ
犬を多頭飼いする際、トイレを複数用意すべきかは先住犬の性格によるところが大きいです。
後から家にやってきた犬とトイレを共有することに対し、特にストレスを感じない大らかな性格の子であれば、トイレは1つで充分でしょう。
今まで粗相をすることのなかった先住犬が、「新しく犬を迎えてから粗相をするようになった」「便が緩くなった」といった兆候が見られたら、先住犬がトイレの共有にストレスを感じている可能性があります。その場合、トイレはそれぞれに用意しましょう。
あとから迎えた犬のトイレトレーニングのためにも、飼い主さんはトイレを分けるのか迅速に判断する必要があります。
人と同じく、犬にも性格が合う・合わないがあります。そもそも新しい子とそりが合わず、存在がストレスになっている場合もあります。その場合は、トイレだけでなく生活空間を分けないといけない可能性も。新しい子のお迎えは安易に行わず、慎重に検討しましょう。
また、ストレスだろうと思っていたら、実は膀胱結石(ぼうこうけっせき)のせいで痛くて粗相をしてしまっていたなんてケースもあります。
ストレスを感じているのは本当にトイレについてだけなのか、もしくは何かしらの病気の兆候ではないかということを考えることも大切です。
さらに、トイレを共用することにも、複数設置することにもメリット・デメリットがあります。それぞれを把握した上で、判断しましょう。
先住犬の排泄物のニオイがついているため、あとから来た犬もそこがトイレなんだと認識しやすく、トイレトレーニングが比較的ラクだと考えられます。
また、掃除が1か所で済む、トイレにスペースを取られないといったメリットもあります。
トイレが共用だと、どの子の排泄物かわからなくなってしまいます。体調がよいときは特に問題になりませんが、下痢や血便、血尿があったとき、どの子に検査や治療が必要なのか飼い主さんが判断することは難しくなるでしょう。
また、寄生虫やウイルス性・細菌性の下痢だった場合、その排泄物のニオイを嗅いだりすることで健康な子に感染してしまう可能性もあります。
さらに、1つのトイレを複数匹で使用するため汚れてしまい、頻繁に掃除しなければならないという面もあります。
トイレが分かれていると、排泄物の異常がどの子のものかすぐにわかるため、個々の体調管理がしやすいです。病院に連れていく際、異常のある排泄物をもって行くことで、正確な診断に役立つ情報が多く手に入ります。
排泄からあまり時間の経っていない便を持参することで、寄生虫や細菌などの感染源の有無、脂肪が含まれているか、どのような形状や色かなどを調べられます。
尿からは、結石のもととなる結晶の有無や、タンパク尿かどうかといった情報も得られます。
ペットシーツに染み込んだ尿では検査ができないため、可能ならペットシーツの撥水面を表にし、そこに溜まった尿をスポイトやシリンジで吸って持参するとよいでしょう。
新しく犬を迎えると同時に新しくトイレを設置した場合、先住犬はそれまで使っていたトイレを使うと考えられます。しかし、あとから来た子は単純にトイレがたくさんあるとしか思わず、使い分けできない可能性もあります。
新しいトイレにあとから来た子自身の排泄物のニオイをつけるなどして誘導し、トイレを使い分けさせるためのしつけをします。
それぞれのトイレで排泄できた時は思い切り褒めてあげることで、定着を狙いましょう。
また、トイレが複数あるため掃除の手間が増えるという点もデメリットとして挙げられます。
あとから来た犬、特に子犬は先住犬の排泄の様子を真似することが多いです。先住犬がトイレ外で排泄を繰り返すようだと、あとから来た犬もそこに重ねて排泄し、家庭内の衛生環境に問題が出てきてしまいます。
先住犬のトイレトレーニングは、新しい子を迎える前に完璧に済ませておくのが理想です。
新しい子のトイレトレーニングをしている間は、その子だけでなく、トイレトレーニングが完璧に済んでいる先住犬も、きちんとトイレができたときに思い切り褒めてあげましょう。
新しい子だけが褒められている様子に不満を感じ、今まできちんとトイレで排泄していた先住犬が、ほかのところで排泄するようになるかもしれません。
また、先住犬・後住犬かかわらず、トイレを失敗したときに叩くなどの体罰を与えることはおすすめできません。犬と人の関係性にヒビが入る可能性があります。
これはトイレ以外のしつけにも当てはまります。犬にとって嫌なことをするよりも、楽しいことを取り上げる(オヤツを与えないなど)ことのほうが、良好な関係を維持しつつ行動修正ができることが多いです。
排泄物には、その個体のアイデンティティと生物学的情報を知らせるニオイの信号が含まれています。それを周りにアピールするマーキングのために、オスの犬は片足をあげて尿をすることが多いです。
この尿マーキング行動は雄性ホルモン(アンドロジェン)の影響で増加します。去勢手術により半数以上は改善するという報告があるため、家庭内で尿マーキング行動が繰り返されるようなら手術を検討しましょう。
去勢手術には将来的な肛門周囲腺腫の発生の予防や、前立腺肥大の予防などの効果もあります。
しかし、新しい犬が来てからマーキング行動が始まった場合は、トイレや周りの環境を整えるのが先であるべきです。
新しく犬を迎えるにあたって、トイレに関すること以外にも、飼い主さんはいろいろと考えなければいけないことがあります。安易に新しい犬をお迎えするのではなく、先住犬にきちんと配慮できるかなどをよく考えましょう。
上手にお迎えしてあげることができれば、生活の楽しみは2倍、もしくはそれ以上になるかもしれません。しっかり準備を調え、楽しい多頭飼い生活を始めてみてください。
【獣医師監修】犬の多頭飼いってどうなの?メリット・デメリットを解説
【獣医師監修】犬の多頭飼い、気になる先住犬との相性
【獣医師監修】子犬の多頭飼いを考える際に大切なこと
【獣医師監修】犬と猫の多頭飼いはできる?両方を飼う場合のヒント
【犬・猫】多頭飼い、ペット保険の選び方は変わる?多頭割引など選び方のポイントを解説
【獣医師監修】犬の多頭飼い、トイレはどうしてる?共用・分ける?しつけ方法を解説
【獣医師監修】犬の多頭飼い、ケンカをしたら飼い主さんはどう対応する?
【獣医師監修】犬の多頭飼い、ケージの選び方や置き方を解説
【獣医師監修】留守番や多頭飼いで役に立つ、ケージの使い方