犬が下痢をしたとき、もしくは慢性的に下痢が続いているとき、飼い主さんはどう対処しているでしょうか。食事を変えたり絶食させたりして様子を見ていないでしょうか。もちろんそれが有効なときもあります。しかし、そればかりに頼っていると大変なことになるかもしれません。今回は、甘くみてはいけない犬の下痢について解説していきます。
もくじ
まず、自分が経験したことのある症例についてお話します。
愛犬がもともと慢性的に下痢をしていましたが、元気だったので飼い主さんは食事変更や絶食で様子を見ていたそうです。しかし、数日前から元気や食欲がないとのことで病院に来院されました。
さまざまな検査を実施し、最終的に「リンパ腫」と診断がつきました。リンパ腫は治療に反応しにくいことも多く、この症例も数ヶ月後には亡くなってしまいました。
早めに検査をしていたら、必ず助けられたかはわかりません。しかし、病気を放置したり自己判断したりすると、治療がしにくくなってしまうことは間違いありません。
絶食や食事療法には下痢を緩和させる可能性があります。そのため、下痢の原因が食事やストレスであれば、絶食や食事療法をとっても問題ありません。
しかし、下痢の原因が食事やストレス以外であった場合は、何らかの治療を加えなければ解決しないことが多いです。
「下痢だから」と絶食や食事療法でむりやり抑え込んでしまうと、病気の発見の遅れにつながり、取り返しがつかなくなるケースもあるのです。
以前は、犬の消化器症状に対して絶食を指示することが多くみられました。胃腸を休ませるためには有効な手段であるため、現在でも半日程度の絶食が指示されることはよくあります。しかし、2~3日以上の長期間の絶食は行われないことがほとんどです。
腸の粘膜には絨毛(じゅうもう)とよばれるヒダがあり、そこから食べたものが吸収されていきます。絶食期間が長すぎると絨毛が短くなり、吸収効率が悪くなってしまいます。
一度短くなった絨毛は、元に戻るまでに時間がかかります。長期間の絶食は愛犬の体に悪影響を及ぼすこともあるのです。
絶食はうまく使えば有効な手段ですが、絶食期間を判断するのは非常に難しいです。安易な絶食は逆効果になるため、飼い主さん自身で判断せず、かならずかかりつけの獣医師の指示のもとで行ってください。
下痢の種類はいくつかありますが、次の症状がみられた場合はなるべく早めに病院を受診しましょう。
元気がなくなる病気には、自然治癒する病気もあれば、重症化して命に関わる危険な病気もあります。特に、急に元気がなくなった場合はかなり警戒が必要なため、すぐに病院を受診しましょう。
下痢をしていて元気がない以外に、嘔吐などの症状があったら注意が必要です。特に何度も嘔吐する場合は、単純な胃腸炎ではない可能性もあります。
下痢以外の症状がみられる場合も、早急な受診が必要になります。
下痢は脱水やイオンの喪失を引き起こし、体にダメージを与えます。子犬はそのダメージをより受けやすく、脱水やイオンの喪失が進行して命に関わる可能性もあります。
元気で食欲があり、嘔吐などの症状がみられなかったとしても、下痢が慢性的に続く場合は注意が必要です。
ストレスなどが原因の一過性の胃腸炎は1~2週間以内に治癒することがほとんどです。数ヶ月~年単位で下痢が続く場合は、何らかの病気が隠れている可能性が高いです。
手遅れになるケースもあるので、放置したり長期間様子を見たりはしないようにしましょう。
慢性的な下痢には、感染(細菌や寄生虫)、ストレス性腸炎、食事、腫瘍(しゅよう)、慢性腸症、奇形などさまざまな原因があります。
人間に感染したり、犬の命に関わったりするものも数多くあるため注意しましょう。
犬の慢性下痢に対してはこちらの記事でも紹介しています。
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下痢に対して食事による治療を行うこともあります。しかし、食事の種類や反応を見る期間などは、専門家でも判断が難しいです。
場合によっては、病気の発見をいたずらに遅らせてしまうことも多いため注意が必要です。
慢性的に下痢が続いている場合は、何らかの病気が背景に存在している可能性が高いです。飼い主さんが自己判断せず、病院でしっかり検査をしてもらうようにしましょう。