DC one dish獣医師/ペット栄養管理士の岩切です。「関節が気になる」「肝臓が気になる」など、さまざまな理由で犬や猫にサプリメントを与えることがあります。サプリメントを購入する際、何に注目し選びますか。サプリメントの選び方から与え方までを飼い主さんが知り、適切にサプリメントを使用できるようにしましょう。 前回の記事:【獣医師監修】旅行や災害時のペットの食事は?普段と異なる環境での犬猫の食事を考えよう|vol.20
もくじ
一般的に動物用サプリメントとは、「動物に与える医薬品以外のもので、健康の維持増進のために利用されるもの」を指します。
サプリメントは医薬品ではないため、効果効能を謳うことはできません。
法律上、動物用サプリメントの広告やサイトで、「●●に効く」「●●病の予防」などと特定の状態を改善するように感じさせる表現はできないなど、表示の仕方には法律上の取り決めがあります。
裏を返せば、明らかに効果効能がわかるような表現をしているサプリメントは、法律違反の可能性があるということ。ペットのためにも、飼い主さんは立ち止まって考える必要があります。
(1)主に、動物の疾病の治療に使用されることが目的と判断される表示
(2)主に、動物の疾病の予防に使用されることが目的と判断される表示
(3)主に、動物の身体の構造に影響を及ぼすことが目的と判断される表示
(4)主に、動物の身体の機能に影響を及ぼすことが目的と判断される表示
(5)医薬品であることを暗示させる表示
(6)新聞、雑誌等の記事、獣医師、学者等の談話、学説、経験談等を引用又は掲載することにより医薬品であることを暗示させる表示
参考:農林水産省「ペットフード等における医薬品的な表示について」
参考サイトに具体的な例があるので参考にしてみてください。
ちなみにサプリメントは、治療目的でも、予防目的でもペット保険の対象外となるのが一般的です。
動物用のサプリメントは、人のサプリメントよりも企業の参入障壁が少なく、多くの会社からさまざまな製品が出ています。
残念ながら、その中には、人のサプリメントのパッケージを変えて、そのまま転用しただけのものなど、原材料が犬や猫にとって本当に安全かわかってない成分が含まれているものもあるため、極めて注意が必要です。
目新しい成分は、体によい効果があるのではないかと期待したい気持ちはとてもよく理解できます。
しかし、あくまでもサプリメントであること、新しい成分ほど安全性が確立されていない可能性が高いことを念頭に置き、原材料表記をよく読んで調べましょう。
実際に注意すべきサプリメントの例をご紹介します。
タマネギ、ニンニク、ブドウなど、動物によっては中毒を引き起こす物質もあります。
中毒物質を取り除いた状態で製品化されているようであれば、問題ありませんが、ブドウは何が原因で中毒を引き起こすのか、中毒物質自体がわかっていません。
論文などでデータが示されている成分でも、極めて微量しか配合されていない製品もあります。特に、原材料の原価が高いサプリメント成分では、このようなことが起こり得ます。
確かに成分が入っているため、パッケージやサイト上に原材料として表記できますが、極めて微量では与える意味を見つけるのは難しいでしょう。
サプリメントは、有効成分量がある程度開示されているものを選ぶことをおすすめします。
人のサプリメントと同じく、動物用のサプリメントにもブームがあります。
一昔前までは、関節系のサプリメント成分といえばグルコサミンやコンドロイチンが多くを占めていました。しかし今では、オメガ3脂肪酸を含むサプリメントも、同じくらい販売されています。
また、腸内環境を整えることで腸の動きを正常化し、皮膚や内臓を健康に保とうという腸活が流行っています。これにより、腸内環境の改善をめざす成分である乳酸菌や食物繊維なども、ブームとなっています。
確かに、ブームの裏には新しいエビデンスが出てきているという事実もあります。積極的に取り入れるというよりは、必要だと感じたときにサプリメントを検討するくらいの姿勢がよいでしょう。
サプリメントを与えることが大好きな飼い主さんだと、場合によっては10種類以上ものサプリメントを与えていることがあります。
サプリメントにもカロリーがあり、特に体の小さな犬や猫の場合、それだけで1日に必要なカロリーの10%以上を摂取していることも。
総合栄養食やAAFCO基準に沿って作られた食事以外は、おやつも含め1日に必要なカロリーの10%以内に留めることが推奨されているため、サプリメントのカロリーも確認するようにしましょう。
サプリメントを与えることで必要な栄養素のバランスが崩れ、体調を崩しては元も子もありません。
サプリメントを大量に与えることに問題はないと考える飼い主さんもいますが、有害になることもあります。
製品名や見た目の形状が違うだけで、同じ成分や似たような成分が含まれていると、過剰摂取になる恐れがあります。
やはり、サプリメントを与える前に原材料をよく読み、調べることが必要になってきます。
サプリメントの中には、投薬内容と相互作用を示したり、医薬品グレードとサプリメントグレードで成分が重複したりすることがあります。
飲み合わせを考えることは非常に大切。副作用が出てしまった場合に、薬のせいなのか、サプリメントが原因なのかを判別する必要があります。
服薬している愛犬や愛猫に、ご自身で購入したサプリメントを与えていたり、これから与えようと考えていたりする場合は、必ずかかりつけの先生に申告をお願いします。
サプリメントはあくまでも、体の調子を整えるためのものです。なんとなく体によさそうだからとサプリメントを与え始めたものの、次第に中断することに不安を覚える飼い主さんも見受けられます。
結果、期待される変化を感じないものの、沢山のサプリメントを与え続けるということにならないよう、「サプリメントを中止する」という選択肢ももちましょう。
その際、サプリメントを中止することで浮いた費用を使い、何ができるのかを考えるのもひとつの方法です。
ただし、手作り食では不足しがちなビタミン・ミネラルを補うようにサプリメントの補充が必要だったり、治療の補助となったりするサプリメントもあります。
かかりつけの先生と相談し、今後の方針を決めていくようにしましょう。