「柴犬が咳をしている」「震えている」「柴犬の風邪?」と心配する飼い主さんもいることでしょう。犬も風邪の症状を引き起こすことがあります。しかし、人と症状や対処法がまったく同じわけではありません。犬の風邪とは何か、人の風邪との違い、症状について解説していきます。犬の風邪を知ることで、いざ症状が出たときに適切に行動できるようにしましょう。
もくじ
風邪のひきやすさに犬種差は知られていません。しかしどの犬種でも、成犬よりも免疫が確立していない子犬に発症することが多く、ペットショップやブリーダーなど、ほかの子犬と接するなかで風邪をひくことがあります。
子犬を迎え入れる際は必ず、その子に風邪を疑う症状がないか確認しましょう。
迎え入れる際に症状がなかったとしても、環境の変化によって迎え入れてすぐに発症することがあります。迎え入れた直後は自宅で安静を保ち、なるべくストレスのかからない環境を提供してあげてください。
迎え入れてから数日は、ご飯を与えたり、様子を見たりするだけであまり構わないようにし、自宅に慣らす期間を設けるようにしましょう。
健康な犬でも震えることがあります。寒さや緊張、老齢性、その他の病気からくる震えもあります。注意深く観察し、気になることがあればその様子を動画で撮影し、かかりつけ医にご相談ください。
風邪とは、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、たん、発熱、のどの痛みなどの上気道(鼻やのど)に急性の炎症を起こす症状の総称です。「風邪」という病原体がいるわけではなく、動物病院を受診しても「風邪」という診断名がつくことはありません。
しかし、人の風邪に似たような症状を起こす「ケンネルコフ(伝染性気管支炎)」を、犬の風邪と説明されることも少なくありません。
「ケンネルコフ(伝染性気管支炎)」は、複数のウイルスや細菌に感染することで引き起こされます。一般的に風邪症状の原因となる病原体は以下のようなものです。
これらの病原体は、単独感染だけでなく複数感染することもあります。
混合ワクチンの種類は複数ありますが、ケンネルコフの原因となる病原体であるパラインフルエンザウイルスや、アデノウイルスⅡ型の予防は、通常は5種以上であればどの混合ワクチンにも含まれています。
子犬がケンネルコフにかかると悪化しやすいため、適切なタイミング、回数で混合ワクチンを接種しましょう。
混合ワクチンを接種している場合、通常はワクチン証明書が発行されています。新しく子犬を迎え入れた際は、必ずブリーダーやペットショップなどに接種済みのワクチンの種類や回数、摂取した日付を確認し、次のワクチン接種の予定を立ててください。
咳やくしゃみ、鼻水など風邪を思わせる症状があるにも関わらず、食欲旺盛で元気いっぱい遊びまわる子犬は意外と多いです。
一日に数回、「コンコン」「ケフケフ」と咳をしたり、鼻水が多かったりするだけの場合、動物病院へ連れて行かなくても大丈夫だろうと考える飼い主さんも見受けられます。しかし、柴犬はもちろんどんな犬種でも、子犬は自身の体調不良より好奇心が勝る傾向があります。
そのため、ある程度病気が進行しないと、元気がない、食欲がないといった明らかな体調不良の兆候が出ないこともあるため注意が必要です。
症状が悪化してからの受診は治療期間が長引く恐れがあるため、早めの受診をしましょう。
散歩のときだけむせるような咳をしたりえずいたりするものの、散歩以外ではまったく症状が出ない場合は、病的な症状ではない可能性があります。
一般的に散歩好きといわれる柴犬は、好奇心が旺盛で散歩の際にグイグイと飼い主さんを引っ張って歩くことがあります。
首輪やハーネスが、喉元を強く刺激し、咳やえずくような状況になっていないか確認し、状況にあわせて首輪やハーネスのサイズを調整したり、散歩の仕方をしつけたりするようにしてください。
ただし、ベースとして気管虚脱という病気のある子は、健康な子よりも喉や首への刺激が咳やむせ込みを誘発されやすいです。散歩のときだけ頻繁に咳をするようなら、風邪ではない別の病気の可能性を考慮しましょう。
気になる場合は動画を撮影して動物病院へ行くことをおすすめします。
人が風邪を引くと、市販の風邪薬を服用し、休養して風邪を治すことが一般的です。
人用の市販の風邪薬には、解熱鎮痛成分やのどの痛みを抑える成分が含まれており、原因となる病原体を直接叩くような成分は含まれていません。また、病院で処方される人用の抗生剤も特定細菌にしか効果がありません。
人と犬とでは、風邪の原因となる病原体、治療の仕方や使用する薬の種類、量が大きく異なります。そのため、人用の風邪薬を柴犬に与えることは非常に危険です。
薬によっては、風邪よりも優先して治療しないと、愛犬の命にかかわる場合もあります。ケンネルコフを疑う症状が出たら、飼い主さんの判断で投薬をせず、必ず動物病院で指示を受けてください。
症状が悪化してからの受診は完治が遅れるため早めの受診が肝心です。