愛猫にノミやマダニがいないか、予防はどうしたらいいのかと心配な飼い主さんも多いと思います。室内飼育だから予防は必要ないと考える飼い主さんもいますが、知らないうちに飼い主さんが靴下などにノミ・マダニをつけて持ち帰ってしまったり、網戸から侵入したりする可能性もあります。ノミ・マダニがどんな生き物なのかを紹介しながら、猫の予防薬の選び方をお話しします。
もくじ
ピョーン、ピンッと飛んでいくノミ。「室内飼育をしているので大丈夫」と考えている飼い主さんも多いですが、網戸の隙間や飼い主さんの靴下などを介してノミは室内に容易に侵入してきます。
小さくてすばしっこいため見つからないことが多く、マンションの高層階で過ごしている猫の背中がの毛がハゲて受診したところ、ノミが寄生していたという事例もあります。
ノミに寄生されていても全く気にしない猫もいますが、中には皮膚炎を起こす猫もいます。背中や腰の部分が汚れやすくなっていたり、かゆがっていたりする場合はノミが原因であることが多いです。
かゆみや痛みから腰周辺を触ると怒る猫もいます。普段から愛猫の全身をチェックし、毛をかき分けて地肌を見ておくことをおすすめします。
ノミを見つけたり、ノミの糞を見つけた場合は市販薬を頼ったりせずに、動物病院に相談しましょう。
愛猫にノミを見つけた場合の対処法についてはこちらをご覧ください。
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ノミの体内には瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)という寄生虫がいます。猫が毛繕いの際にノミを食べると、瓜実条虫に感染してしまいます。瓜実条虫への感染は、下痢の原因になります。
お尻のまわりに白い米粒のような小さな虫が見つかったら、瓜実条虫に感染している可能性があります。ノミとあわせて、瓜実条虫も駆虫する必要があるため、かかりつけの先生に相談しましょう。
「ダニ」と聞くと布団にいる目に見えないダニを想像する方が多いと思いますが、「マダニ」はしっかりと目に見えるサイズの別物です。
マダニは草むらや公園などに生息しており、室内飼育の猫でも、人が外から室内に持ち込むことで感染することがあります。
猫がマダニに吸血されると、次のような病気にかかる可能性があります。
ヘモプラズマという小さな病原体が、猫の赤血球に感染する病気です。赤血球に変化が起こり、体の免疫機能に赤血球が攻撃されて貧血になります。
ボレリア菌が原因で元気がなくなったり、食欲が落ちたり、あしを引きずる様子が見られたり、発熱したりします。人もマダニに刺されることで、ライム病に感染します。
SFTSウイルスが原因で、食欲不振、発熱、嘔吐、血小板減少、白血球減少、黄疸などを起こします。致死率が高い感染症です。
マダニは猫の病気のみならず、人に影響する病原体も持っています。
ライム病のようにマダニが媒介する病気もあれば、マダニに刺されて病原体を保菌した猫の体液が目に入るなどして人へ感染するもの(Q熱、SFTSなど)もあります。
人がSFTSウイルスに感染すると、発熱、倦怠感、食欲低下、消化器症状、リンパ節の腫れ、血小板減少による出血の原因になるといわれています。
愛猫はもちろん、飼い主さん自身のためにも、草むらに入らないなどマダニに触れない・持ち帰らないよう意識することが大切です。
吸血中のマダニを見つけると焦って引き抜こうとしてしまいがちです。しかし、マダニの体がちぎれて愛猫の皮膚にマダニの頭が残ったままになり、炎症の原因になることがあります。
飼い主さんの安全のためにも、マダニを見つけたら、すみやかに動物病院を受診しましょう。
マダニは吸血しながら体が膨らんでいくため、イボと見間違える飼い主さんもいますが、充分に吸血すると勝手に抜け落ちていなくなります。後から確認できるように、写真を撮っておくとよいでしょう。
「ノミやマダニを予防しよう!」と思っても、ノミ・マダニに関する商品が沢山あるためどれを使用したらいいのか悩む飼い主さんも多いのではないでしょうか。
ノミ取り櫛などを用いたブラッシングはノミを見つける方法にはなりますが予防にはなりません。
シャンプーも、ノミが大量に寄生している状態で糞の付着などを落とすのには有効ですが、予防にはなりませんのでご注意ください。
ノミやマダニの予防には、後頭部から首付近の毛をかき分けて地肌に滴下するタイプの予防薬がおすすめです。
製品によって広がる原理がやや異なりますが、一か所に滴下することで全身に広がるため、滴下後飼い主さんが手や櫛を使って全身に塗り広げる必要はありません。
スーパーなどでも購入できますが、愛猫のためには動物病院で処方されたものを使用しましょう。また、滴下後シャンプーをしてよいタイミングは製品によって異なります。シャンプーの予定がある場合は注意してください。
予防薬には首輪タイプのものもありますが、ほとんど効果がないといわれており、皮膚トラブルのリスクがあります。また、アロマオイルなどを用いた虫よけは、猫の中毒症状の原因となる可能性が高いため危険です。
製品にもよりますが、ほとんどの予防薬は、持続効果が1カ月間です。
ノミ・マダニは1度の滴下で予防終了ではなく、通年予防が基本です。地域にもよりますので、何月~何月まで使用すべきか、かかりつけの先生に相談した上で使用しましょう。
動物病院で取り扱っている予防薬にもさまざまな種類があります。予防薬を使用する際のポイントを紹介しますので、かかりつけの先生と相談しながら愛猫にあったものを選びましょう
ほとんどの予防薬が生後8週または9週齢以上からの使用となっています。生後2ヵ月未満の子猫を保護した場合は、子猫でも使用できるスプレータイプのノミ・マダニ予防薬を使用しましょう。
屋外で生活していた猫を保護して迎える場合などは、お腹の虫も一緒に駆虫できるオールインワンタイプの滴下薬がおすすめです。
建物内でも、昆虫やカエルが出現しやすい場所で暮らしていると、猫がそれらを食べて寄生虫に感染することもあります。住環境によっては、予防としてしようするのもよいでしょう。
製品によってノミの成虫にしか効果のない薬もあります。ノミの卵→幼虫→蛹(さなぎ)→成虫と成長段階によって効果のある成分が異なるため、どのタイプのものを使用するのか、かかかりつけの先生に確認しましょう。
蛹に効果のある成分はありません。そもそも蛹にならないよう、ノミの予防はしっかり継続する必要があります。
毎月1回予防薬を使用するのであれば、フィラリアも予防できるものがおすすめです。フィラリアについて詳しくは、こちらをご覧ください。
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「室内飼育だからノミやマダニの予防は関係ない」と考える飼い主さんは多いです。しかし、ノミやマダニは一度寄生すると、愛猫の体で増えるだけでなく、卵が床に落ちて成虫になり、愛猫や飼い主さんを吸血しながら家全体で増えていきます。
大変なことになる前に、しっかり予防しておくことが大切です。
ノミやマダニの予防薬に関する相談で病院とのコミュニケーションの機会が増え、愛猫の健康を考えるきっかけになるとよいなと思います。
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