猫にもフィラリアの予防が大切なことをご存知ですか。犬の飼育経験がある飼い主さんはフィラリア予防の必要性を理解していることが多いですが、猫もフィラリア症にかかる可能性はあります。フィラリアとはどんな病気で、どう予防したらよいのか、猫のフィラリア予防について解説します。
もくじ
フィラリアは「犬糸状虫(いぬしじょうちゅう)」とも呼ばれる糸状の寄生虫です。フィラリアの予防は犬の飼い主さんであれば知らない人はいないほど、犬が予防すべき病気の代表とされてきました。
しかし近年、猫もフィラリアが原因で突然死にいたることがあるといわれ、猫のフィラリア予防も重要となっています。
フィラリアは、蚊が媒介して感染が広がります。フィラリアに感染している犬を吸血した蚊が、次に猫を吸血すると猫もフィラリアに感染してしまうのです。
犬の方がフィラリアの本来の宿主であるため猫の体内ではフィラリアは増えづらい傾向があります。
しかし、蚊に刺された猫の皮下組織で成長し、血管に侵入して成長を続け、ごく一部が肺で成虫となり咳など呼吸器症状を引き起こすこともあります。また、心臓に移動していき心臓に負担をかけ突然死につながることもあります。
フィラリアが猫の肺に辿り着くと、免疫反応によって急性炎症が起きることがあります。この際、呼吸困難になって死亡する場合もありますが、フィラリアが成虫になると症状が落ち着くこともあります。
成虫になったフィラリアは、猫の体内で2~4年生存するといわれています。成虫が死滅すると再び免疫反応で肺に炎症が起きたり、血栓や死滅したフィラリアが血管に詰まったりします。
肺に大きなダメージを受けることが猫の突然死に繋がり、その割合は10~20%といわれています。
また、突然死のリスクを乗り越えたとしても、肺に病変は残ります。そのため、咳などの呼吸器症状が慢性化します。
ほとんどの猫はフィラリアに対して抵抗力を持っているため、上記のような症状は出ないか、出たとしても一時的であることが多いです。
また、上記症状以外にも、嘔吐や息切れ・食欲不振・体重減少などさまざまな症状が見られることもあり、ほかの病気と見分けがつきにくいのも特徴です。
さらに、フィラリアが猫の肺ではなく神経に侵入すると、痙攣や運動失調などさまざまな神経症状を引き起こすこともあります。
このように、猫のフィラリア症は、診断が難しく、未解明のことが多いのも事実です。
フィラリアは猫の体内で増えにくいため、検査で陰性になっても猫の体内にフィラリアがまったくいないと判断することは難しいです。
採血して抗体検査や抗原検査をしたり、血液を顕微鏡で見てミクロフィラリアを探したりといった検査で陰性であっても、隠れて感染している可能性が考えられるのです。
検査で見つけにくいからこそ、猫にはフィラリアの予防をしっかり実施してあげる必要があります。
「蚊が媒介するなら、室内飼育のうちの猫は大丈夫」と考える飼い主さんも見受けられますが、蚊は扉の開閉時や網戸の隙間から室内へ容易に侵入してきます。
室内飼育の猫でも、フィラリアに感染するリスクがあることを覚えておきましょう。
猫のフィラリア予防薬は、メーカーによって体重ごとにサイズが異なるものもあります。かかりつけの動物病院に相談した上でどれを使用するか判断しましょう。
犬のフィラリア予防薬はおやつタイプが多いですが、猫は食べなかったり吐いたりすることが多いため、滴下タイプの予防薬が一般的です。
また、フィラリアと一緒にノミ・マダニを予防できるものもあるため、何の予防ができるのかしっかり確認した上で予防薬を選びましょう。
フィラリアの予防薬は、毎月1回の使用(通年使用)がおすすめです。
ただし、蚊のいる4~12月はフィラリア予防ができるものを使用し、1~3月はフィラリア予防をお休みして、ノミ・マダニのみ予防できるものに変更して使い分けをするなど、地域によって差があります。
どの期間にどの予防薬を使用するか、かかりつけの先生と相談しましょう。
滴下タイプの予防薬は、滴下後24時間経過していればシャンプーOKのものや、シャンプー後数日経って皮脂がやや溜まってきてから使用したほうが効果を発揮できるものなど、さまざまな製品があります。
シャンプーをする予定がある場合は、事前に確認しておくとよいでしょう。
予防薬の製薬会社としては、フィラリア陽性の可能性が高い猫に対しては検査を実施し、陰性が確認できてからの使用をおすすめしています。
しかし、陰性か陽性かを確実に判断できる検査がないため、初めて予防薬を使用する際は、事前の検査について、かかりつけの先生とよく相談しましょう。
また、フィラリア予防薬を初めて使用する際は、開封方法や塗布部分を確認するために動物病院で塗ってもらいましょう。
処方してもらって自宅で塗る場合などは、万が一予防薬使用後に体調変化があった場合に備えて動物病院の休診日を避け、朝に塗って1日様子を見ましょう。
予防薬を滴下した部位が脱毛する猫もまれにいます。よく観察してあげましょう。
猫の突然死リスクを少しでも減らすために、フィラリア予防は日頃からできる対策のひとつです。しかし、フィラリア症といえば犬のイメージが強く、猫にフィラリア予防が必要なことを知らない飼い主さんも多いのが事実です。
猫の感染症予防にはワクチン接種だけでなくフィラリア予防も必要です。
愛猫を守るためにも、まずは飼い主さんだけでもかかりつけの先生に相談しに行ってみてはいかがでしょうか。この記事が、猫の飼い主さんが動物病院へ向かうきっかけになると嬉しいです。
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