フィラリア症の予防は、狂犬病予防接種や混合ワクチンと並び非常に大切です。それは、フィラリア症の予防によって犬の寿命は延びたといわれるほど。しかし、地域によってフィラリア症の予防期間は異なるため、正しい知識をもって予防していきましょう。
もくじ
フィラリア(犬糸状虫)は、蚊の吸血により犬猫の体内に入り込む線虫という分類に入る寄生虫です。
犬の心臓や肺の血管に寄生したフィラリアの成虫が、繁殖して幼虫であるミクロフィラリア(L1)を生み出します。このミクロフィラリア(L1)が、血流に乗って犬の全身へ広がったタイミングで蚊が吸血すると、ミクロフィラリア(L1)が蚊の体に侵入します。
蚊の体内でミクロフィラリアがL1→L2→L3と成長すると、犬への感染力をもちます。そのタイミングで蚊が別の犬を吸血すると、ミクロフィラリアが犬の体内へ侵入し、フィラリアに感染してしまいます。
犬の体内に入ったフィラリアはまず、皮膚の下や筋肉内でL4へと成長。L5になると血管内に侵入し、心臓や肺でフィラリアの成虫となります。このように、フィラリアの感染は広がっていきます。
犬がフィラリアに感染し、心臓や肺の血管に寄生されると次のような症状があらわれます。
最終的には死に至りますが、フィラリア症は予防できる病気です。しっかり対策して愛犬を守りましょう。
なお、ここでは犬について解説しましたが、猫の場合もフィラリアが原因で突然死につながる可能性があります。猫のフィラリア予防については下記の記事をご覧ください。
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勘違いしている飼い主さんも多いですが、フィラリア症の予防薬は、蚊を寄せ付けなくしたり、幼虫を入り込めなくしたりする「予防薬」ではありません。
犬猫の体内に入ってきたミクロフィラリア(L3,L4)を駆除する「駆虫薬」であることを知っておくとよいでしょう。
つまり、フィラリア症の予防薬は、投与してから1か月間、犬猫をミクロフィラリアから守ってくれるものではありません。
前回の予防薬投与から、今回の投与までの間に体内に侵入したミクロフィラリアが、血液中に移行する前にやっつけるためのものです。
フィラリア症の予防は、蚊が出始めてから1か月後に始め、蚊がいなくなってから1か月後まで薬を飲ませることが一般的です。これは前述のとおり、侵入したミクロフィラリアをやっつけることで、成虫になるのを防ぐためです。
そのため、蚊に吸血される時期を過ぎてもしっかり予防することが大切。最後の投薬が最も重要であるといってもよいでしょう。
では、具体的にはどうやって投薬の時期を決めているのでしょうか。
これには、HDU(Heartworm Development heat Unit)というフィラリアが感染する期間を推定する方法があります。
「1日HDU」=1日の平均気温 – 14℃(臨界温度)
※平均気温=(最高気温 + 最低気温)÷2
※感染開始=毎年1月1日から毎日1日HDUを加算して130を超えた日
※感染終了=直近30日の合計HDUが130を切った時点
(HDUがマイナスの時は0として計算する)
気温によってフィラリアに感染する期間を推定するため、フィラリアを予防する期間は、気温の高い沖縄では長く、気温の低い北海道では短くなるといった差が出ます。
地域によって予防期間に差があるため、予防する期間はかかりつけの動物病院の指示に従い投薬をしましょう。
また、1か月に1度、フィラリアの予防をしている飼い主さんが多いと思います。これは犬猫の体内に入り皮膚の下や筋肉内から、血管内に移行するまでの期間が、およそ2か月程度であるためです。
室内飼育の猫は、日常的に散歩で外出する犬と異なり、外に出ることはまずありません。しかし、室内に蚊が侵入し、フィラリアに感染することがあります。そのため、猫も予防をすることが推奨されます。
フィラリアの予防をする前に大切なことは、「現在フィラリアに感染していない」ということです。
万が一感染した状態で薬を飲むと、体内のフィラリアが一度に死滅し、血管に詰まったり、アナフィラキシーショックが起こったりすることがあります。命を落とす危険性もあるため注意しましょう。
必ずフィラリアの検査を受けてから、投薬を開始してください。
フィラリアを予防するお薬には、沢山の種類や形状があり、消化管内の寄生虫(回虫、条虫など)やノミ・ダニの予防も一緒にできるオールインワンのタイプも販売されています。
地域や、投薬の仕方、予防したい病気にあわせて動物病院で処方してもらえます。
味つき、味なしどちらもあります。金額は比較的安めですが、予防できる病気の範囲が狭く、ノミ・ダニの予防薬は別になることがあります。味のないタイプは、食物アレルギーを持つ犬には重宝されます。
肉のニオイや味がするため、多くの犬が自らすすんで食べてくれます。投薬しやすいというメリットがあります。
1年間1回の注射で予防できるものもあります。投薬を忘れてしまいがちな人にとってはよい選択肢です。ただし、フィラリアの予防しかできないため、ノミ・ダニの予防などはほかの薬を併用する必要があります。
背中に付けるタイプのものです。なかなか薬を飲んでくれない犬などに利用されます。
フィラリア症の予防薬成分のひとつである「イベルメクチン」。ノーベル生理学・医学賞を受賞した、大村 智博士が発見した「エバーメクチン」の化学構造を変え、駆虫薬として製品化したものです。
今でも、フィラリア症の予防やダニの治療に使用される一般的な薬剤です。
コリーやオーストラリアン・シェパード、シェルティなどのコリー系の犬の中には、MDR1遺伝子変異をもつ個体がいます。この場合、イベルメクチンの投与によって、運動障害などの神経毒性の副作用を引き起こすことがあるため注意が必要です。
フィラリア症は、かつて犬の死因で上位を占める病気でした。しかし現代では、予防できる病気になっています。防げる病気で命を失うことがないよう、予防で愛犬を守りましょう。
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