DC one dish獣医師の成田です。ご飯やイモ類などが好きな犬や猫も多いことでしょう。これらの炭水化物源をトッピングとして選ぶ際は、愛犬、愛猫の好みに合わせて選ぶのが基本ですが、与える食材によって注意しなければならない点があります。愛犬・愛猫に必要な栄養を満たすために、炭水化物源になる食材の種類やその特徴、与え方などを学びましょう。 前回の記事:【獣医師監修】トッピング時に知っておきたい!タンパク質源となる食材の特徴と選び方|vol.15
もくじ
トッピングのメリットは、味を変えることで犬猫の食欲を増したり、食のバリエーションを増やすことで生活の質を高められたりすることです。また、トッピングをする食材によっては効率よく水分摂取ができたり、体に良い成分を摂取できたりするので、健康にもプラスに働くことがあります。
一方で、犬や猫と人では必要な栄養素や量が異なるため、人の感覚で与えてしまうとカロリー過多になったり、栄養素の過不足が生じたりするリスクがあります。
基本的には、犬や猫は総合栄養食やAAFCOといった基準に則したフードを食べることで健康を維持できます。しかし、人の食事に興味を示し、いつもペットフードにトッピングを加えた食事を与えられている犬や猫では、ペットフードだけだとあまり好んで食べてくれなかったり、場合によってはトッピングされるまでじっと我慢したりする子もいます。
トッピングは人も動物も生活に彩を与えることができ、好んで食事を食べてくれるようにするための方法として、決して悪いことではありません。
しかし、トッピングの量が多くなっていくと栄養バランスが乱れ、場合によっては病気になってしまうこともあります。そのため、トッピングは1日に摂取するカロリーの10%程度までに留めましょう。
カロリー計算が大変な場合は、トッピングするものを食材ではなく、総合栄養食やAAFCOの基準に沿ったものにすれば、栄養基準から外れることがなく安心です。ただし、病気で食事制限のある子はこの限りでありません。必ずかかりつけ動物病院へ相談をしてからトッピングを行ってください。
「犬の祖先はオオカミだから炭水化物は必要ない」という情報を目にすることがありますが、人と長く一緒に暮らしてきた愛犬たちはオオカミではありません。環境省でも犬は雑食という情報を発信しています。
猫は肉食動物ですが、まったく炭水化物を消化できない生き物ではありません。しかし、猫は炭水化物を大量に与えると消化不良を起こす可能性があるため、市販のペットフードに含まれる炭水化物は全体の40%程度までとしていることが多いです。
猫のトッピングや手作り食をする際には、炭水化物の割合の計算を行うこと、そして給与後に便の状態を確認することが、犬以上に大切になってきます。
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この記事では主な炭水化物質源について解説していますが、もっと詳しく食材の栄養組成が知りたい場合は、文部科学省が運営している食品成分データベースを利用して確認してみてください。
続いて、主な炭水化物源となる食材や与え方について解説していきます。
炭水化物源の代表格ともいえるお米。日本人の主食としてはもちろん、フードのトッピングや手作り食でも犬猫に与えやすい食材です。
お米にはカリウムやマグネシウムが少ないため、腎臓病やマグネシウムが関連する尿石症をもつ子でも取り入れられる可能性があります。
ぬるま湯をかけてお茶漬け状にすると、水分摂取量も確保でき、お米特有の粘りが苦手な子にとっては、さらさらと食べやすくなるでしょう。お米を原料とした米粉の麺、ビーフンも犬や猫に与えられます。
甘みがあり、香りも強いためさつまいもが好きな犬は多いです。重量当たり(g当たり)のカロリーが高いため、小食の子が必要なカロリーを摂取するための食材としても取り入れやすいでしょう。
ただし、カリウムやマグネシウムなどのミネラル類も豊富です。カロリーとともにこれらの栄養素の過剰摂取に注意してください。
また、シュウ酸カルシウム尿石症の原因になるシュウ酸も多く含まれています。尿石症などのリスクがある子は、かかりつけ獣医師と相談をした上で与えるかどうか判断しましょう。
さつまいもと同様に甘みがあり、好きな子が多い食材です。種は消化できないため、必ず取り除いて与えましょう。さつまいもよりもカリウムやマグネシウムはやや少ないですが、柔らかく茹でた皮ごとあげれば、さつまいもよりも食物繊維が豊富です。
かぼちゃには、日本かぼちゃと西洋かぼちゃがあり、一般的にスーパーで販売されているのは西洋かぼちゃです。種類によって栄養組成が異なるため注意してください。
市販ペットフードの原材料としてもよく使用されるじゃがいもは、価格の安さが魅力です。重量当たり(g当たり)のカロリーが低いため、たくさん量を食べたい子にもおすすめの炭水化物源です。
バナナやリンゴなどの果物も炭水化物源として活用できます。ただし、皮や種を取り除いてから与える必要があります。
特にバナナは、かぼちゃやジャガイモよりも重量当たり(g当たり)のカロリーが高く、香りも強いため食が細い子には使いやすい食材です。しかし、カリウムが多いため注意してください。
リンゴなどの重量当たり(g当たり)のカロリーが低い果物は、比較的与えられる量が多いため、食欲がありたくさん食べたい子には有用な食材です。
柑橘系については、犬の場合、その子によって好き嫌いが激しいです。好きな子の場合は、種や皮などを除いて与えていただいても問題ありません。
猫は柑橘類に含まれる成分が中毒になるといわれているため、与えるべきではありません。
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食パンやパスタが好きな子は多いですが、食塩の量が多いため取り入れる場合は注意が必要です。トッピングの際は必ず塩分を計算して、取り入れるようにしましょう。
食欲がない子には選択肢のひとつとなります。
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オートミールは、炭水化物源でありながらタンパク質や必須脂肪酸のリノール酸も豊富。食物繊維はさつまいもよりも多い食材です。
乾燥した状態で販売されているため、重量当たり(g当たり)のカロリーが他の炭水化物源より高いのも特徴です。水分量を調整しながら与えることができるため、小食な子のトッピングにおすすめです。
オートミールにはさまざまな種類があり、加熱せずにそのまま食べられるクイックオーツを選択すれば、犬や猫に簡単に与えられます。なお、加熱タイプのものは加熱してから与えましょう。
一言で炭水化物といっても、種類はさまざまです。愛犬や愛猫の好みや食欲、体調に合わせて選択しましょう。
上手にトッピングを選ぶことで、より食事を楽しめ、食事のレパートリーも増やせます。トッピングのルールを守りながら、正しく食事に取り入れましょう。