DC one dish獣医師/ペット栄養管理士の岩切です。トッピングに選ばれやすい肉や魚などのタンパク質源は、愛犬、愛猫の好みに合わせて選ぶのはもちろんのこと、種類や、部位によって栄養バランスが大きく変わることがあります。愛犬・愛猫に必要な栄養を満たすために、タンパク質源になる食材の種類やその特徴、与え方などを学びましょう。 前回の記事:【獣医師監修】それって本当に正しいの?手作り食の情報の見極め方を解説します|vol.14
もくじ
トッピングのメリットは、味を変えることで食欲を増したり、食のバリエーションを増やすことで動物たちの生活の質を高められたりすることです。
トッピングする食材によっては、効率よく水分摂取ができたり、体に良い成分を摂取できたりするため、健康にもプラスに働くことがあります。
一方で、犬猫と人では必要な栄養素や量が異なるため、人の感覚で与えてしまうとカロリー過多になったり、栄養素の過不足が生じたりするリスクがあります。
犬や猫は基本的に、総合栄養食やAAFCOといった基準に則したフードを食べることで健康を維持できます。
しかし、人の食事に興味を示し、人の食事を与えられている犬や猫では、ペットフードだけでは好んで食べてくれなくなったり、トッピングされるまでじっと我慢したりするようになるため注意が必要です。
トッピングは人も動物も食生活に彩を与え、食事を好んで食べてくれるようにするための方法として、決して悪いことではありません。
しかし、トッピングの量が多くなっていくと栄養バランスが乱れ、病気になってしまうこともあります。そのため、トッピングは、1日に摂取するカロリーの10%程度までに留めましょう。
カロリー計算が大変な場合は、トッピングを総合栄養食やAAFCOの基準に沿ったものにすれば、栄養基準から外れることがなく安心です。
ただし、病気で食事制限のある子はこの限りでありません。必ずかかりつけ動物病院へ相談をしてからトッピングを行ってください。
タンパク質源というと、鶏・豚・牛など一般的に人が食べる機会が多いものを思い浮かべる飼い主さんは多いです。しかし、食材の種類だけでなく、部位によっても栄養バランスは大きく異なります。
タンパク質の働きや与える量については、こちらの記事を参考にしてみてください。
【獣医師監修】犬猫の食事に欠かせない栄養素!知っておきたいタンパク質の基礎知識|連載vol.7
主なタンパク質源について解説していきますが、より詳しく食材の栄養バランスが知りたい場合は、文部科学省が運営している食品成分データベースを確認しましょう。
鶏肉、豚肉、牛肉など肉の種類と部位による栄養バランスの違いと与え方について解説していきます。なお、肉を与える際は芯まで火を通してから与えましょう。
肉の正しい与え方についてはこちらを参考にしてください。
【獣医師監修】犬や猫に生肉は与えないで!犬や猫に肉を与えるときの注意点|連載vol.10
安価で、最も手に入りやすく親しみやすい鶏肉ですが、部位によって大きく栄養バランスは変化します。
ささみは、タンパク質源の中でも脂質の量が少ない食材です。「タンパク質を与えたいけれど脂質は制限したい」という子にとって、有用なトッピングといえるでしょう。しかし、タンパク制限が必要な子に与えるのは難しいです。
ささみの次に脂質が少ないのがむね肉、その次がもも肉となっています。どちらもタンパク質源として利用できますが、皮の有無でカロリーや脂質が大きく変わります。鶏皮は脂質がほとんどであるため注意しましょう。
レバーはビタミンAが多く含まれています。トッピングに利用する場合は、ビタミンAの量を認識しておかないと、総合栄養食やAAFCOの栄養基準の上限を超えることがあります。
1度上限を超えたからといって問題になることはまずありませんが、長期的にトッピングをしたい場合には計算をしなければなりません。
たまごはアミノ酸スコアがよく、コリンという栄養素が豊富。コリンは肝臓機能や、多くの代謝に関わっているAAFCOの栄養基準にも記載のある栄養素です。
また、たまごはアミノ酸のバランスが、肉よりも優れている部分があります。ドライフードにもたまごが含まれていることが多く、意外と好きな犬や猫が多いのがトッピングのメリットになります。
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【獣医師監修】犬にたまごを与えても大丈夫?知っておきたい注意点と基礎知識
ビタミンB1を豊富に含む食材として有名なのが豚肉です。必要量の多い猫では相性がよい食材ともいえます。
また、ドライフードに含まれる動物性油脂には、豚の脂が使われていることもあり、飼い主さんが知らないだけで、豚肉の味が好きな子も多いです。
豚の中で手に入りやすく脂質の少ない部分はモモ肉で、豚バラは、脂質が非常に多いです。鶏と同じでレバーはビタミンAが豊富に含まれるため、注意が必要です。
価格の観点を無視すると、「ヒレ」は脂質が一番少なく、次いで「かた」「もも」などが使いやすいでしょう。
牛肉は全体として脂質が多いため、慎重に部位を選ばないと消化器症状を引き起こす可能性が高い食材といえます。
脂質は、タンパク質や炭水化物に比べてグラム当たりのカロリーが高いです。脂質の多い食材をトッピングすると、人の感覚ではかなり少ない量しか与えられないように感じることもあります。
サーロインやリブロースなど脂の多い部位は、タンパク質量よりもはるかに脂の量が多いため、注意が必要です。
鹿肉は、脂質が少なく、体の脂肪をエネルギーに変えやすくする栄養素「カルニチン」が豊富。カルニチンは、人だけでなく犬や猫でもダイエットによい成分として取り上げられることがあります。
近年、野生の鹿が増え農作物の被害が深刻化していることから、ジビエとしてペットフードによく使われるようになってきています。
環境保全・資源利用の観点から、ジビエをペットフードに利用することは推奨されますが、ペット用で販売されている鹿肉と、人の食用で販売されている鹿肉では、捕獲方法や肉の取り扱いが大きく異なることがあります。
動物用の鹿肉を入手する際は、信頼できるところから購入することをおすすめします。
独特な香りがあり人と同じで動物たちも好みが分かれる羊肉は、鹿肉と同様にカルニチンが多く含まれています。脂肪の融点が高く、人の場合は消化に負担がかかるといわれています。
魚の種類によって栄養バランスが大きく異なります。タンパク質源としては大きな差はないものの、その他の栄養素に違いがみられます。魚は必ず火を通し、骨を取り除くなどをして与えましょう。
抗炎症作用などさまざまな作用が知られているオメガ3脂肪酸を多く含みます。
脂質が低いため、脂質制限が必要なときに重宝します。
ビタミンDが豊富に含まれるため、トッピングを行う際は必ずビタミンDが過剰にならないか確認をする必要があります。
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大豆やエンドウ豆などは、動物性タンパクとアミノ酸組成が大きく異なり、含硫アミノ酸(メチオニン、シスチン)が少ないのが特徴です。
犬や猫が含硫アミノ酸を必要とする量は多く、植物性タンパク質をタンパク質の主体として与えると、不足する可能性があるため、注意が必要です。植物性タンパクのみを犬や猫に与えることは、現状、長期的な安全性の確認が取れていません。
大豆にはトリプシンインヒビターなどの消化を阻害する酵素が含まれているため、大量に与えると消化不良を起こす可能性があるため注意が必要です。
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カンガルー、ダチョウ、ワニ、ウサギなど多様なベースのフードや肉がペット用で販売されているのを目にすることもあるかと思います。
いろいろなものを試してみたいという飼い主さんの気持ちは理解できますが、アレルギーがあり、食べられないものが多い場合を除いて、珍しいものをあえて与える必要はありません。
トッピングは、好みや食欲、体調に合わせて選択することで、より食事を楽しめ、レパートリーを増やすことができるツールのひとつです。
タンパク質は愛犬・愛猫にとっても重要な栄養素です。トッピングのルールを守りながら、正しく食事に取り入れましょう。