DC one dish獣医師の成田です。ドライフードのトッピング、皆さんはどのような食材を選びますか。食材の種類や量によっては、全体の栄養バランスを乱してしまうことがあります。前回に続き、飼い主さんが知っておきたい食材の知識、トッピングする際に気をつけたい点をお話します。トッピング用として販売されているフードの中には、犬猫に与えることが推奨されていない製品もあります。誤ったトッピングをしないよう、知識を身につけておきましょう。 前回の記事:【獣医師監修】犬や猫の市販フードにトッピングをする際に気を付けたい食材~サケ・レバー・鶏ささみ・オイル編~|vol.12
もくじ
犬や猫の食事はペットが健康な場合、総合栄養食のフードを与えていれば栄養の過不足はありません。しかし、フードへのトッピングは、味を変えることで食欲を増し、食のバリエーションを増やすことで動物たちの生活の質を高めることができるといったメリットがあります。
また、トッピングするものによっては、効率よく水分を摂取できたり、体によい成分を摂取できたりするため、健康にプラスに働くことがあります。
トッピングを行う前にまず知っておきたいことは、主食として与えるご飯は、総合栄養食やAAFCOの基準に沿ったものを与えるということです。
そして、トッピングはおやつも含め1日に必要なカロリーの10%程度までに抑えるようにしましょう。
トッピングが1日に必要なカロリーの10%を超えている場合は、
といった対応をしていただければ、犬猫に必要な栄養バランスを崩すことなく与えられます。
人の食品とペット用の製品で大きく違うのが、衛生基準です。たとえ同じ原料を使用していたとしても、人の食品のような厳格な衛生管理がされていない場合があるため注意が必要です。
続いて、トッピングとして与える際に注意が必要な食材を紹介します。
きのこは、食物繊維が豊富で、腸内環境を整える効果が期待できる食べ物です。食物繊維の量や食事のカサを調整するために、トッピングや手作り食でよく利用されます。
食物繊維の多い食材は消化がよくないため、加熱し、細かく刻むなどの工夫が必要です。そのまま与えると消化不良を起こし、嘔吐下痢などの消化器症状を引き起こす可能性があります。
また、食物繊維を大量に与えると、栄養素の吸収阻害を起こすことが知られているため、カロリーが低く体によい印象があってもたくさん与えてよいというわけではありません。
きのこにはビタミンDを多く含むものもあります。ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進するなどの作用があります。
しかし、植物性のビタミンD(エルゴカルシフェロール,ビタミンD2)は、犬や猫で動物性のビタミンD(コレカルシフェロール,ビタミンD3)と同じように利用できるかはまだわかっていません。ビタミンD源としてきのこを利用するのはリスクがあるため、避けるべきです。
豆類は、タンパク源としてトッピングやおやつに利用されることが多い食材です。豆腐を与える飼い主さんも多いので以下の点に注意しましょう。
豆類の中でも大豆には、トリプシンインヒビターと呼ばれる酵素が多く含まれています。
トリプシンインヒビターは、消化酵素であるトリプシンを阻害するため、大豆を大量に摂取すると消化不良を起こします。また、トリプシンインヒビターは、加熱しても活性が失われにくい酵素だといわれているため注意しましょう。
近年、植物性のタンパク質が注目を浴びていますが、タンパク質を構成するアミノ酸のバランスは、動物性タンパク質と植物性タンパク質では大きく異なります。
さらに消化不良のリスクもあるため、犬や猫に豆類だけをタンパク質源として与えることは、基本的に推奨されません。
足らないアミノ酸を添加しアミノ酸バランスを補正したとしても、人も含め、犬や猫も植物性の食材のみで長期的に健康を維持できるかどうかのデータは乏しいのが現状です。
動物福祉の観点から、現時点において植物性のみに限定した食事の給与は可能な限り避けるべきだといえるでしょう。
生魚には、チアミン(ビタミンB1)を分解するチアミナーゼが多く含まれているため、生魚をトッピングとして与えるのは基本的には避けましょう。
チアミナーゼによって、ビタミンB1欠乏症を引き起こすことが知られています。ビタミンB1が欠乏すると、初期には、食欲低下、成長不良、唾液分泌が見られ、その後、痙攣、眼振、運動機能障害といったさまざまな症状が出てきます。
1度与えたからといって、すぐにビタミンB1欠乏症になることはまずありませんが、ビタミンB1を必要とする量が多い猫は特に注意しましょう。
以下の記事も参考にしてみてください。
【獣医師監修】猫にイカを与えない方がいい理由とは?知っておきたい基礎知識
チアミナーゼは加熱によって活性を失うため、加熱した魚は問題になりません。与える時は、加熱し骨を取り除いた上で与えるようにしましょう。
また、魚だけでなく貝類、甲殻類にも含まれているため、「生」で与えるのは避けましょう。
乳製品には乳糖が含まれています。犬や猫の中には、乳糖をうまく消化できずに下痢などの消化器症状を起こす可能性があるため注意しましょう。
どの程度の量を食べても問題がないかは、個体差があるため与えてみないとわかりません。乳製品を与える際は、慎重に与える必要があります。
ヨーグルトの中には、加糖製品もあります。カロリー過多に注意しましょう。
【関連記事】
【獣医師監修】猫にヨーグルトをあたえても大丈夫?乳製品を与えるときの基礎知識
チーズは手作り食の食材としては有用ですが、塩分が多く含まれていることがあります。塩分量が調整されているペット用のチーズなら、チーズが好きな犬や猫には、ひとつの選択肢になるでしょう。
人用のチーズを使用した手作り食を与える場合は、栄養計算をすれば問題なく使用できることもあります。
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【獣医師監修】猫や犬にチーズをあたえても大丈夫?与える際の注意点と基礎知識
生肉は、食中毒のリスクが非常に高いです。ドライフードにトッピングする用の生肉が売られていることもありますが、あえて生肉をあげるメリットはありません。
トッピングすることによって主食の安全性を大きく損なう可能性があるため、生肉のトッピングは避けましょう。肉は必ず加熱して与えてください。
詳しくはこちらをご覧ください。
【獣医師監修】犬や猫に生肉は与えないで!犬や猫に肉を与えるときの注意点|連載vol.10
トッピングによってフードをより好んで食べてくれるようになる一方で、栄養価が計算され配合されている総合栄養食やAAFCOのフードへのトッピングは、全体のバランスを乱すリスクになります。
主食とトッピングの栄養価を計算し、問題がないか確認して与えるようにしましょう。長期的に同じ食材を与える場合は、量を控えめにし、ローテーションによって食の楽しみを増やしていくことをおすすめします。
栄養学はバランスが最も大切です。食材の特性を知り、安全にトッピングをしたいですね。