【獣医師監修】犬と一緒に電車やバスに乗るには?知っておきたいルールやマナーを解説
2022.11.10 作成

【獣医師監修】犬と一緒に電車やバスに乗るには?知っておきたいルールやマナーを解説

獣医師/ペット栄養管理士

岩切裕布

岩切裕布

旅行や動物病院へ行くときなど、犬と一緒に電車やバスのような公共交通機関を利用する機会もあると思います。その際、普段とは違う環境から、愛犬が大人しくしてくれないこともしばしば。犬と一緒に公共交通機関を利用する際、飼い主さんが気をつけておきたいルールとマナー、乗る前の準備、心構えについてお話します。

もくじ

    条件を満たしていれば、犬も電車やバスに乗れる

    【獣医師監修】犬と一緒に電車やバスに乗るには?知っておきたいルールやマナーを解説
    (Denis Belitsky/shutterstock)

    動物と一緒に公共交通機関を利用する際のルールは、各機関によって異なります。事前に確認した上で利用しましょう。また、動物が苦手な人やアレルギーを持っている人もいるため、乗車中はケースから出さないような配慮も必要です。

    ここでは、JR東日本、都営バスを例にご紹介します(2022年11月時点)。

    動物と一緒に「JR東日本」を利用する際のルール

    犬や猫は、手回り品として、以下のような条件のもと、新幹線を含む電車内、駅に連れていくことが出来ます。ただし、他のお客さんに迷惑がかかるような状況がある場合は、この限りではありません。

    • タテ・ヨコ・高さの合計が120センチ以内の動物専用のケースに入れる
    • ケースと動物を合わせた重さが10kg以内のもの
    • 手回り品きっぷを購入する(290円)
    • 駅や車内ではケースから出さない

    ※ペットカート:カートとケースを分離して、ケースが制限の範囲内であれば持ち込むことができます。

    詳しくはJR東日本のホームページをご確認ください。

    JR東日本「手回り品」(閲覧日2022/11/9)
    JR東日本「車内設備・サービス内のQ&A」(閲覧日2022/11/9)

    動物と一緒に「都営バス」を利用する際のルール

    動物の持ち込みは原則不可となっていますが、ペットなどの愛玩用小動物は以下の条件を満たしていれば連れていくことができます。

    • 完全な容器に収容されている(頭や手足が出ていない)。
    • 手回り品の条件(縦・横・高さの合計が100cm以内・重さ10kg以内)を満たしている。

    ただし、ペットカートのまま持ち込むことはできません。

    詳しくは東京都交通局のホームページをご確認ください。

    東京都交通局「お手回り品について」(閲覧日2022/11/9)

    大型犬や介助犬は公共交通機関を利用できる?

    ペットとは異なり、「身体障害者補助犬法」に基づき認定された身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)については、基本的に公共交通機関を利用できます。

    しかしペットの場合、JR東日本も都営バスも10kgを超えると手回り品としての持ち込みは不可となっています。大型犬でも子犬であれば乗車できますが、成犬になると公共交通機関の利用は難しくなるため注意しましょう。

    大型犬と一緒に出掛ける際は、車の利用を基本に考えることをおすすめします。

    【関連記事】
    【獣医師監修】犬が車酔いをする理由と予防策

     

    犬を電車やバスに乗せる前にトレーニングをする

    犬を電車やバスに乗せる前にトレーニングをする
    (hodim/shutterstock)

    乗り物に乗りなれていない犬にとって、自由に動き回れず、聞き慣れない音や揺れ、人混みにさらされる電車やバスは非常にストレスがかかります。最初から長時間の利用は難しいので、段階を追って乗り物に慣らしていきましょう。

    ①クレート(キャリー)に慣れることからスタート

    クレートに入ったことがない犬にとっては、狭いところで大人しくすること自体が難しい場合もあります。普段から目に入る場所にクレートを置いておき、クレートに慣れるところから始めましょう。

    クレートに入ることが嫌にならないよう、クレートの中でご褒美を与えたり、寝かせたりすることを繰り返してみるとよいでしょう。

    ②クレート(キャリー)を動かしてみる

    クレートに入ることに慣れたら、動くことにも慣らしていきましょう。まずは、愛犬の入ったクレートを飼い主さんが手に持って移動してみます。短い距離からスタートし、室内から室外へと距離を延ばしていきます。

    可能であれば、電車やバスが見える場所、音が聞こえる場所まで行ってみましょう。

    ③電車やバスの利用は短時間から始めよう

    段階を踏んで練習し、クレートでの移動にある程度慣れたとしても、聞いたことのない音や振動、人混みによって、犬が大騒ぎすることもあります。

    初めて公共交通機関を利用する場合は、周囲に迷惑がかからないよう短時間の乗車に留めましょう。

    当日の準備をしっかりしておこう

    当日の準備をしっかりしておこう
    (Filip Jedraszak/shutterstock)

    公共交通機関を利用する当日にも準備が必要です。

    ①トイレを必ず済ませよう

    慣れていない犬の場合は、緊張で失禁、脱糞をしてしまったり、ストレスや振動でもよおしたりすることがあります。移動前に必ずトイレを済ませ、クレート内にはペットシーツを敷いておきましょう。

    場合によっては、マナーベルトやおむつを着用させて乗車することも必要です。

    ②食後すぐの利用は避けましょう

    食後すぐに移動を始めると、嘔吐する可能性があります。食事直後の移動は控えましょう。

    ③水やおやつの準備を

    慣れない場所でもできるだけ落ち着けるよう、愛犬が好きなおやつや水を用意しておきましょう。ただ、おやつを食べさせすぎると嘔吐する可能性があるため、加減して与えてください。

    ④暑さ・寒さ対策を

    短時間の移動であっても、暑さ寒さで体調を崩す恐れがあります。直接犬に接触しないように、保冷剤やカイロなどを利用して車内や室内の温度と外気の温度差に注意し、適切な温度を保ちましょう。

    犬が苦手な人、アレルギーがある人に配慮を

    犬が苦手な人、アレルギーがある人に配慮を
    (BetterPhoto/shutterstock)

    電車やバスには、動物が苦手な人やアレルギーがある人も乗車しています。都営バスのように、「完全な容器に収容されている」といったルールが設けられていなくても、クレートから犬が顔やあしを出さないよう注意しましょう。

    乗車時に犬が騒ぎ出した場合は、クレートの扉を開けたり外に出して抱っこしたりするのは控え、一度電車を降りるなどの配慮が必要です。万が一に備え、混雑時の利用を控えるのもよいでしょう。

     

    犬が乗り物酔いをする場合は

    犬が乗り物酔いをする場合は
    (Zivica Kerkez/shutterstock)

    乗り物酔いをするかどうかは、犬によって差があります。移動中~移動後に、次の様子が見られたら犬が乗り物酔いをしているかもしれません。

    • 元気がなくなる
    • 舌をペロペロと動かす
    • ハアハアと呼吸をする
    • よだれを垂らす
    • 吐く

    もし、乗り物酔いと考えられる症状がみられた場合は、休憩をしながら移動するようにしましょう。さらに、次回の移動に備え、動物病院で相談をしてみてください。

    乗り物酔いをするかどうか判断できない場合は、犬の様子を見ながら徐々に移動距離、移動時間を延ばしていくと安心です。

    誰にとっても気持ちの良い空間にするために

    誰にとっても気持ちの良い空間にするために
    (savitskaya iryna/shutterstock)

    人にとって電車やバスに乗ることは、たいしたことではありません。しかし、初めて公共交通機関を利用する犬にとっては、ストレスや恐怖を感じる可能性があります。

    飼い主さんも犬も、そして周囲の人たちも快適に公共交通機関を利用できるよう、乗車ルールを守り、交通機関での移動に愛犬をゆっくり慣らしていきましょう。

    著者・監修者

    岩切裕布

    獣医師/ペット栄養管理士

    岩切裕布

    プロフィール詳細

    所属 yourmother合同会社 代表
    (獣医師によるオーダーメイドの手作り総合栄養食や療法食レシピをお届けする「DC one dish」の運営)


    日本ペット栄養学会
    日本小動物歯科研究会
    日本獣医腎泌尿器学会

    略歴 1987年 東京都に生まれる
    2005年 麻布大学 獣医学部獣医学科に入学
    2011年 獣医師国家資格取得
    2011年~2016年 都内動物病院に勤務
    2017年~2018年 フードメーカー勤務
    2018年~ DC one dish 設立
    2020年~ yourmother合同会社 設立

    資格 獣医師免許
    ペット栄養管理士

    ページトップに戻る