DC one dish獣医師の成田有輝です。犬や猫のドライフードにトッピングをする際に皆さんはどのような食材を選びますか。食材の種類や量によっては、全体の栄養バランスを乱してしまうこともあります。知っておきたい食材の知識、トッピングする際に気を付けることをお話します。
前回の記事:【獣医師監修】犬や猫に生肉は与えないで!犬や猫に肉を与えるときの注意点vol.10
もくじ
トッピングには、味を変えることで食欲を増し、食のバリエーションを増やすことで動物たちの生活の質を高めることができるなどのメリットがあります。
また、トッピングするものによっては、効率よく水分摂取ができたり、犬や猫が体に良い成分を摂取できたりするため、健康にもプラスに働くことがあります。
日々の主食として与える犬猫のご飯は、総合栄養食やAAFCOの基準に沿ったものを選ぶのが基本です。そして、トッピングはおやつも含め1日に必要なカロリーの10%程度までのカロリーを与えるようにしましょう。
もし、トッピングが10%を超えてしまっている場合は、量を減らすか、トッピング自体を総合栄養食やAAFCOの基準に沿ったものに変更すれば、割合を関係なく与えられます。
しかし、一般的な上記のルールを守ったとしても、長期的に同じ食材をトッピングすることで、栄養素の欠乏や過剰を示す可能性がある食材があります。
よかれと思ってしていたトッピングの中には、注意が必要な食材もあるため、知っておきましょう。
煮干しには、カルシウム、リン、マグネシウムが豊富に含まれています。煮干しを好む犬や猫は多く、人ではカルシウム不足に煮干しがよいというイメージがあり、製品もたくさん販売されています。
しかし、犬や猫に与えるには、さまざまなリスクがあるということを知っておきましょう。
骨の成長にカルシウムが必要な印象から、成長期には煮干しや粉ミルク、カルシウムサプリメントを犬猫のフードに添加する方がいます。しかし、カルシウム過剰は、骨格の成熟遅延や骨関節疾患を引き起こすことが知られています。
基本的に、成長期用の総合栄養食やAAFCO基準に沿って作られたフードに、カルシウムの添加は一切必要ありません。
ペットショップから迎え入れる際に、粉ミルクの購入をすすめられることがありますが、カルシウムを強化する目的ではなく、ミルクの味を少しつけて好んで食べてもらうようにする工夫のひとつです。
煮干しも同様に、栄養バランスを崩さないために、毎日与える事は避け、食いつきが悪い時に必要に応じて取り入れるようにしましょう
煮干しに含まれるリンは、腎臓病の際に制限したい栄養素です。腎臓病が悪化するとリンが体にたまる傾向になり、体の組織を石灰化させることが知られています。
腎臓病には、ステージ分類があり、体の状態に応じて血液中のリンの目標値が設定されているほど。リンのコントロールが重要になってくるため、腎臓病の子にトッピングとして煮干しを追加するのは避けたほうがよいです。
シュウ酸カルシウム、リン酸アンモニウムやマグネシウム(ストルバイト)などは、尿石症のリスクを引き上げることがあります。
突然、血尿の症状がでて、動物病院を受診したら、煮干しをたくさん与えたことでストルバイト尿石症になっていたということは、よくある話です。
手作り食の場合は、一から栄養組成を設計する必要があり、煮干しは非常に優秀なカルシウム、リン源となります。煮干しをたくさん食べたい犬や猫には手作り食をするのもひとつの方法です。
海藻は、人では体によいイメージがありますが、犬や猫にとってはあえて与える必要のない食材のひとつです。海藻類には大量にヨウ素が含まれています。特に、昆布やひじき、わかめに多く含まれています。
犬や猫が1日に必要とするヨウ素の量は微量です。そのため、海藻類を少し与えただけでも、過剰になってしまうことがあります。
たとえば、体重22.2kgの犬が必要とするカロリーは、1日あたりおよそ1000kcal。素干しのまこんぶを0.125g与えるだけで、必要なヨウその量が摂れてしまいます。
甲状腺は、体の代謝を司るホルモンである甲状腺ホルモンを分泌しており、ヨウ素を基にホルモンを作っています。ヨウ素を大量に摂取すると甲状腺機能が低下したり、甲状腺腫を起こしたりする可能性があることも知られています。
おやつやサプリメントなどに味付けとして添加されていたり、口臭を予防する海藻系の動物用サプリメントがあったりするため、知らず知らずのうちに大量に摂取してしまうことがあります。あえて、トッピングとして海藻類を使用する必要はないでしょう。
青魚に多く含まれる、EPA(エイコサペンタ塩酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などのオメガ3脂肪酸は、抗炎症作用をもち、犬や猫の心臓や血管、関節などにも体によいとされています。
近年では、カプセルタイプのサプリメントやサーモンオイルなど、犬猫のご飯にかけるタイプの製品が販売されるようになったため、青魚をトッピングとして与える際は過剰摂取に注意が必要です。
オメガ3脂肪酸は油ですから、大量に摂取すると、消化器症状を起こす可能性があります。油は酸化しやすく、酸化した油は体によくないとされています。
また、オメガ3脂肪酸自体は体によいものの、オメガ6脂肪酸との比率が重要です。
オメガ3脂肪酸の割合が多いと、長期的には炎症や免疫の抑制に注意が必要といわれているため、体によいからといって大量に与えればよいというわけではありません。
サプリメントやオイルを追加することでオメガ3脂肪酸を摂取する機会もあるため、全体の脂肪の量やバランスを考えて与える必要があります。
トッピングによってフードをより好んで食べてくれるようになる一方で、栄養価が計算され配合されている総合栄養食やAAFCOのフードへトッピングすることで、全体のバランスを乱すリスクがあることは、知っておきましょう。
トッピングの量は控えめにし、ローテーションによってリスクをさげつつ、食の楽しみを増やしていくことをおすすめします。
栄養学はバランスが最も大切です。食材の特性を知り、安全にトッピングをしたいですね。