人は鼻を強くかむ、鼻をぶつけるなどすると鼻血が出ることがあります。猫は鼻をかむことがなく、運動神経のよい動物なので鼻をぶつけることはほとんどありません。猫の鼻血は病気が原因であることが多いのです。今回は猫の鼻血について解説していきます。
もくじ
猫でも、鼻血を出すことはあります。しかし、人のように鼻をかんだり、鼻の中に指を入れたりして傷をつけ、鼻血を出すわけではありません。
猫の鼻血は、鼻の中の病気によるものである可能性が高いです。
猫の鼻血の一般的な原因として、猫風邪や鼻腔腫瘍が挙げられます。
人の風邪のように鼻水やくしゃみなどが出ることから「猫風邪」と呼ばれていて、原因はヘルペスウイルスやカリシウイルスなどによるウイルス感染症です。正確には猫ウイルス性伝染性鼻気管炎といいます。
症状は鼻炎によるくしゃみや結膜炎による涙目などで、軽い場合には鼻血を出すことは比較的稀です。猫風邪が長期間続いている、重度の鼻炎、または細菌感染が併発している場合には猫が鼻血を出しやすくなります。
猫風邪の予防はワクチン接種と感染源との接触を避けることです。
ワクチンはウイルスの感染を防ぐのではなく、ウイルスに対しての抗体をつくることで重症化を避けることが目的です。そのため、ワクチンを打っていてもヘルペスウイルスやカリシウイルスに感染することがあります。
特にヘルペスウイルスは、一度感染すると神経細胞に隠れることで一生体の中に留まることになります。ストレスや体調を崩すことで免疫が下がると、ヘルペスウイルスが増殖して症状を出します。
これらのウイルスは猫同士で感染していきます。感染は鼻水や唾液、涙などを介して起こることから猫を外に出さないことも感染を防ぐのにとても重要です。
また、栄養不良や怪我などをすると免疫が落ちることがあり、感染リスクが上がるため注意が必要です。
鼻水やくしゃみなどが出たときには早めに動物病院に受診することをおすすめします。早期発見、早期治療を心がけましょう。
鼻の中にできる腫瘍を総じて鼻腔腫瘍といいます。
最初は鼻詰まりや鼻水が出る程度の症状ですが、腫瘍が大きくなって骨を溶かすなど進行していくと猫が鼻血を出します。鼻腔内腫瘍はほとんどが悪性です。最も多いものはリンパ腫で、ついで上皮系悪性腫瘍(癌腫、腺癌、扁平上皮癌)です。
鼻腔腫瘍は進行すると鼻の部分が腫れることでわかることがありますが、初期の段階では発見することは極めて難しいです。猫は鼻の穴が小さく、鼻を広げようとすると暴れることもあるため、奥まで覗くことができないからです。
検査はレントゲンで頭を撮影して異常がないかを確認します。注意点としては繰り返しになりますが腫瘍が小さい、骨を溶かしていないなどの初期では診断ができないことがあるということです。
怪しい場合にはCT検査で鼻の中を確認していきます。
これ以外にも内臓疾患や免疫疾患で血が止まりにくい病気もありますので、鼻血が続くようであれば動物病院を受診しましょう。
猫風邪などによる鼻炎が原因の場合、薄い血が混ざった程度の鼻水が出ることが多いです。このような場合は自然と血が止まることが多いですが、鼻炎が改善するまではくしゃみをした拍子に出血を繰り返すことが多いでしょう。
ただし、これは動物病院で猫風邪と診断がついている場合です。動物病院を受診していない場合は鼻血の原因がわからないため、独自の判断で様子をみるのはやめましょう。
また、腫瘍が原因の鼻血の場合、残念ながら出血を止めるのは極めて難しいです。出血を止めるためには腫瘍の治療を行わなければならないことが多いです。
猫は人のように、鼻の中にティッシュを詰め込んで止血することができません。自宅でできる応急処置はありませんので、病院での止血剤の投与や点鼻薬が必要になります。
それでも血が止まらない場合は、レントゲン検査や血液検査が必要になります。
濃い血が垂れるほどの鼻血を見つけた場合は、まずは慌てず落ち着きましょう。血の濃さやどちらの鼻の穴から出ているかが診断に役立つことがあります。
可能であれば、携帯電話などで鼻血が出ているところを撮影しておくとよいでしょう。それから、ティッシュやタオルで軽く血を拭ってあげ、写真をもって動物病院を受診しましょう。
猫風邪の場合はしっかり栄養をとり、体力をつけて免疫を改善することが大切です。
食欲が落ちているようであれば点滴をする、細菌感染を起こして膿のような鼻水が出ている場合は抗菌薬を投与するといった治療を行い、状態を改善することで免疫を改善させます。
基本的には、免疫が改善してウイルスを封じ込めれば、鼻炎の改善とともに鼻血も治まっていきます。中には状態が改善せず、慢性的に猫風邪を患うこともありますので、涙や鼻水、くしゃみが出た場合には早めの受診を心がけてください。
鼻腔腫瘍と診断された場合は、抗がん剤や放射線治療が選択されます。腫瘍の種類や腫瘍の広がりなどによっては、手術が治療の選択肢に入ることもあります。
腫瘍が何かによって、抗がん剤か放射線治療のどちらか一方、または両方を行うか選択肢が変わってきます。
猫が鼻血を出す原因はさまざまで、原因によって対処方法や治療方法が変わります。鼻血が出ているのを見つけた場合には、慌てずに動物病院に相談してください。