猫にとって玉ねぎが危険であることはよく知られていますが、なぜ危険なのでしょうか。玉ねぎを避けるのは当然ですが、食品に玉ねぎが含まれていると気づかずに、誤食を見逃してしまうケースもあります。注意が必要な料理や食品、玉ねぎを食べてしまった時の対処法も解説します。
もくじ
玉ねぎ中毒の原因は、ネギ類に含まれている有機チオ硫酸化合物です。これが赤血球の膜や内部に影響を与え、赤血球を破壊してしまうことで貧血が生じます。
長ネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウなどのネギ属は、有機チオ硫酸化合物を含んでいるため注意が必要です。
具体的に目に見える代表的な症状としては、以下の通りです。
玉ねぎを誤食したときに注意しなければならないのは、玉ねぎ中毒が発生するタイミングです。玉ねぎ中毒は、誤食してすぐに起こるわけではありません。摂取後数時間~数日は中毒症状が出ないか、経過を見る必要があります。
誤食と発症のタイミングにズレがあるため、貧血の原因がネギ類の誤食だと気づかないこともあります。もし愛猫に急な貧血が起きた場合は、数日前に誤食したネギ類による中毒の可能性があることも覚えておきましょう。
誤食に気づいたら、数日は尿や可視粘膜の色に変化がないか注意しましょう。
どれくらいの量を食べると中毒の危険性があるのかが分かれば、対処しやすいと思います。しかし、玉ねぎ中毒を起こす量は個体差が激しいため、「ちょっとしか食べてないから大丈夫」と断言することはできません。
一般的には体重1㎏あたり玉ねぎ5g以上が中毒量といわれていますが、これよりも少ない量でも中毒を起こす可能性があります。
ネギ類を誤食してしまったとしても、実際に何g程度食べているのか把握することは難しいのが一般的です。どれくらい食べたかではなく、誤食の有無でリスクを判断したほうがよいでしょう。
玉ねぎ中毒と一般的に呼ばれますが、玉ねぎ以外の長ネギ、ニンニク、ニラなどにも有機チオ硫酸化合物が含まれます。こういったネギ類そのものに対して注意するのはもちろんですが、見逃しがちなのが「ネギ類が含まれる食事や製品」です。
昔は残った味噌汁をご飯にかける、「ねこまんま」といわれる食事を猫に与えることがあったようですが、実はこれも猫を危険に晒す可能性がある行為です。
味噌汁やカレー、肉じゃがなど、玉ねぎを他の食材と一緒に煮込んだ料理でも、玉ねぎ中毒を起こす危険性があります。加熱調理が中毒のリスクを下げることはありません。
煮汁にも中毒を起こす成分が溶け出ているため、煮汁だけだから大丈夫と思わず、ネギ類と一緒に調理したものは絶対に避けるようにしてください。
次の食品には、ネギ類が使用されていることがあります。
市販製品を与える場合は必ず原材料表記を見て、ネギ類が使用されていないか確認しましょう。
玉ねぎと表記が無い場合でも、野菜エキスなどの調味液にネギ類が使用されていることも多いです。猫にあげたい場合は、ネギ類の使用がないかメーカーに確認することをおすすめします。
人用のサプリメントなどの健康食品にもネギ類が含まれていることがあります。人にとって健康にいいものだから猫にも与えてみようとは考えず、人用健康食品の誤食にも気をつけてあげてください。
フライパンを舐めていたり、流しの生ごみをあさったりすることを覚えてしまっている猫もいます。玉ねぎを調理後は、調理器具、生ごみを放置しないようにしましょう。
玉ねぎを食べた際に中毒症状が起きるかどうかは個体差が非常に激しいため、一概にこの量なら大丈夫とはいえません。ネギ類を食べてしまった場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
受診の際は、どんなものをどの程度の量、いつ頃食べたのか、獣医師に伝えてください。
「食べてすぐ症状が出なかったから大丈夫だろう」と飼い主さん自身が判断するのは控えましょう。数日後に症状が出て重症化する可能性があります。
また、自宅で吐かせようとして飼い主さんが愛猫に食塩を与えてしまうことがあるようです。この場合、食塩中毒になる可能性があり大変危険です。
ネギ類を食べてしまったと分かったら、自宅で対処しようとせずに動物病院を受診するようにしてください。
一般的に、動物病院ではネギ類を誤食してすぐの場合は、食べてしまったものを吐かせる処置(催吐処置)をします。催吐処置で食べてたもののほとんどが除去されれば、大事に至る可能性は低くなります。
しかし、誤食して時間が経過した場合は、すでに消化吸収が始まってしまい、催吐処置だけでは済まないこともあります。その場合は、輸液(点滴)治療や吸着剤の使用、最悪の場合輸血が必要になります。
重症度によっては、玉ねぎ中毒が命に関わるような事態になることもあるため、ネギ類の誤食を軽視しないことが重要です。
玉ねぎをはじめとするネギ類は、人の食品では多く使用されています。普段ネギ類を意識しないような食品であっても注意が必要です。
人の食べ残しを気づかないうちに食べてしまって、数日後に中毒症状が出るという事態は避けたいですよね。愛猫に辛い思いをさせないためにも、食品の管理には気をつけましょう。
誤食はいつ起きるか分からないため、普段受診するかかりつけ動物病院のほかに、夜間や早朝に受診できる動物病院をあらかじめ把握しておくことをおすすめします。