猫との生活を夢に見たときに、保護猫を迎えようと考えてくださる方が増えてきたように感じます。「里親になろう!」と思っても、どこにどんな風に相談したらよいのか、どんな準備が必要なのか、保護猫の迎え方を解説します。
もくじ
猫の寿命は15歳といわれています。
猫のお迎えを考える際は、5年後・10年後・20年後のご自身のライフステージもしっかり考えた上で、ともに生きていけるかを検討しましょう。
猫を飼い始めると、食費の他に、予防・健康診断・治療費などさまざまなシーンでお金がかかります。事前にどんなことにお金がかかるのか知っておきましょう。
猫のフードの価格はさまざまです。大型ホームセンターなどでキャットフードを見てみると、その価格の幅広さに驚くでしょう。
通信販売のみで購入できるような、価格の高いものが一概に“よい食事”というわけでもありません。逆に安価すぎると着色されていて長期的に与えるのには不安になってくるものもあります。
総合栄養食の基準を満たしているほか、猫が好んで食べてくれて嘔吐・下痢をせず、毛艶をキープできる食事がその子にとってよいフードです。
今月はA社、次月はB社、その次はC社、その次はA社…といった具合に3メーカー程をローテーションしていけると理想的です。
また、体調や年齢によっては療法食が必要になってくることがあります。食事は欠かせないものです。療法食になっても与え続けることができるのか、病気や高齢になったときのことも考えておきましょう。
猫に快適に生活してもらうには、清潔なトイレが欠かせません。トイレ本体や猫砂の種類により交換のタイミングや価格もさまざまですが、1カ月で1袋10Lの猫砂が1袋程は必要になると考えましょう。
ペットシーツをあわせて利用する場合もあります。
猫のお世話は、食事と排泄の世話のみではありません。定期的な健康診断をはじめ、ノミ・マダニ・フィラリアの予防薬の塗布やワクチン接種など、健康に過ごしてもらうために細やかなケアが必要です。
予防薬やワクチンの費用はもちろんですが、ペットには公的な健康保険がないため、体調不良の際の治療費も全額自己負担となります。
飼い主さんが亡くなって猫が残されてしまうことは少なくありません。自分に万が一のことがあったときに猫が困らないよう、愛猫をお世話してくれるペット後見人について備えましょう。
猫が体調を崩したときはもちろんですが、フードの選び方をはじめ猫との生活についても相談できる動物病院が近隣にあるか確認しましょう。
猫は移動にストレスを感じやすい生き物です。通院時間が極力短い場所で、休診日も考慮して2件ほどは確認しておきましょう。
猫はお腹が減っていなくても狩りをする生き物です。SNSなどでほかの生き物と仲良く過ごす猫を見かけることもありますが、どんなに仲良しでも本能的に攻撃する可能性があります。
生活エリアを確実に分けられない場合は、獲物となってしまうようなペットと猫を一緒に飼うことはおすすめできません。
保護猫を迎え入れる方法には、次のようなものがあります。
自治体によって対応がさまざまです。ホームページで里親募集中の猫を紹介している自治体もあります。譲渡会の実施がないか問い合わせてみるとよいでしょう。
地域によってはボランティア団体やNPO法人が譲渡会を運営していることもあります。
カフェで過ごす姿をゆっくり見られるため、お家に来た猫の姿をイメージしやすいです。スタッフさんにそれぞれどんな性格の猫か聞いてみるのもおすすめです。
通いながら猫はもちろんスタッフさんとの相性を見極めることも大切です。
病院で猫を保護している場合、里親募集をしていることがあります。病院に猫がいなくとも、保護された猫が通院しているなどの縁から、保護主さんを紹介してもらえる場合もあります。
里親募集中の猫がいないか問い合わせしてみるとよいでしょう。
従来のペットショップと異なり、保護犬や保護猫がいる店舗も増えています。保健所から引き出された、ブリーダーから引き取られたなど経緯はさまざまです。
保護猫をお家に迎えるにあたって、新しい家族に条件を設けていることがあります。
といった確認のほか、脱走防止策についてのアドバイスのためにお宅訪問が行われることもあります。
保護猫を迎えようと思ったもののいろいろ聞かれて嫌な気分になったという話も耳にします。しかし、大切に保護した猫が幸せに暮らせるよう、送り出す側も慎重になっています。
保護先との相性もありますので、いくつか迎え入れる方法を検討してみるとよいでしょう。
保護先で実施している検査や予防接種の時期や内容などが分かっていると、今後の受診スケジュールをスムーズに立てられます。里親になった後のトラブル防止のためにも、ぜひ確認しておきたいことをお話しします。
直近の健康状態はもちろん、病歴や体質なども詳しく教えてもらいましょう。ストレスに弱くお腹を壊しやすいなど、今後の生活で気を付けるポイント把握に繋がります。
血液検査実施といっても、猫エイズ(FIV)や猫白血病(Felv)のウイルス抗体検査のことだったり、人の健康診断のように貧血がないかの確認や生化学的な検査のことだったりさまざまです。いつどんな検査をしたのか分かるように、検査日・検査結果を教えてもらえるとよいでしょう。
去勢/避妊手術は済んでいるのか、その他マイクロチップ挿入済かも確認してください。
また、お腹に寄生虫がいないか調べるための糞便検査は、複数回の検査でようやく寄生虫が見つかることもあります。検査実施済の場合でも、お家に迎えた際に再度糞便検査の実施をおすすめします。
ノミ・マダニの駆虫をはじめ、お腹の寄生虫の駆虫など、いつどんな薬を使用したか確認できると、次回の予防のタイミングを見極められます。ワクチンの接種歴など証明書を一緒に渡してもらえるか確認しましょう。
子猫の場合は特に、どのくらいの間隔で何回接種できているか分かると理想的です。
保護された経緯を聞くことで、その猫にとって苦手な物・好きな物を見つけやすくなります。
例えば、屋外での生活が長い猫は鉱物系の猫砂を好むことが多いです。人と接触する環境にいても、虐待されていたために低くて大きな声が極端に苦手という猫もいます。
好みを把握してあげることは、猫との生活でとても大切なことです。想像力を膨らませて、お家の環境を整えてあげましょう。
お家の環境やご家族と猫との相性がよいか、数週間~数カ月のトライアル期間を設けてから譲渡という流れが一般的です。
しかし、環境の変化に敏感な猫にとって、生活環境が変わることはかなりのストレスになり、体調を崩してしまう猫も多いです。安易に「お試し」ととらえずに、よほどのことがない限りお家に迎える覚悟を持ってトライアルを実施しましょう。
猫との相性はもちろんですが、飼い主さんがしっかり猫のお世話をしていけるか確認する期間でもあると考えてください。
「保護猫を引き取る=無料」と認識されている飼い主さんもいますが、お家に迎える際に今までかかった医療費を全額負担することが条件だったり、負担する金額が一律で決まっていたりもします。
譲渡までの流れを確認する際に、負担額も確認しましょう。あくまでも目安ですが、3万~10万円は必要になると考えましょう。
体調を崩す前に、かかりつけの動物病院を作っておきましょう。
トライアル期間中の猫が体調を崩したときに備えて、お迎えする前から動物病院に相談ができていると理想的。正式にお迎えした後は、健康状態に不安がなくても一度すぐに受診しておくことをおすすめします。
健康診断のタイミングや次回のワクチン接種日、子猫の場合は避妊/去勢手術をいつ頃実施するかなど、譲渡時の書類を一式持参して、今後のスケジュールを確認しましょう。糞便検査やノミダニの駆虫など、必要に応じて追加処置を実施してもらうことも大切です。
お家へ慣れるまで…と様子を見ているとタイミングを見失いやすいです。人慣れ途中などで受診がどうしても難しい場合は、書類の確認をして今後のスケジュールを立てたり、便のみ持参して糞便検査を実施してもらったりすることが可能か相談しましょう。
猫を迎えるにあたってお家に準備していただきたいものを紹介します。
キャリーは、お家までの移動はもちろん、病院受診の際や災害時の移動に必要になります。日頃から生活スペースに置き、キャリーの中で遊んだり、おやつを食べたりして過ごして慣れておくとよいでしょう。
ハードタイプで上と下に分かれるものだとベッドとして置いておくこともできるのでおすすめです。
人慣れがあまりできていない猫の場合、毛布を掛けた大きめの2~3段ケージといった限られたスペースから慣れていくとよいでしょう。猫用のハンモックなどをつけてくつろげる工夫をしてあげてください。
トイレは可能な限り大きいサイズのものを用意し、猫砂は保護先で使用されていたものと同じものにしましょう。
トイレや猫砂は猫によって好みがあります。気に入らなさそうな場合は、材質の異なる猫砂を入れたトイレをもう一個置くなどの対応をしましょう。
水飲み場は、猫が飲みたいと思ったときにすぐ飲めるように複数個所用意してください。
迎え入れた猫の環境が大きく変わらないよう、今まで使用していたケージやトイレがどんなものだったか参考にさせてもらうとよいでしょう。
猫は環境が変わるとパニックになるため、意図せず網戸を突き破ってしまったり、ちょっとした隙間から外へ出ていったりします。
トライアル期間中は家族が猫との生活に慣れていないため、帰宅時の扉の開閉で猫が外に出てしまう事故が起きやすいです。
玄関扉の前に、脱走防止柵(天井から床までカバーできるもの)を設置したり、網戸を強化したり、玄関が開く際は、猫は扉の閉まる部屋にいる状態にするなど家庭内で脱走防止策を徹底的に考えましょう。
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キッチンは猫にとってかなり危険です。コンロはロックをかけて、猫が覗き込んでも誤って着火しないようにしましょう。ゴミ箱はフタが閉まり、猫が倒せない重さのあるものにし、ゴミを漁って誤食することがないようにしてください。
電気機器のコード類をかじる猫もいます。人の赤ちゃんが生活すると想定して、目に見える危険な物は片付けておくと猫にとっても安全です。
脱走防止に配慮しながら、窓を開けて外の匂いを楽しませてあげましょう。また、上下運動ができるキャットステップやキャットタワーを配置するのもおすすめです。
単純な上り下りだけではなく横への移動もできるように工夫したり、キャットタワーから窓の景色が見えたり、部屋中が見渡せたり、おやつがたまにあったり…楽しく運動できるようにお部屋を整えるのが理想的です。
環境をしっかり整えてお迎えしてあげつつ、更に楽しんでもらえるように日々工夫を続けてあげましょう。猫の生活環境の改善には終わりがありません。
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