【獣医師監修】犬の耳ダニってなに?症状や予防、治療法を解説
2022.08.30 作成

【獣医師監修】犬の耳ダニってなに?症状や予防、治療法を解説

獣医師

島村剛史

島村剛史

愛犬が耳元を痒がっていたり、耳垢がいっぱい出てきたりするといった症状はありますか。日常生活で、犬の耳の病気はよく遭遇する病気の一つです。今回は、犬の耳の病気の中でも「耳ダニ症」について紹介します。病気の原因、症状、検査法、治療法などを知り、適切に対処しましょう。

もくじ

    犬の耳ダニ症ってなに?

    【獣医師監修】犬の耳ダニってなに?症状や予防、治療法を解説
    (Salineekapui/shutterstock)

    耳ダニ症とは、「耳疥癬(ミミカイセン)」とも呼ばれる耳の病気の一つです。ミミヒゼンダニというダニの寄生が原因で引き起こされるもので、犬や猫で見られる病気です。

    ミミヒゼンダニは、耳の中で角質などを食べて生活しています。耳の中を動き回り、採食、排泄、産卵などを行うことで耳の中で増殖し、さまざまな症状を引き起こします。

    人に感染することもある

    ミミヒゼンダニは、一次的に人に感染することもあります。

    人の場合、一過性の発疹をともなう皮膚炎が生じる程度で、人の耳の中に寄生することはまれです。感染している動物の治療が完了すれば、人の症状もよくなっていきます。

     

    犬の耳ダニ症の症状とは?

    犬の耳ダニ症の症状とは?
    (Glikiri/shutterstock)

    耳ダニ症にかかると、多量の耳垢が出たり、頻繁に耳のかゆみが現れたりします。耳のかゆみは、ミミヒゼンダニが動くことによる耳道内の刺激によって引き起こされるものです。

    次のような症状があったら、耳ダニ症の可能性があると考えてよいでしょう。

    • 耳道内に茶褐色の耳垢が多量にある
    • 足で耳元をよく引っかく
    • 耳がかゆくて頭を振る
    • 飼い主さんが耳のあたりを触ると嫌がるようになる

    耳垢がたくさん出ている場合は動物病院へ

    耳垢がたくさん出ている場合は動物病院へ
    (Viktoriia Hnatiuk/shutterstock)

    耳垢は一般的な外耳炎でも見られます。

    耳ダニ症の原因であるミミヒゼンダニはとても小さいため肉眼では確認できません。そのため、耳垢を見ただけでは耳ダニ症と判断することはできません。

    • 耳垢がたくさん出てくる
    • 耳をよくかゆがる など

    上記の症状が出た場合は、動物病院に行ってください。

    動物病院に行くときの注意点

    動物病院で耳垢検査をしてもらい、正しい診断をしてもらうことが重要になります。また、そのときはできるだけ耳掃除を行わずに来院してください。耳掃除をしてしまうと耳垢検査ができなくなります。

    すぐに動物病院に行けない場合は、病院に行くまでの間に一度耳掃除をしてあげて下さい。耳ダニ症は、ミミヒゼンダニの駆虫を行わないと治りません。耳掃除だけでは、耳垢がすぐに溜まってくるため、ご注意ください。

    耳ダニ症の検査法・診断法はどうするの?

    耳ダニ症の検査法・診断法はどうするの?
    (Todorean-Gabriel/shutterstock)

    耳ダニ症の診断は、耳垢からミミヒゼンダニの成虫もしくは虫卵を顕微鏡で検出することです。

    ミミヒゼンダニの検出は比較的容易です。しかし、まれに数回耳垢検査を行わないと検出ができない場合や、耳垢が少なくて検査が難しいことがあります。

    治療をしても外耳炎がなかなか治らない、耳垢がたくさん出てくるなどの症状が続く場合は、再度耳垢検査を行う必要があります。

    耳ダニ症の治療法は?

    耳ダニ症の治療法は?
    (Antonio Gravante/shutterstock)

    耳ダニ症の治療法は、主にセラメクチンという成分が含まれたスポットタイプの駆虫薬(レボリューションなど)を使用します。スポットタイプの駆虫薬は肩甲骨付近の皮膚に滴下することで治療が可能となります。

    投与回数は、1回もしくは2週間ごとに2~4回投与が推奨されており、獣医師により異なる可能性があります。

    スポットタイプの駆虫薬を使用した治療でもミミヒゼンダニが駆虫できない場合は、他の駆虫薬(イベルメクチンなど)に変更する必要があるため、かかりつけの動物病院に相談してください。

    また、同時に耳掃除を行い、物理的にミミヒゼンダニの数を減少させることも有効です。適切な治療を行えば完治可能な病気ですので安心してください。

     

    耳ダニ症に感染しないようにする予防法とは?

    耳ダニ症に感染しないようにする予防法とは?
    (WilleeCole Photography/shutterstock)

    耳ダニ症から愛犬を守るために、以下のことを行うことが重要となります。

    1)感染している動物との接触を控える、生活環境をキレイに保つ

    ミミヒゼンダニは、ミミヒゼンダニに感染している動物と接触することにより感染します。感染している動物が身近にいる場合は接触を控え、生活環境をキレイに保つことが愛犬を守ることにつながります。

    2)日頃から耳ダニ予防を行う

    耳ダニ症の予防方法としては、レボリューションなどのノミ・ダニ予防薬を定期的(月1回)に使用することが有効です。特によく散歩するなど外出の機会が多い犬では、月1回の予防が推奨されます。

    3)定期的に耳掃除を行う

    定期的に耳掃除を行い、常に耳を清潔な状態にしておくことも重要です。耳の中をキレイに保つことで、耳ダニ症感染の早期発見などにつながります。

    しかし、耳掃除のやりすぎには注意してください。耳掃除を過度に行うことで、耳の中を必要以上に傷つけたり、出血につながったりする可能性があります。

    耳掃除の頻度に決まりはありませんので、耳垢が気になったら、軽く掃除してあげるくらいで十分かと思います。

    おわりに

    普段から愛犬の耳をチェックしておくことで、早期に耳ダニ症など耳の病気に気づいてあげることができます。

    日頃から耳のケアを大事にしてあげて下さい。

     

    著者・監修者

    島村剛史

    獣医師

    島村剛史

    プロフィール詳細

    所属 ふく動物病院(東京都国立市) 副院長

    略歴 1989年 和歌山県和歌山市に生まれる
    2008年 麻布大学 獣医学部獣医学科に入学
    2014年 獣医師国家資格取得
    2014年~ ふく動物病院(東京都国立市)に勤務
    2015年~ 麻布大学附属動物病院 腫瘍科研修医(現在:軟部外科腫瘍外科)

    資格 獣医師免許

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