【獣医師監修】野良猫を保護して飼う方法や手順、注意点は?お迎えした後のよくあるトラブルも紹介
2022.07.28 作成

【獣医師監修】野良猫を保護して飼う方法や手順、注意点は?お迎えした後のよくあるトラブルも紹介

獣医師

濵口 美香

濵口 美香

野良猫をお家に迎える前には、考えなければならないことがたくさんあります。野良猫を迎える環境として必要なもの、動物病院に相談しておくこと、家での生活で気を付けることなどをお話しします。「野良猫を保護して飼う」と決めた人も、迷っている人も、全ての猫好きさんに読んでいただけると嬉しいです。

もくじ

    野良猫を保護して飼う前の心構え

    【獣医師監修】野良猫を保護して飼う方法や手順、注意点は?お迎えした後のよくあるトラブルも紹介
    (New Africa/shutterstock)

    野良猫に食事を与えようとするなら、飼い主となる覚悟を決める必要があります。とはいえ、家に入れて食事とトイレの片づけをするだけで猫の生活を維持してあげられるわけではありません。猫を保護しても健康管理ができないようであれば、猫のためになりません。

    猫を飼う上で完全室内飼いにすることはとても大切です。しかし、猫にとって家の中で生活できることが幸せとは限りません。猫にとって安全で幸せな環境が何かを考えてみましょう。

    完全室内飼育をする

    完全室内飼育のメリットは猫の健康管理ができることです。食事の管理や、排泄の状態をしっかり確認することは病気の予防や早期発見につながります。

    その他にも、完全室内飼育をする理由として次の点があげられます。

    • 交通事故防止
    • ご近所迷惑防止
    • 感染症対策
    • 衛生対策

    これらは猫の安全を守るために基本的なことと考えられていますが、全て人の生活環境を快適にするためのものでもあります。

    飼い主さんの管理できる範囲に猫を置くことで、猫嫌いな人を増やさないこと、虐待から猫を守ることにも繋がるでしょう。

    飼育環境を整える

    保護したばかりの猫は、ケージで生活しながら家庭環境に慣れるための時間が必要なこともあります。徐々に慣れてきたら室内で楽しく過ごしてもらうために、キャットウォークなどで縦横に運動できるような部屋作りをしましょう。

    室内は猫にとって安全と言い切れるものではありません。ゴミ箱を漁って誤食することも考えられるため、簡単には倒れない蓋つきのゴミ箱が必要になります。

    ビニール袋やヒモ等を遊びながら飲み込んでしまうこともあります。お花や観葉植物などを食べて中毒になることもあります。アロマオイルも中毒を起こす可能性が高いです。アロマディフューザーの使用は猫の生活スペースでは使用できません。

    猫の健康を考えながら、飼い主さんが日常生活を変更する必要が出てきます。

    最後まで責任をもつ覚悟を

    飼い主さんになるからには、しっかりと責任をもってその猫の一生を面倒見る覚悟が必要です。自身に万が一のことがあった場合に、猫のお世話を頼める人が他にいるのかも考えておきましょう。

     

    猫を保護する前に動物病院に相談しましょう

    猫を保護する前に動物病院に相談しましょう
    (Celiafoto/shutterstock)

    何らかの事情で、野良猫を突然保護することもあるでしょう。しかし、捕獲機などを使って捕獲する際は、事前に動物病院に相談しておくとスムーズです。

    動物病院で野良猫の受け入れが可能か

    野良猫は、寄生虫やウイルスなどに感染している可能性があります。ほかの患者さんへの感染対策のため、野良猫の受け入れをしていない動物病院も多くあるため、受け入れ可能な動物病院を確認しておきましょう。

    受け入れが可能であれば、保護できた場合にどのような手順で来院したらよいかも確認してください。受診の流れに指示がある場合もあります。

    費用の確認を

    捕獲直後の野良猫はかなりパニックになっていることが多いです。処置内容などを事前に決めておくと、当日の受診がスムーズです。

    予定した日に捕獲ができるとも限りませんし、捕獲できたタイミングと動物病院側が処置に取り掛かれるタイミングが異なることもあります。場合によっては、数時間~数日のあいだ動物病院に預けて処置をしてもらうこともあります。

    猫の状態や処置の内容によって麻酔が必要になることもあります。処置費用や預け費用がどの程度必要になるかも確認しておくとよいでしょう。

    猫を保護した後に動物病院でやってもらいたい処置や検査

    猫を保護した後に動物病院でやってもらいたい処置や検査
    (Okssi/shutterstock)

    保護された野良猫が来院した場合、動物病院では次のような処置を行います。

    • 視診、触診、聴診などによる身体一般検査
    • ノミ、マダニ、その他の寄生虫の駆虫
    • 猫エイズ(FIV)/白血病ウィルス感染症(FelV)の検査
    • 血液検査(血球検査、生化学検査)
    • 糞便検査
    • 尿検査
    • 去勢避妊手術
    • 歯科処置
    • ワクチン接種
    • シャンプー
    • マイクロチップ挿入
    • 爪切り 

    子猫なのか成猫なのか、元気なのか体調が悪そうなのかによって、必要な処置や検査は異なります。猫の状況によって、どの項目を実施するか省くかを受診時に相談していきます。

    検査結果によって治療や再検査、ワクチンの追加接種など、後日受診が必要になることもあります。

     

    野良猫をお家にお迎えした後によくあるトラブル

    野良猫をお家にお迎えした後によくあるトラブル
    (PakulinSergei/shutterstock)

    野良猫をお家に迎えるまでは「うまく捕獲できるか?」で頭がいっぱいになっていることも多いです。しかし、実際に野良猫が保護されて室内での生活が始まると、さまざまなトラブルが発生します。

    トイレは覚えてくれる?

    猫は広くて綺麗で砂がある場所に排泄するため、トイレを用意しておくとスムーズに利用してくれることが多いです。元野良猫は、より自然の砂に近い鉱物系といわれる猫砂を好む傾向があるため、なるべく大きくたっぷりと砂を掘れるトイレを設置してあげましょう。

    トイレ以外の場所で排泄した場合は消臭し、消臭しきれないものがある場合は、処分を検討してください。匂いが残っている場合、その場所に排泄を繰り返すことが多いです。

    トイレ以外の場所での排尿が目立つ場合は、泌尿器疾患を抱えている可能性があります。特に、保護直後などは緊張から排尿を我慢してしまい、ストレスから膀胱炎になることも多いです。動物病院に相談しましょう。

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    夜鳴きはおさまる?

    保護直後は今までのテリトリーが気になったり、生活環境の変化に不安を感じたりすることから、昼夜関係なく鳴き続ける猫もいます。飼い主さんが就寝し、猫が人目を気にせず活動できるようになる夜間は、特に鳴く行動が目立つことがあります。

    家に迎えて半年程は、猫が落ち着くための必要期間だと考え、夜鳴きを覚悟した上で保護しましょう。動物病院に相談してサプリメントやスプレータイプのフェロモン製品を紹介してもらうこともおすすめです。

    また、行動診療科を受診して、効果的な対策を一緒に検討してもらうのもよいでしょう。

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    落ち着いて動物病院に相談をしましょう

    捕獲前後やお家での生活がスタートした頃は、たくさんの悩みが発生すると思います。そんなときに、飼い主さんだけでも相談に行きやすい動物病院を見つけておくと心強いです。猫の幸せな新生活に、この記事がお役に立てると嬉しいです。

    著者・監修者

    濵口 美香

    獣医師

    濵口 美香

    プロフィール詳細

    所属 猫の診療室モモ(東京都品川区) 勤務医

    略歴 1988年 鹿児島県に生まれる
    2007年 麻布大学獣医学部獣医学科入学
    2014年 獣医師国家資格取得
    2013年~2015年 千葉県の犬猫動物病院にて勤務
    2015年~2016年 ペット保険会社にて勤務。動物病院での診察業務・ペットショップの子犬子猫の往診・イベントでの健康相談業務・動物看護専門学校での講師を務める
    2016年~2017年 子育てに専念
    2018年~ 品川区の猫の診療室モモにて勤務

    資格 獣医師免許
    JSFM CATvocate認定プログラム修了

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