【獣医師監修】愛犬を夏バテから守ろう!夏バテの原因・症状・予防方法を解説
2022.07.28 作成

【獣医師監修】愛犬を夏バテから守ろう!夏バテの原因・症状・予防方法を解説

獣医師

東 一平

東 一平

夏になるとよく耳にする「夏バテ」という言葉。酷暑によって夏に体調を崩しやすくなるのは人だけでなく犬も同じです。しかし、そもそも夏バテとは一体何なのでしょうか。犬の夏バテの原因、夏バテの対処法を知って、愛犬を夏バテから守っていきましょう。昨今は、温暖化が進み天候が厳しくなっています。厳しい気候が愛犬に牙を剥かないよう、飼い主さんが正しい情報をもつことが大切です。

もくじ

    そもそも夏バテとは何か?

    【獣医師監修】愛犬を夏バテから守ろう!夏バテの原因・症状・予防方法を解説
    (Oporty786/shutterstock)

    一般的に、夏バテとは夏の暑さによる自律神経系の乱れが原因で起こる様々な症状を指します。これは人の話ですが、犬も同じだと考えられます。

    夏バテは暑さによる体調不良

    人も含め、動物には恒常性が備わっています。これは、生体が変化を拒んで常に一定の状態を保とうという体の機能です。そのため、外の気温が体に害を与えるほどの温度になると、体は体温を気温まで上昇させないためにさまざまな抵抗をします。

    この気温への抵抗にエネルギーを使うと、交感神経に過剰な負担がかかります。これらの蓄積による体調不良が夏バテの正体です。

    人の場合、呼吸数を増やしたり、体表の血管を開いたり、汗をかいて熱を逃がそうとしますが、犬は残念ながら汗をかけません。犬は呼吸によっての体温管理が中心となるため、熱に弱いと考えられています。

     

    犬の夏バテの症状と対処方法

    犬の夏バテの症状と対処方法
    (Paul’s Lady/shutterstock)

    夏バテの症状は、犬が暑さを感じている状態すべてといっても過言ではありませんが、問題になる行動としては、次のものが挙げられます。

    • 疲れやすくなる
    • 食欲が落ちる
    • 嘔吐や下痢といった消化器症状を起こす
    • 大量の水を飲んで大量のおしっこをする
    • 落ち着きがなく不安そうにする

    これらの症状が見られたら、愛犬が夏バテしているかもしれません。

    犬が夏バテしてしまったら

    1)動物病院を受診する

    残念ながら夏バテに対しての特効薬的な治療はありません。動物病院では、吐いていれば吐き気止め、下痢をしていたら下痢止め、脱水していたら点滴と、対症療法で体力の消耗を抑える手伝いをすることになります。

    「愛犬の様子がいつもと違う」「普段の生活よりも暑い環境で生活をしていた」というようなことがあれば、動物病院に相談してください。夏バテによる体力の低下で隠れていた病気が発症することもあります。

    2)消化に良い食事と休息をとる

    もしも、愛犬に体調不良があらわれたら、ぬるま湯で表面の脂分を少し落としたドライフードなど消化に優しい食事を与え、涼しい場所でしっかり休息できるようにしてあげることが大事です。

    排便排尿のために散歩する場合は、できる限り涼しい時間に無理のない範囲で行い、まずは体力の回復に努めてください。詳細はかかりつけの獣医師の指示を守りましょう。

    犬の夏バテは熱中症の手前の状態

    犬の夏バテは熱中症の手前の状態
    (ADragan/shutterstock)

    「暑さにやられた体調不良」と聞くとそれほど怖くないように感じてしまいますが、実際には非常に怖い状態です。

    犬の夏バテは非常に怖い

    犬は暑さに弱く、ある程度以上の高温環境にいると適切な体温を保てず体温が上昇してしまいます。体温が40度を超えると熱中症という命に関わる状態になります。

    ここまでは大丈夫、ここからは危険という明確な線引きは難しいので、最初からリスクを取らないように、暑い環境に動物を置かないことが大切です。

    夏バテは、熱中症の手前で運よく耐えていた状態、もしくは軽い熱中症ですんで回復してくれた状態だと考えられます。熱中症になると体にある程度以上のダメージを受け、生命維持に必要な臓器にダメージが溜まればどんな治療をしても助けられません。

    「ゆで卵は生卵に戻せない」、私はそう繰り返しお伝えしています。夏バテは、ゆで卵ができそうな手前でなんとか引き返せた状態です。一歩間違えれば命に関わる非常に危険な状態であることを理解しましょう。

    犬の夏バテの予防方法。夏バテさせない環境作り

    犬の夏バテの予防方法。夏バテさせない環境作り
    (BetterPhoto/shutterstock)

    一番大事なことは、犬を夏バテにさせないことです。愛犬が過ごしている環境や、日々の注意によって夏バテにならないようにしましょう。高温環境に犬を置かないことが大切です。

    お留守番

    日中のお家でのお留守番は、室内がどのくらいの温度になっているのかを把握しておきましょう。太陽があたって逃げ場がないような環境はとても危険です。

    車の中

    車の中も注意が必要です。太陽があたった車内は想像よりも遥かに早く、そして想像よりも高温環境になります。人がいる状態でも窓を開けているだけでは熱い空気が動いています。

    人は汗によって風があたって涼しく感じていても、動物はうまく体温調整が出来ないので、クーラーを利用して涼しくしましょう。日当たりの良いところから移動できない状態も危険ですので、動物がいる場所をサンシェードなどで日陰にしましょう。

    散歩

    散歩の時間や場所も気をつけましょう。犬は人よりも低い場所を歩行するため、アスファルトの照り返しの影響を受けます。夏でなくても天気がいいと想像よりも暑くなることが増えてきました。明らかに涼しい季節以外は、太陽が出ている時間帯の散歩を避けましょう。

    また、日が沈んですぐの場合はアスファルトを実際に触れてみて熱くないことを確かめてから散歩をしてあげてください。水分補給などの体温調整の手助けになるような工夫も取り入れるとよいでしょう。

    夏バテになりやすい犬種は?

    • チワワやフレンチブルドッグなどの短頭種
    • 呼吸器の持病を持つ子
    • 心臓病を持つ子
    • 子犬
    • 高齢犬 など

    上記の特徴を持つ犬は、暑さへのリスクが高いといわれています。ただし、それ以外の子が暑さに強いわけではないため、繰り返しますが、夏バテの症状がでても、このくらいなら大丈夫だろうと考えないでください。

    愛犬のため、危険からは距離を取っておくようにしましょう。

    興奮やすく、元気な子

    とても元気で一人でも大運動会をしてしまうような子や、興奮してしまう子にも注意してください。

    特に子犬の時期はテンションが上がりやすく、自分自身の状態を把握する能力も低いので、大暴れして気がついたら限界を越えていた・・・なんてことも起こります。

    難しいのですが、人間が少しおとなしくさせてあげたり、休憩時間を取ったりしてあげてください。

    過度な運動は夏バテ・熱中症の原因になる

    過度な運動は夏バテ・熱中症の原因になる
    (alexei_tm/shutterstock)

    熱中症の原因は高温環境が一番多いですが、それほど高温環境でもないのに熱中症を引き起こすこともあります。それが運動です。

    秋から冬の明らかに涼しい時期は危険性が低いと思いますが、太陽ポカポカで暖かく過ごしやすい時期になり、ついつい運動に熱が入ってしまうと、熱中症になる危険性があります。

    人もそうですが、運動をすると体が熱くなります。人は汗という手段があるために、運動による体温上昇を汗によって下げることが可能です。しかし、犬は人間のようにダラダラと汗をかくことで体温を下げることができません。

    基本的には呼吸によって体温を下げようとしています。湿度が高かったり、熱くはないけど気温が高めだったりする場合、呼吸による体温を下げる働きが落ちます。

    公園などでテンションが上って過剰に運動をして体温が高い状態を維持することになり、夏バテや熱中症になってしまう可能性があります。

    長時間の運動、フリスビーなど、飼い主さんの介入によって過度な運動負荷をかけることは避け、吸水や涼しい日陰などでの休憩を適宜挟んであげてください。

     

    犬の夏バテで病院に行くべきタイミングは?

    犬の夏バテで病院に行くべきタイミングは?
    (Javier Brosch/shutterstock)

    夏バテはダメージの蓄積なので、検査などで明らかな異常が出ないことがあります。しかし、時期や生活環境などが疑わしい場合は、診断の選択肢にあがります。

    特に、食欲不振や消化器症状が出ていると、消費するエネルギーに対して補給するエネルギーが足りない状態になってしまいます。「おかしいな?」と感じたら、できるだけ早い受診をお願い致します。

    まとめ

    「夏バテ」という言葉のイメージから軽い体調不良だと考えてしまいそうですが、その中身は熱中症予備軍、その繰り返しによる消耗とダメージの蓄積です。

    やりすぎなくらい対策をしても動物に害はありませんが、対策が足りない場合は熱中症や恐ろしい結果が待っている可能性があります。油断して引き返せない状態になるよりも、夏バテをする前から徹底した対策をお願いします。

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    著者・監修者

    東 一平

    獣医師

    東 一平

    プロフィール詳細

    所属 株式会社アイエス 代表取締役
    アイエス動物病院(千葉県市川市) 院長

    日本小動物歯科研究会
    日本獣医皮膚科学会
    比較眼科学会
    日本獣医麻酔外科学会

    略歴 1978年 千葉県に生まれる
    1997年 麻布大学 獣医学部獣医学科入学
    2003年 獣医師国家資格取得
    2003年~2004年 アイエス動物病院に勤務
    2004年~2005年 東京都内の動物病院に勤務
    2005年 千葉県市川市のアイエス動物病院の院長に就任

    資格 獣医師免許

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