くるくる回るビー玉のような目をした小型犬、狆(チン)を知っていますか。愛くるしい表情で私たちを魅了する狆(チン)は、徳川綱吉の時代には江戸城でも飼われていたことがあるという、歴史ある日本犬です。そんな狆(チン)の特徴や性格、飼い方のポイントなど、詳しく解説します。
もくじ
日本犬の中でも、独特の表情を見せる狆(チン)。凛々しい日本犬が多いなか、この愛らしい狆(チン)が日本犬だと知らない人も少なくありません。愛嬌たっぷりの、狆(チン)の特徴や歴史をみてみましょう。
狆(チン)は古来に海外から渡ってきて以来、日本人に長く愛され、愛玩犬として改良され続けてきた犬種です。中でも大きな特徴である鼻のつぶれた愛らしい顔は、チベタンスパニエルがルーツであるといわれています。このよさを残し、今の姿で定着しました。
狆(チン)の体高は20~26㎝前後で、メスのほうが小さいことが多いです。体重は3~5㎏が基準値となります。体重過多は足への負担が大きくなるため、動物病院でもオーバーしないよう指導されます。体重の数値とともに筋肉量も見ながら育てるとなおよいでしょう。
※体高…四つ足をついて立ったときの、地面から背中までの高さ
狆(チン)のカラーは、白地に黒か茶色のパターンのみとなります。白のみはなく、ハチワレ模様のような目の周りの斑が入ります。ボディにも顔と同じように左右対称に斑が入るのがより望ましく、美しいとされています。
人が大好きな狆(チン)は、甘えん坊で構ってほしがる子どものようなあどけない性格をしています。
日本家庭の抱き犬として改良されてきたため、家の中では物静かでいたずらをせず、行儀のよい犬種ではあるものの、大人しいからといって放っておくと、犬自身にストレスが溜まってしまいます。分離不安症にならないよう、アクションがなくても毎日遊んであげましょう。
狆(チン)は、732年に朝鮮から日本に渡ってきたことが「続日本紀」に記されています。その後100年に渡って中国や朝鮮に派遣された使者などが、狆(チン)を連れ帰ってきた記録が残あります。
「狆」という字は「小さい犬」という意味の和製の漢字ですが、中国からやってきた古来の漢字ではなく、狆が日本に入ってから作られた文字だとされています。中国の犬だと勘違いされることもありますが、このような漢字や名前から見ても、渡来の歴史がある、立派な日本犬として定着しているのです。
狆(チン)は宮廷に献上され、徳川綱吉の時代である1680年以降には、江戸城でも飼われていたことが記録に残っています。当時の日本画などにも姿がたびたび描かれており、残された日本画を目にしたことがある人もいるでしょう。
1853年にペリーが来日した際には、狆(チン)を何頭か持ち帰り、その中の2頭をビクトリア女王に献上したという記録が残されています。まるで歴史の教科書のように、古くまでルーツを遡ることができる犬種なのです。
愛され可愛がられていたのは国内だけに留まらず、各国の上流階級にも献上され大切にされてきたのがよく分かります。
狆(チン)と快適に過ごすには、どのように飼えばよいのでしょうか。狆(チン)との暮らしについてみていきましょう。
基本的に大人しく繊細な性格なので、普段あまり叱ることはないでしょう。しかし、狆(チン)を、大きな声やきつい態度で叱ると、繊細さが増して物音や人の声に敏感になりすぎてしまいます。
昔から家族と一緒に過ごすことを前提とした性格の犬種なので、人が教えることをよくきき、基本的にはすぐに覚えます。何か粗相を起こしても、禁止ではなく、気をそらして楽しみを感じられるように工夫すると、ストレスを増やさずにしつけられるでしょう。
家庭犬の狆(チン)には、自然豊かな環境が必ずしも必要ということはありません。飼い主さんが一緒に遊んでくれることを一番と考える性格です。外でも室内でも、楽しく遊んであげる時間を毎日30分程度とることがうまく過ごす秘訣です。
狆は、運動量を積極的に増やさなくても問題ありません。飼い主さんがいれば散歩も楽しくしてくれますが、体力がなく足に負担がかかりやすいので、激しい運動は控えましょう。
暑さや寒さ対策をしっかりおこなうことも大切です。特に、狆(チン)のような短頭種は暑さに弱いです。夏の暑い時期は、地面に熱が溜まるため、日中の散歩は避けたり、室内で過ごすほうが安全でしょう。
ダブルコートに近い個体もまれにいますが、狆(チン)はシングルコートのためお手入れしやすい犬種です。まっすぐのしなやか被毛が絡まらないよう、こまめなブラッシングがお手入れの基本となります。
シルクのように美しい長毛で、耳や後ろ足、しっぽなどには飾り毛があります。散歩中に草などが絡まって毛の中に入り込まないよう、足周りの毛の絡まりには特に気をつけましょう。
普段は抜け毛が少なめで、お手入れの時間が短くすみますが、換毛期には抜け毛が多くなります。ブラシに慣れるために、抜け毛の少ない時期でもブラッシングを習慣化しておくと、換毛期にもストレスにならないでしょう。
狆(チン)の平均寿命は12歳~14歳です。小型犬の中ではやや短い犬種です。長く元気でいてもらうためにも、日頃から愛情を持って接してあげましょう。
狆(チン)の注意しておきたい病気について紹介します。
小型犬は生まれつき膝のお皿がはまっている溝が浅く、膝の骨が内側や外側に外れやすい特徴があります。膝を曲げ伸ばす時に痛みが出てきて、歩きたがらない、または歩きづらくなるといった症状が起こります。
日本の高温多湿の気候は、皮膚疾患の原因となります。かゆがっている様子が見られたり、体を地面に擦り付けていたりする場合には特に注意が必要です。普段のお手入れの際には毛の下に隠れている皮膚の状態をよく観察し、脱毛や出血がないかしっかりと確認しましょう。
眼瞼内反症とは、まぶたのふちが内側に入り込んでしまい、炎症が起こる疾患です。まつげが目に入り込み傷をつけてしまいます。放置すると結膜炎や角膜炎にまで悪化してしまいますので、早期治療がカギとなります。
生体価格は25~30万円(2024年7月時点)ほど。狆(チン)を迎える方法、費用について具体的に紹介していきます。
ペット初心者でも迎えやすいのがペットショップです。狆(チン)が欲しい時、しつけで困った時にお店に行けば相談に応じてもらえるため、ペット初心者におすすめです。月齢がある程度いった子犬ならばワクチン接種、簡単なしつけが済んでいるケースもあります。
ブリーダーは、全国各地に存在する犬の繁殖を専門とする人のこと。犬種の知識、飼育経験が豊富なブリーダーから犬を譲り受けることができるため、事前に飼い方、注意点を教わることができます。犬の飼い方がわからないペット初心者でも安心して迎え入れることができるでしょう。
また、実際に親犬の様子を事前に確認することができるため、成犬時のサイズ感などを予測する助けになります。飼育環境などの質問にもきちんと答えてくれる、信頼できるブリーダーを見つけましょう。
里親制度は、保護団体、保健所など引き取り手のいない犬、飼い主さんがいない犬を迎え入れて里親になる制度です。ペットショップ、ブリーダーと比べると費用が掛からないメリットがあります。
ただし、里親募集によっては譲渡、引取後も必要に応じて飼育状況の確認しなければならないケースもあります。
犬を迎え入れるまでに、準備しておきたいものは、以下の通りです。約4~5万円ほどをみておくとよいでしょう。
【寝床の準備】
・ペットサークル
・クレート(ペット用キャリー)
・ベッド
【日用品の準備】
・ドッグフード
・フードボウル
・水飲みボウル
【トイレ用品の準備】
・トイレトレー
・トイレシーツ
【ケア用品】
・ブラシ
・爪切り
・ペット用シャンプー
・歯磨きグッズ
【その他】
・首輪
・リード
事前に飼育環境を整えておく必要もあります。危険なもの、噛まれては困るものは片づけるなどしておきましょう。
夏場はクーラーなど空調設備のできるものも備えておくと安全です。余裕があれば、犬が遊べるおもちゃなども買っておきましょう。
【関連リンク】
犬を迎える前に準備しておきたいもの
犬を迎える前に整えておきたい室内のポイント
犬をペットとして迎える時の心構え
役所への登録料やワクチン接種・健康診断の費用として2万~3万円ほどがかかります。
小型犬の平均的な飼育費用は、1カ月あたり1~2万円になります。
フードやおやつといった食費。価格はピンキリですが、平均すると1カ月で3,000~5,000円ほどかかります。
トイレシーツなどの日用品が1カ月で1,000~3,000円前後。
シャンプーなどのお手入れをトリミングサロンにお願いする場合は、小型犬の場合1回3,000~1万円程度をみておきましょう。
フィラリアやノミ・ダニの予防薬なども含め、健康であっても医療費として年間で3~5万円ほど必要でしょう。1カ月にすると3,000円程度です。
初めて犬を飼う方の盲点となるのが、ペットの医療事情です。ペットには公的な健康保険がなく、治療費は全額自己負担となります。自由診療のため病院によって料金が異なる点が、人とは違います。
子犬は、骨折や異物誤飲が多いです。犬猫の骨折、異物誤飲の平均治療費は以下の通りです。
ただし、どちらも場合によっては20万円を越えるケースもあるため、住環境を整えるなど事前の予防が大切です。
お迎えしたばかりの頃は環境変化によるストレスで軟便や風邪にもなりやすいので体調の変化にも気を付けてあげましょう。
*ペット&ファミリー損保調べ(2023年4月~2024年3月 保険金支払い実績をもとに算出)
ペットの年齢によって保険料は変わりますが、小型犬の1ヶ月の保険料は1,500~4,400円*ほど。0~3歳の間に加入するケースが多いです。
ペット保険は、健康でないと加入できず、加入可能年齢が「満7歳まで」のように制限のある場合がほとんど。人と同じように犬も年齢が上がれば病気のリスクも上がるため、早めに加入したいものです。
ペット保険はたくさんの種類があり、どれも同じように見えるかもしれませんが、各保険商品によって補償内容は大きく異なります。
保険料だけではなく、以下の補償内容をよく理解し、最もご自身に適した保険を選ぶようにしましょう。
*参照:慢性疾患にも、高額治療にも対応したペット保険!ペット&ファミリー損害保険「げんきナンバーわんスリム プラン50」
* 犬の加入タイプ(小型犬・中型犬・大型犬・特大犬)は、ご加入時・ご継続時の体重で決まります。ただし、1歳未満の幼犬の場合「犬種分類表」を参考に、1歳時のおおよその予測体重で加入タイプが決まります。
家族になる前からたくさんのことを学ぶことで、快適な暮らしをスタートすることができます。お迎えする犬の特徴や費用などをよく知ってよきパートナーとして信頼関係を築いていってくださいね。