他の犬にはない皮膚のたるみが独特表情を作るシャー・ペイ。紀元前から愛される歴史の古いこの犬種は、途絶えることなく現代でも世界中で愛されています。そんなシャー・ペイの様々な魅力を、飼い方や特徴、性格なども含めて解説します。
もくじ
この不思議な見た目はどんな特性や歴史があるのでしょうか。まずは、シャー・ペイの特徴やその歴史についてみてみましょう。
シャー・ペイは、中国語で「砂のようにざらざらした皮膚」という意味。原産国の中国では「沙皮」と表記されます。実際に、皮膚は硬く、紙やすりのようにざらざらしているのが大きな特徴です。原産国から「チャイニーズ・シャーペイ」とも呼ばれることもあります。
日本では大変珍しいシャー・ペイですが、見た目の可愛らしさと不思議さが魅力となり、SNSで話題となっているシャー・ペイもいます。例えば、動物のショーを行っていたプーキーズの一員「もやちゃん」もシャー・ペイです。
体高は44~51cm。大型犬の分類です。たるんだ皮膚に埋もれて見えにくいですが、がっしりとした骨太な体形をしています。足がそれほど長くなく、コンパクトな体形といわれます。体重は16~25kgの前後で、オスのほうが大きく、中には29kgにもなる犬もいます。
※体高…四つ足をついて立ったときの、地面から背中までの高さ
シャー・ペイの毛色は、ブラウン、ブラック、金色がかった地の色に黒が混じるフォーン、クリームがあります。ホワイトカラーも存在しますが、公式には認められていません。
この被毛はざらりとしていて、硬めの手触りが特徴です。被毛の長さは超短毛のホースコートタイプと、それより少し長く2.5㎝程度のブラッシュコートタイプ、それ以上長く2.5㎝以上になるベアコートタイプの3種類があります。
愛嬌のある見た目とは裏腹に、シャー・ペイは頑固でフレンドリーさは少ないといわれます。飼い主さんへの忠誠心が高く、興奮したり喜んだりするような表現はほとんどありません。
犬らしく全身を躍らせて喜ぶことがないため、冷静で落ち着いているように見えます。これは、闘犬や番犬だった時代から引き継いだ性格なのでしょう。ほかの犬種に比べて警戒心や攻撃性も残っています。
シャー・ペイは、紀元前200年頃から中国の歴史に登場していた犬種です。長い歴史の中で、食用犬や闘犬、番犬などさまざまな役割を与えられ飼育されてきました。
しかし、1949年頃に中国が犬の飼育は贅沢であるとして禁止し、中国内の犬が大量虐殺されました。その際、犬がつくられた繁殖の記録なども処分され、シャー・ペイを含む中国内のさまざまな犬種の由来が分からなくなっています。
この政策により絶滅寸前まで追い込まれたシャー・ペイでしたが、闘犬として活躍していたわずかな数頭が残り、それを元にアメリカのブリーダーが種の保存と繁殖を試み、手を差し伸べました。
その甲斐あってシャー・ペイは頭数を増やし、1974年にはアメリカのケネルクラブで正式に登録されるまでになっています。
シャー・ペイの飼い方のポイントは、しつけと運動です。お互いが健やかに過ごせるよう、犬種の特性を理解しましょう。
番犬の歴史があるシャー・ペイ。忠誠心が高く、非常に頑固な一面があるため、しつけがしにくいといわれています。子犬のうちから徹底して飼い主さんがリーダーシップをとり、社会性を身につけさせましょう。
家族以外の人間でも受け入れられるよう慣らすことも大切。攻撃性が出ないように、なるべくたくさんの人に触ってもらいましょう。男女や年齢差など偏りなく犬と関わってもらうと、犬も偏見が薄くなりなおよいです。
シャー・ペイには、1日2回、1回30分以上の運動が必要です。見た目以上に体力があり、日常生活の中では運動量が足りなくなることがあるため、都会では飼いにくいと感じるかもしれません。
快適な環境を用意し、ストレスをためさせないようしっかり運動させましょう。
シャー・ペイの体は大豆を分解しにくいといわれています。ドッグフードは大豆の含まれていないものを利用し、消化トラブルには気をつけましょう。近年、犬のアレルギーが幅広く見られるようになり、ドッグフードは多様化されています。
安価なフードの中にはさまざまな穀物が含まれるものもあるため注意してください。総合栄養食やAAFCOなどの基準に則ったフードの中から、原材料に大豆が含まれていないものを選ぶことを心がけましょう。動物病院で相談するのもよい方法です。
また、シャー・ペイはがっしりとした体つきなので、総合栄養食の中でも高たんぱくなフードを選ぶとよいでしょう。
パグなどと同様にシャー・ペイの独特な深いしわは、深いたるみの中に汚れが溜まってしまいます。散歩のあとなどには、濡れたタオルでふき取るようなお手入れをしましょう。
普段の生活の中でもしわの間にはフードや水分が入り込みやすくなります。毎日のお手入れに組み込んで、犬が嫌がらないように習慣化すると良いでしょう。
シャー・ペイの平均寿命は9歳~12歳です。大型犬の中では短めです。
シャー・ペイのなりやすい病気を紹介します。
シャー・ペイは特に眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)、緑内障、チェリーアイになりやすいと言われています。
眼瞼内反症とは、まぶたのふちが内側に入り込んでしまい、炎症が起こる疾患です。まつげが目に入り込み傷をつけてしまいます。放置すると結膜炎や角膜炎にまで悪化してしまいますので、早期治療がカギとなります。
緑内障は、眼圧が上がることにより、視神経を障害する病気です。中年齢から高齢の犬によく見られ、放置すると失明してしまいます。目が充血している、しばしばさせているなどの様子が見られたら、目薬や経口薬で治療を始めましょう。
チェリーアイは、目頭の第三のまぶたと言われる瞬膜の内部組織が目頭から飛び出し、真っ赤なさくらんぼのように見えることからチェリーアイと呼ばれています。また第三眼瞼腺脱出(だいさんがんけんせんだっしゅつ)とも言われます。点眼薬や内服で治療をおこないますが、悪化した場合は外科手術をすることもあります。
また、シャー・ペイはアレルギー性皮膚炎やムチン沈着症といった皮膚疾患にもなりやすいと言われています。
アレルギー性皮膚炎とは、アレルギーによって引き起こされる皮膚炎です。皮膚の強いかゆみが主な症状で、しきりに舐めたり噛んだりするようになります。皮膚に炎症や脱毛が見つかり、かゆがっているようであれば、獣医師の指導のもと食事や生活環境の調整が必要になります。
またムチン沈着症という疾患にもなりやすいといわれます。ムチンが皮膚に多量に溜まり、そのため脱毛やかゆみを発症するものです。ムチンはシャー・ペイの皮膚のたるみの内部で作られるもので、ゼロにすることはできません。
同時に水泡もできやすいため、お手入れの際に早期発見することがカギとなります。
シャー・ペイ独特の自己炎症性疾患で、シャーペイシンドロームとも呼ばれています。原因不明の発熱や、かかとの腫れ、食欲不振、嘔吐など、幅広い症状を引き起こします。
倦怠感や関節痛、腹痛、貧血などで動けなくなり、呼吸困難なども現れますが、疾患に関しては不明点が多く、予防や明確な治療も難しい状況です。アミロイドーシスを引き起こし命に関わることもあるため、食欲不振など軽い症状の場合でも、早期発見に努めましょう。
シャー・ペイは鼻の短い短頭種のため、気道が元々狭い特徴があります。このため、軟口蓋過長や気道狭窄などが起こり、気道の様々な症状が出やすくなります。
気道がふさがり呼吸困難が起こると、命に危険が出てしまうため、夏の暑さや気圧の低い場所などでは気を付けなければなりません。呼吸が上手くできないことで体温が上昇し、熱中症を引き起こすこともあります。
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シャー・ペイの子犬の生体価格は、50万円ほど(2022年5月現在)。シャー・ペイを迎える方法、費用について具体的に紹介していきます。
ペットショップでシャー・ペイを取り扱っているケースはほとんどありません。迎え入れる際は、ブリーダーを利用するとよいでしょう。
ブリーダーは、全国各地に存在する犬の繁殖を専門とする人のこと。犬種の知識、飼育経験が豊富なブリーダーから犬を譲り受けることができるため、事前に飼い方、注意点を教わることができます。
犬の飼い方がわからないペット初心者でも安心して迎え入れることができるでしょう。また、実際に親犬の様子を事前に確認することができるため、成犬時のサイズ感などを予測する助けになります。
劣悪な環境で繁殖している業者もいるため、飼育環境などの質問にもきちんと答えてくれる、信頼できるブリーダーを見つけましょう。
里親制度は、保護団体、保健所など引き取り手のいない犬、飼い主さんがいない犬を迎え入れて里親になる制度です。ペットショップ、ブリーダーと比べると費用が掛からないメリットがあります。
ただし、里親募集によっては譲渡、引取後も必要に応じて飼育状況の確認しなければならないケースもあります。また、シャー・ペイは希少種であるため、出会うには運やタイミングが必要です。
犬を迎え入れるまでに、準備しておきたいものは、以下の通りです。約4~5万円ほどをみておくとよいでしょう。
【寝床の準備】
・ペットサークル
・クレート(ペット用キャリー)
・ベッド
【日用品の準備】
・ドッグフード
・フードボウル
・水飲みボウル
【トイレ用品の準備】
・トイレトレー
・トイレシーツ
【ケア用品】
・ブラシ
・爪切り
・ペット用シャンプー
・歯磨きグッズ
【その他】
・首輪
・リード
事前に飼育環境を整えておく必要もあります。危険なもの、噛まれては困るものは片づけるなどしておきましょう。
夏場はクーラーなど空調設備のできるものも備えておくと安全です。余裕があれば、犬が遊べるおもちゃなども買っておきましょう。
【関連リンク】
犬を迎える前に準備しておきたいもの
犬を迎える前に整えておきたい室内のポイント
犬をペットとして迎える時の心構え
役所への登録料やワクチン接種・健康診断の費用として2万~3万円ほどがかかります。
大型犬の平均的な飼育費用は、1カ月あたり2万~4万円になります。
フードやおやつといった食費。価格はピンキリですが、平均すると1カ月で5,000~1万2,000円ほどかかります。
トイレシーツなどの日用品が1カ月で5,000~1万4,000円前後。
シャンプーなどのお手入れをトリミングサロンにお願いする場合は、大型犬の場合1回1万円以上かかるでしょう。
フィラリアやノミ・ダニの予防薬なども含め、健康であっても医療費として年間で4~6万円ほど必要でしょう。1カ月にすると4,000円程度です。
初めて犬を飼う方の盲点となるのが、ペットの医療事情です。ペットには公的な健康保険がなく、治療費は全額自己負担となります。自由診療のため病院によって料金が異なる点が、人とは違います。
子犬は、骨折や異物誤飲が多いです。
ただし、どちらも場合によっては20万円を越えるケースもあるため、住環境を整えるなど事前の予防が大切です。
お迎えしたばかりの頃は環境変化によるストレスで軟便や風邪にもなりやすいので体調の変化にも気を付けてあげましょう。
*ペット&ファミリー損保調べ(2023年4月~2024年3月 保険金支払い実績をもとに算出)
ペットの年齢によって保険料は変わりますが、大型犬の1ヶ月の保険料は2,300~5,900円*ほど。0~3歳の間に加入するケースが多いです。
ペット保険は、健康でないと加入できず、加入可能年齢が「満7歳まで」のように制限のある場合がほとんど。人と同じように犬も年齢が上がれば病気のリスクも上がるため、早めに加入したいものです。
ペット保険はたくさんの種類があり、どれも同じように見えるかもしれませんが、各保険商品によって補償内容は大きく異なります。
保険料だけではなく、以下の補償内容をよく理解し、最もご自身に適した保険を選ぶようにしましょう。
*参照:慢性疾患にも、高額治療にも対応したペット保険!ペット&ファミリー損害保険「げんきナンバーわんスリム プラン50」
*犬の加入タイプ(小型犬・中型犬・大型犬・特大犬)は、ご加入時・ご継続時の体重で決まります。ただし、1歳未満の幼犬の場合「犬種分類表」を参考に、1歳時のおおよその予測体重で加入タイプが決まります。
家族になる前からたくさんのことを学ぶことで、快適な暮らしをスタートすることができます。お迎えする犬の特徴や費用などをよく知ってよきパートナーとして信頼関係を築いていってくださいね。