「ジェントル・ジャイアント」と呼ばれるアイリッシュ・ウルフハウンド。誰にでも優しくフレンドリーなこの特大犬(超大型犬)は、長い歴史の中で、アイルランドの人々のパートナーとして共に歩んできました。時折見せる気品あふれる表情も、この犬種の魅力のひとつです。そんなアイリッシュ・ウルフハウンドの特徴や飼い方を詳しく解説します。
もくじ
心優しく誰にでもフレンドリーに振る舞うアイリッシュ・ウルフハウンド。長年、人のパートナーとして愛されているこの犬種の特徴をみてみましょう。
アイリッシュ・ウルフハウンドは、世界で最も大きな犬として知られています。「ジェントル・ジャイアント」と呼ばれるほど性格は穏やかで、誰に対しても落ち着いた紳士的な態度で付き合ってくれます。
家族の一員としての役割を自覚しているかのような、人のパートナーという言葉がぴったりの犬種です。
体高は71~86cm。体重も40.5~54.5kg以上。体格はオスの方がより大きくなります。特大犬(超大型犬)なので立ち上がると2メートルにもなるほど大きく、人の身長を優に超えます。4か月の子犬でも、体高30センチを超える中型犬のような大きさになります。
※体高…四つ足をついて立ったときの、地面から背中までの高さ
アイリッシュ・ウルフハウンドの毛色は、グレー、地の色に黒や茶色などが入り混じるブリンドル、レッド、ブラック、ホワイト、金色がかった地の色に黒がわずかにかかるフォーンが主なカラーです。
その他の色も認められており、バリエーションはさまざま。日本では頭数が少なくカラーの比較ができませんが、好みの分かれるところでもあります。
“家庭では小羊のようで、獲物を追っている時にはライオンのよう”と称されるアイリッシュ・ウルフハウンド。飼い主さんには従順で優しく、家庭内では穏やかでとても家族思いです。
多頭飼いでも、一緒に暮らす他の犬にもフレンドリーに付き合ってくれる優しさを持ち合わせています。体格は大きいですが、飼いやすい犬といえるでしょう。
アイリッシュ・ウルフハウンドは、紀元前1500年代にヨーロッパからアイルランドに渡ってきた獣猟犬であるハウンドドッグです。
スコットランドの猟犬「ディアハウンド」の基礎となった中短毛の粗毛であるラフコートの犬が、15世紀にはイギリスやスペイン、フランス、スウェーデンなど各国に送られて広まっていきました。それがアイリッシュ・ウルフハウンドの原点です。
国内ではオオカミの群れから家畜を守るために農家が獣猟犬を飼育し、頭数を増やしていきます。しかし、次第に国内に脅威となるオオカミが減り、また国内が飢饉に見舞われたことで、獣猟犬の頭数も減少傾向となっていきました。
一時的に絶滅寸前にまで追い込まれますが、19世紀に再度、このハウンドドッグの頭数を増やす動きが、愛好家により高まりました。
その後、ディアハウンドやボルゾイ、グレート・デーンなどを交配させて、アイリッシュ・ウルフハウンドを安定して繁殖させることに成功します。その後アイリッシュケネルクラブが設立され、アイリッシュ・ウルフハウンドのクラスが設けられ、登録されることになりました。
大きな体のアイリッシュ・ウルフハウンドは、その特徴があることで日常生活でも注意したい点があります。
特大犬(超大型犬)は子犬の頃から排泄物が多く、トイレのしつけができないとお世話が大変になることも。トイレのしつけを優先し、なるべく早く教えてあげましょう。頭がよく落ち着いているので、子犬の頃から物覚えは良い犬種です。
無駄吠えはあまりないですが、力が強いので、動きを制御できないとコントロールが難しくなります。しつけは行動をコントロールするためのトレーニングを重視し、命令どおりに行動できるよう教えましょう。
アイリッシュ・ウルフハウンドは特大犬(超大型犬)ということもあり、運動量が多い犬種です。運動時間は、1日2回、1回1時間以上を確保しましょう。
獣猟犬だった歴史から、走る運動も入れるとなお良く、ストレスも解消されます。狩猟本能を満たすように、定期的にドッグランなどで思い切り走らせると良いでしょう。
アイリッシュ・ウルフハウンドの平均寿命は6歳~10歳です。10歳でも長いといわれおり、特大犬(超大型犬)の中でも寿命が短い犬種です。
ペットとして迎え入れるなら、アイリッシュ・ウルフハウンドのかかりやすい病気などはチェックしておきたいところ。注意しておきたい病気について紹介します。
副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの分泌が低下する病気です。アジソン病とも呼ばれます。発症は若齢期に多く、平均は4歳。特にメスに多いと言われています。
股関節形成不全は股関節がうまく発育せず、関節に異常を起こす病気です。足を引きずって歩く、腰を左右に振って歩く、つまずく、運動を嫌がるなどの様子が見られたら、早めに獣医師に相談しましょう。
大型犬に多い病気で、大量のガスによって胃が拡張したり、ねじれたりする病気です。症状がひどければ胃の周りの血管を圧迫するため、重篤な症状を引き起こします。
落ち着きがなくなった、吐こうとしても吐けない、大量のよだれなどの症状があらわれたら胃拡張・胃捻転を疑ってみましょう。またこの病気は緊急を要することがあるため、怪しいと思ったらすぐに動物病院へ連絡してください。
発症原因は不明で、呼吸困難や咳といった症状から始まり、ひどくなれば意識を失い突然死に至ることもあります。元気が無くつらそうにしている、食欲や体重の低下、運動を嫌がるなど活動量の低下、呼吸困難などが見られたら早めの受診をおすすめします。
アイリッシュ・ウルフハウンドの生体価格は35万円前後(2024年7月現在)ともいわれていますが、毛色や血統の良し悪しで変動するでしょう。日本での飼育頭数は非常に少ないので、ブリーダーに尋ねるとともに、根気よく探す必要があるでしょう。
アイリッシュ・ウルフハウンドを家に迎える方法、費用について具体的に紹介していきます。
ペットショップでアイリッシュ・ウルフハウンドを取り扱っているケースはあまりありません。迎え入れる際は、ブリーダーを利用することになるでしょう。
ブリーダーは、全国各地に存在する犬の繁殖を専門とする人のこと。犬種の知識、飼育経験が豊富なブリーダーから犬を譲り受けることができるため、事前に飼い方、注意点を教わることができます。犬の飼い方がわからないペット初心者でも安心して迎え入れることができるでしょう。
また、実際に親犬の様子を事前に確認することができるため、成犬時のサイズ感などを予測する助けになります。
国内のブリーダーも少ない現状がありますが、根気よく探してみてください。飼育環境などの質問にもきちんと答えてくれる、信頼できるブリーダーを見つけましょう。
里親制度は、保護団体、保健所など引き取り手のいない犬、飼い主さんがいない犬を迎え入れて里親になる制度です。ペットショップ、ブリーダーと比べると費用が掛からないメリットがあります。
ただし、里親募集によっては譲渡、引取後も必要に応じて飼育状況の確認しなければならないケースもあります。また、アイリッシュ・ウルフハウンドは数が少ない犬種なので出会うには運やタイミングが必要です。
犬を迎え入れるまでに、準備しておきたいものは、以下の通りです。約4~5万円ほどをみておくとよいでしょう。
【寝床の準備】
・ペットサークル
・クレート(ペット用キャリー)
・ベッド
【日用品の準備】
・ドッグフード
・フードボウル
・水飲みボウル
【トイレ用品の準備】
・トイレトレー
・トイレシーツ
【ケア用品】
・ブラシ
・爪切り
・ペット用シャンプー
・歯磨きグッズ
【その他】
・首輪
・リード
事前に飼育環境を整えておく必要もあります。危険なもの、噛まれては困るものは片づけるなどしておきましょう。
夏場はクーラーなど空調設備のできるものも備えておくと安全です。余裕があれば、犬が遊べるおもちゃなども買っておきましょう。
【関連リンク】
犬を迎える前に準備しておきたいもの
犬を迎える前に整えておきたい室内のポイント
犬をペットとして迎える時の心構え
役所への登録料やワクチン接種・健康診断の費用として2万~3万円ほどがかかります。
特大犬(超大型犬)の平均的な飼育費用は、1カ月あたり3万~5万円になります。
フードやおやつといった食費。価格はピンキリですが、平均すると1カ月で1万~2万円ほどかかります。
トイレシーツなどの日用品が1カ月で5,000~1万4,000円前後。
シャンプーなどのお手入れをトリミングサロンにお願いする場合は、特大犬(超大型犬)の場合1回1万円以上かかるでしょう。
フィラリアやノミ・ダニの予防薬なども含め、健康であっても医療費として年間で4~6万円ほど必要でしょう。1カ月にすると4,000円程度です。
初めて犬を飼う方の盲点となるのが、ペットの医療事情です。ペットには公的な健康保険がなく、治療費は全額自己負担となります。自由診療のため病院によって料金が異なる点が、人とは違います。
子犬は、骨折や異物誤飲が多いです。
ただし、どちらも場合によっては20万円を越えるケースもあるため、住環境を整えるなど事前の予防が大切です。
お迎えしたばかりの頃は環境変化によるストレスで軟便や風邪にもなりやすいので体調の変化にも気を付けてあげましょう。
*ペット&ファミリー損保調べ(2023年4月~2024年3月 保険金支払い実績をもとに算出)
ペットの年齢によって保険料は変わりますが、特大犬(超大型犬)の1ヶ月の保険料は3,000~9,100円*ほど。0~3歳の間に加入するケースが多いです。
ペット保険は、健康でないと加入できず、加入可能年齢が「満7歳まで」のように制限のある場合がほとんど。人と同じように犬も年齢が上がれば病気のリスクも上がるため、早めに加入したいものです。
ペット保険はたくさんの種類があり、どれも同じように見えるかもしれませんが、各保険商品によって補償内容は大きく異なります。
保険料だけではなく、以下の補償内容をよく理解し、最もご自身に適した保険を選ぶようにしましょう。
*参照:慢性疾患にも、高額治療にも対応したペット保険!ペット&ファミリー損害保険「げんきナンバーわんスリム プラン50」
*犬の加入タイプ(小型犬・中型犬・大型犬・特大犬)は、ご加入時・ご継続時の体重で決まります。ただし、1歳未満の幼犬の場合「犬種分類表」を参考に、1歳時のおおよその予測体重で加入タイプが決まります。
家族になる前からたくさんのことを学ぶことで、快適な暮らしをスタートすることができます。お迎えする犬の特徴や費用などをよく知ってよきパートナーとして信頼関係を築いていってくださいね。