【獣医師監修】[最新情報]犬猫のマイクロチップ義務化について知っておきたい基礎知識
2022.05.31 作成

【獣医師監修】[最新情報]犬猫のマイクロチップ義務化について知っておきたい基礎知識

獣医師

東 一平

東 一平

2022年6月1日からブリーダーやペットショップなどで販売される犬や猫には、マイクロチップの装着が義務化されました。それにともない、現在犬や猫を飼育されている飼い主さんにも装着の努力義務が課せられます。今回は、マイクロチップとはどのようなものか、どうやって装着するのかなど、犬や猫の飼い主さんが知っておくべき情報を解説します。

もくじ

    マイクロチップとは?

    【獣医師監修】[最新情報]犬猫のマイクロチップ義務化について知っておきたい基礎知識
    (LightField Studios/shutterstock)

    マイクロチップとは、ICとアンテナを内蔵した直径2mm、長さ1cmほどの電子標識器具のこと。内部に記録された数値と生体情報を紐づけることができ、犬や猫の皮膚の内部にマイクロチップを設置すれば、外部から専用の装置を使って生体情報を読み取れるようになります。

    犬や猫に装着することで、どこの誰に飼育されている、どんな子なのかがわかるようになり、迷子になっても飼い主さんのもとへ戻す助けとなります。

    マイクロチップを装着しても体に影響はない

    マイクロチップを装着しても体に影響はない
    (Todorean-Gabriel/shutterstock)

    マイクロチップの外郭は生体に適合したガラスで作られており、生体反応、炎症などを起こさないようになっています。皮下脂肪に埋め込まれるため、装着後に犬や猫が気にすることもほとんどないでしょう。

    まれに脂肪の中をマイクロチップが移動することもありますが、心配ありません。レントゲンやCT検査、MRI検査もできるように考えられており安全です。

    MRIの場合、機種やマイクロチップの位置によってはマイクロチップを摘出後に撮影をおこなうケースもあります。

    マイクロチップの情報を読み取る際も、専用の機械をかざしてスキャンするため犬や猫の体を傷つけず、痛みをともなうこともないため安心して装着できます。

     

    マイクロチップの装着が義務化されると飼い主さんは何をしなければいけないの?

    マイクロチップの装着が義務化されると飼い主さんは何をしなければいけないの?
    (Veera/shutterstock)

    マイクロチップの装着が義務化されるのは、ペットショップやブリーダーが6月1日以降に販売する犬や猫のみ。

    もともとマイクロチップは、民間事業者が個別にマイクロチップの登録サービスを提供していました。しかし、2022年6月1日以降に販売される犬猫は、環境省による「犬と猫のマイクロチップ情報登録環境省データベース」に登録され、飼い主さんの元に迎え入れられることになります。

    また、現在すでに家庭で飼育されている犬や猫、保護犬・保護猫などのマイクロチップの装着は、努力義務となります。

    努力義務とは、「マイクロチップの装着は必須ではないが、装着するように努力してください」というもので、飼い主さんの判断で決められます。また、マイクロチップを装着する場合は、飼い主さんの情報登録が義務となります。

    ここでは、環境省の「犬と猫のマイクロチップ情報登録」について紹介します。

    マイクロチップを装着した犬猫を譲り受けたら「所有者の変更登録の義務」がある

    マイクロチップを装着した犬や猫を、ブリーダーやペットショップ、知人や保護団体から譲り受けた場合、新しい飼い主さんはマイクロチップ情報の変更登録をする義務があります。

    結婚や引っ越し、ペットが亡くなった場合には変更の届け出が必要

    結婚や引っ越しなどで飼い主さんの氏名・住所・電話番号が変わった場合や、愛犬・愛猫が亡くなった場合にも変更の届け出をする必要があります。

    オンラインまたは書面で飼い主さんの情報が登録・変更ができる

    飼い主さんの情報登録や登録証明書の発行は、オンラインまたは書面でできるようになっています。オンラインか書面かで、手数料が次のように異なります。

    【オンラインの場合】

    • 登録・変更登録手数料:300円
    • 登録証明書の再交付の手数料:200円

    【書面の場合】

    • 登録・変更登録手数料: 1,000円
    • 登録証明書の再交付の手数料:700円

    環境省のデータベースへの登録内容

    環境省の「犬と猫のマイクロチップ情報登録」では下記内容を登録する必要があります。

    • 氏名
    • 住所
    • 電話番号
    • 犬や猫の所在地
    • マイクロチップ識別番号 など

    民間登録団体のマイクロチップを装着している場合

    既に民間団体のマイクロチップを装着している場合は、2022年5月31日までに移行手続きを行うと、無料で環境省のデータベースに登録可能です。(2022年6月30日までに延長されました。(2022年6月9日時点))

    移行登録可能な民間団体は以下の通りです。

    • Fam
    • ジャパンケネルクラブ
    • マイクロチップ東海
    • 日本マイクロチップ普及協会
    • 日本獣医師会(AIPO)

    犬と猫のマイクロチップ情報登録「環境省データベースへの移行登録受付サイト」

    マイクロチップはどうやって装着するの?

    マイクロチップはどうやって装着するの?
    (LightField Studios/shutterstock)

    マイクロチップ専用の少し太めの針を、背中の肩甲骨の間に挿入してマイクロチップを装着します。犬や猫の場合は皮膚の痛覚がそこまで発達していないといわれているため、激痛を感じることはないでしょう。

    皮膚に局所麻酔をかけてマイクロチップを装着することもできますが、一瞬だけ我慢してもらって注射することがほとんど。場合によっては一針縫うこともありますが、ほとんどの子は受け入れてくれています。

    避妊手術や歯科処置など、鎮静をかける際に装着することもできるため、タイミングを検討してみてもよいでしょう。

    装着費用は動物病院によって異なる

    現在すでに飼育されている犬猫や、譲渡された保護犬・保護猫などは、動物病院でマイクロチップを装着できます。病院によって処置や手法が異なったり、値段も変わったりする可能性があるため、かかりつけの動物病院に相談してみてください。

    お住いの自治体によっては補助金がある場合もあるため、装着を検討する際は調べてみるとよいでしょう。

    ブリーダーやペットショップから犬猫を迎え入れる場合、2022年6月1日以降はマイクロチップが装着された状態で飼い主さんのもとへとやってきます(ブリーダーやペットショップが2022年6月1日より前に犬猫を入手していた場合は、マイクロチップが装着されていない場合もあります)。

     

    室内で飼う猫や犬にもマイクロチップは必要?

    室内で飼う猫や犬にもマイクロチップは必要?
    (LightField Studios/shutterstock)

    マイクロチップを装着するメリットとして、次の点が挙げられます。マイクロチップを装着していない飼い主さんは、「室内で飼育しているから大丈夫」と考えるのではなく、万が一のためにマイクロチップの装着を検討してみるとよいでしょう。

    災害時や脱走時に愛猫・愛犬を見つけやすい

    阪神淡路大震災の際は、多くの動物が行方不明になって帰ってこなかったと聞きます。しかし、マイクロチップを装着しておけば、災害時でも多くの動物が飼い主さんの元へと帰れるようになるでしょう。

    脱走した場合も、無事に保護されればスムーズに飼い主さんのもとへお返しできるようになります。

    マイクロチップなら確実に身元を確かめられる

    首輪に飼い主さんの情報をつけておく方法もありますが、首輪などは外れる可能性もあります。対して、マイクロチップは体内に装着するため無くすことがありません。

    マイクロチップ装着によって、「無事に保護されたにもかかわらず、身元を確かめるものがないため飼い主さんを発見できない」といったこともなくなるでしょう。

    最後に

    最後に
    (PHOTOCREO Michal Bednarek/shutterstock)

    現在、マイクロチップに関する仕組み作りが行われている途中です。常に最新の情報を知っておきたい場合は、動物愛護管理法を参照しましょう。環境省自然環境局総務課動物愛護管理室のホームページに、マイクロチップについて詳しく記載があります。

    マイクロチップの装着によって、悪質なブリーダーやペットショップ、動物の遺棄などを摘発したり、行方不明の動物を飼い主さんへ速やかに返還したりできると予測されています。動物にとっても飼い主さんにとっても、マイクロチップ装着で得られるメリットは大きいでしょう。

    特に、猫がするっと足元を抜けて外に走り出してしまった時の恐怖は、自分自身が猫を飼育しているのでよく知っています。そういったときにひとつのお守りとして、マイクロチップは役に立ってくれると信じています。

    犬や猫を飼う皆さんに、一度マイクロチップについて知って頂けたら幸いです。

    参照:環境省自然環境局総務課動物愛護管理室 動物の愛護と適切な管理「犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A」(2022/03/02閲覧)

    著者・監修者

    東 一平

    獣医師

    東 一平

    プロフィール詳細

    所属 株式会社アイエス 代表取締役
    アイエス動物病院(千葉県市川市) 院長

    日本小動物歯科研究会
    日本獣医皮膚科学会
    比較眼科学会
    日本獣医麻酔外科学会

    略歴 1978年 千葉県に生まれる
    1997年 麻布大学 獣医学部獣医学科入学
    2003年 獣医師国家資格取得
    2003年~2004年 アイエス動物病院に勤務
    2004年~2005年 東京都内の動物病院に勤務
    2005年 千葉県市川市のアイエス動物病院の院長に就任

    資格 獣医師免許

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