脚がスラリと長い姿が特徴的なグレーハウンド。その美しさは西洋絵画に描かれていたほどです。そんなグレーハウンドを迎えるにはどのように準備し、しつけや運動をさせればよいのでしょうか。グレーハウンドの上手な飼い方や過ごし方、気を付ける点などを、その歴史と合わせて詳しく解説します。
もくじ
美しくしなやかなボディのグレーハウンド。特徴や犬種の歴史をみていきましょう。
「その速さは光のごとく、優雅さは燕のごとく、賢さはソロモン王のようだ」と形容されてきたグレーハウンド。その言葉のとおり、家庭犬になっても賢く、よく人間に従います。
ドイツでは「風の犬」と呼ばれ、走り出すととにかく速く、そのスピードは野生動物を上回るといわれるほど。最高時速70㎞と犬の中でも最速を誇る犬種です。
グレーハウンドの体高は、オスでは71~76㎝、メスでは68~71㎝。メスの方が一回り小さい体型です。体重は27~32㎏で、オスとメスに大きな差はありません。しかし、ドッグショーに出る「ショータイプ」の犬は、性別に関わらずやや大きい傾向があります。
※体高…四つ足をついて立ったときの、地面から背中までの高さ
毛色は、ホワイト、ブラック、レッド、ブルー、淡い黄土色に黒毛が混じるフォーン、フォーンよりも色の薄いファローがあります。ほかにもホワイト・ブラック・レッドが混じるブリンドル(ベースカラーに差し色が入るカラー)のバリエーションが多くあります。
レッドホワイト、ブラックホワイトなど、これらの色にホワイトが入るパターンがあり、個性豊かな毛色が楽しめます。
グレーハウンドは大変賢く、昔から聡明な犬だといわれています。普段は優しく穏やかで、とにかく家族思い。興奮したり、急に気が変わったりするような気分のムラはあまりなく、いつも落ち着いているのが大きな特徴です。
古代エジプトの壁画にグレーハウンドと似た犬が描かれていたことから、グレーハウンドの歴史はかなり長く、一説によると中東方面に起原があるといわれています。
ほかのハウンド犬の原型とされ、野ウサギ猟をおこなっていたコーシングハウンドからレース用のグレーハウンドが作出され、現在のかたちとなり広まりました。
流線型でスピード重視の体型をしており、チーターと争うほどの速度を出すことができます。
続いて、日常生活での気を付けたいポイントを解説します。
グレーハウンドには行動を抑制するしつけが特に必要です。この犬種には狩猟やレースの歴史があるため、動くものを追いかけたくなる気持ちが強く働きます。
この本能を抑えるよう、小犬の頃から動きをコントロールする訓練をしていきましょう。日常のしつけは問題なく、とても賢い犬種なので何でもすぐに覚えてくれます。
運動が好きなグレーハウンドは、体力が想像以上にある犬種です。運動は1日2回、1回1時間以上を確保しましょう。長い距離を歩くだけでなく、ドックラン等でしっかりと走らせる時間も作ってあげます。
グレーハウンド特有の追跡本能を満たすボール遊びなどをさせると、ストレス発散になり満足感が得られるでしょう。
家の中では興奮して騒いだりせず、落ち着いて過ごせます。しかし、生活スペースが狭いとストレスを溜め込んでしまい、散歩中のコントロールがより難しくなることがあります。
子犬の頃から十分なスペースを用意し、誤飲や怪我の原因となるものを取り除くなどして、環境を整えましょう。
シングルコートで短毛なグレーハウンドのお手入れは比較的簡単。被毛が薄いため、濡れたタオルで拭くだけでも汚れは落とせます。しかし、被毛の生え変わりが早いため、シングルコートでも抜け毛が多いと感じられるでしょう。
短い毛が洋服やファブリックなどに刺さると掃除が面倒になることも。ソファやクッションはツルツルした毛の刺さりにくいものに変えておくのも手です。
被毛の汚れだけでなく、外で走り回った時に入り込む耳や爪のゴミもまめにとってあげたいところ。皮膚の薄いデリケートな部分はまめにチェックし、定期的な耳のお手入れも忘れずにおこないましょう。
グレーハウンドの平均寿命は10歳~13歳。大型犬の中では平均的です。
グレーハウンドの注意しておきたい病気について紹介します。
脚が細いグレーハウンドは、特に関節に負担がかかりやすく、骨折や膝蓋骨脱臼(パテラ)を起こすことも。ジャンプ力が強く、すぐに止まれないほど速く走るため、怪我を起こしやすく骨折のリスクをはらんでいます。
高い位置からジャンプしたり、ぶつかりやすい空間は避けましょう。脚に負担をかけないよう、肥満にも注意が必要です。
皮膚が弱く皮膚炎を起こしやすい犬種です。普段からかゆみがないか、脱毛がないかを観察しましょう。かゆみがある場合はダニやノミなどの外部寄生虫の可能性もありますが、グレーハウンドは特にアトピー性皮膚炎の可能性が高いです。
他にもマラセチア菌による皮膚炎を起こす場合もあります。発疹、皮膚の赤み、フケの量などを合わせて観察し、早期発見に努めましょう。
グレーハウンドの生体価格は15~40万円ほど。(2024年7月時点)犬の値段は性別、血統、チャンピオン犬かどうか、購入方法によって変動します。
グレーハウンドを迎える方法ついて具体的に紹介していきます。
グレーハウンドのようにペットショップで少ない犬種の場合は、ブリーダーを探すことで見つかる可能性があります。
ブリーダーは、全国各地に存在する犬の繁殖を専門とする人のこと。犬種の知識、飼育経験が豊富なブリーダーから犬を譲り受けることができるため、事前に飼い方、注意点を教わることができます。
犬の飼い方がわからないペット初心者でも安心して迎え入れることができるでしょう。
また、実際に親犬の様子を事前に確認することができるため、成犬時のサイズ感などを予測する助けになります。飼育環境などの質問にもきちんと答えてくれる、信頼できるブリーダーを見つけましょう。
ただし、グレーハウンドのブリーダーも少ないため、根気強く探してみてください。
里親制度は、保護団体、保健所など引き取り手のいない犬、飼い主さんがいない犬を迎え入れて里親になる制度です。ペットショップ、ブリーダーと比べると費用が掛からないメリットがあります。
ただし、里親募集によっては譲渡、引取後も必要に応じて飼育状況の確認しなければならないケースもあります。また、グレーハウンドは数が少ないため、出会うには運やタイミングが必要です。
犬を迎え入れるまでに、準備しておきたいものは、以下の通りです。約4~5万円ほどをみておくとよいでしょう。
【寝床の準備】
・ペットサークル
・クレート(ペット用キャリー)
・ベッド
【日用品の準備】
・ドッグフード
・フードボウル
・水飲みボウル
【トイレ用品の準備】
・トイレトレー
・トイレシーツ
【ケア用品】
・ブラシ
・爪切り
・ペット用シャンプー
・歯磨きグッズ
【その他】
・首輪
・リード
事前に飼育環境を整えておく必要もあります。危険なもの、噛まれては困るものは片づけるなどしておきましょう。
夏場はクーラーなど空調設備のできるものも備えておくと安全です。余裕があれば、犬が遊べるおもちゃなども買っておきましょう。
【関連リンク】
犬を迎える前に準備しておきたいもの
犬を迎える前に整えておきたい室内のポイント
犬をペットとして迎える時の心構え
役所への登録料やワクチン接種・健康診断の費用として2万~3万円ほどがかかります。
大型犬の平均的な飼育費用は、1カ月あたり2万~4万円になります。
フードやおやつといった食費。価格はピンキリですが、平均すると1カ月で5,000~1万2,000円ほどかかります。
トイレシーツなどの日用品が1カ月で5,000~1万4,000円前後。
シャンプーなどのお手入れをトリミングサロンにお願いする場合は、大型犬の場合1回1万円以上かかるでしょう。
フィラリアやノミ・ダニの予防薬なども含め、健康であっても医療費として年間で4~6万円ほど必要でしょう。1カ月にすると4,000円程度です。
初めて犬を飼う方の盲点となるのが、ペットの医療事情です。ペットには公的な健康保険がなく、治療費は全額自己負担となります。自由診療のため病院によって料金が異なる点が、人とは違います。
子犬は、骨折や異物誤飲が多いです。
ただし、どちらも場合によっては20万円を越えるケースもあるため、住環境を整えるなど事前の予防が大切です。
お迎えしたばかりの頃は環境変化によるストレスで軟便や風邪にもなりやすいので体調の変化にも気を付けてあげましょう。
*ペット&ファミリー損保調べ(2023年4月~2024年3月 保険金支払い実績をもとに算出)
ペットの年齢によって保険料は変わりますが、大型犬の1ヶ月の保険料は2,300~5,900円*ほど。0~3歳の間に加入するケースが多いです。
ペット保険は、健康でないと加入できず、加入可能年齢が「満7歳まで」のように制限のある場合がほとんど。人と同じように犬も年齢が上がれば病気のリスクも上がるため、早めに加入したいものです。
ペット保険はたくさんの種類があり、どれも同じように見えるかもしれませんが、各保険商品によって補償内容は大きく異なります。
保険料だけではなく、以下の補償内容をよく理解し、最もご自身に適した保険を選ぶようにしましょう。
*参照:慢性疾患にも、高額治療にも対応したペット保険!ペット&ファミリー損害保険「げんきナンバーわんスリム プラン50」
*犬の加入タイプ(小型犬・中型犬・大型犬・特大犬)は、ご加入時・ご継続時の体重で決まります。ただし、1歳未満の幼犬の場合「犬種分類表」を参考に、1歳時のおおよその予測体重で加入タイプが決まります。
家族になる前からたくさんのことを学ぶことで、快適な暮らしをスタートすることができます。お迎えする犬の特徴や費用などをよく知ってよきパートナーとして信頼関係を築いていってくださいね。