一口に犬のフケといっても、「カサカサしたもの」「ベトベトしたもの」「大きなもの、細かいもの」「かゆみがあるもの、ないもの」などさまざまです。また、体のどこにフケが発生するかにも違いがあります。もしかすると、そのフケは皮膚病のサインかもしれません。今回は犬のフケの原因や病気について解説し、対策や予防法を紹介したいと思います。
もくじ
フケは皮膚のターンオーバー(角化)で生じるものであり、正常な皮膚でも見られるものです。
皮膚の最も外側の部分を「表皮」といいます。表皮は何層にもなっており、基底層と呼ばれる一番下の層で作られた細胞がどんどん上の層に押し上げられ、角質層となり最終的にフケとして剥がれ落ちます。
この一連の流れをターンオーバーといい、犬のターンオーバーは通常21日かかるといわれています。皮膚に刺激があったり皮膚病になったりすると、ターンオーバーが短縮され、大量にフケが生じることがあります。
人の表皮は0.2mm程度の厚みがあります。対して、被毛が発達している犬は、表皮を厚くして刺激から守る必要がないため、人の1/3程度の厚みしかありません。
しかし、表皮が薄い分、人よりも犬の方が刺激や乾燥に弱いため適切にケアしてあげましょう。
膿皮症は皮膚の常在菌であるブドウ球菌が主な原因となる皮膚の感染症です。膿皮症では、表皮小環(しょうかん)というリング状のフケが出ることが特徴です。
マラセチアも皮膚に常在する酵母菌です。マラセチアは皮脂を栄養源とするため、犬の皮膚表面からの皮脂の分泌が盛んになると増殖しやすくなります。ベトベトして臭いフケが出てくる場合は、マラセチア皮膚炎の可能性があります。
犬疥癬は、犬疥癬虫(イヌヒゼンダニ)が感染して生じる皮膚疾患です。耳のフチ、ひじ、かかと、などにとても激しいかゆみと、フケや赤みが出ることが特徴です。
ツメダニ症はツメダニが寄生することによる感染症です。ツメダニ症の特徴といえば、なんといっても背中に大量のフケが生じることです。床に落ちたツメダニがフケとともに動くことから「歩くフケ」とも呼ばれています。
かゆみは軽度から重度までさまざまですが、人への感染もみられるため注意が必要です。
先天的な要因で角化亢進(ターンオーバーが短縮しフケが多くなる)や皮脂の過剰が発生する皮膚疾患です。
本態性脂漏症は、先天的に皮膚が厚くなる疾患ですが、必ずしも生まれた時から発症するわけではなく、一般的に若齢で発症し、加齢とともに悪化する傾向があります。乾いたフケが特徴の乾性脂漏症と、湿ったベタつくフケが特徴の油性脂漏症があります。
脂腺炎は、脂腺(しせん)が炎症により破壊され角化(ターンオーバー)の異常を発症する疾患です。背中に脱毛や固着性のフケが出るのが特徴です。
魚鱗癬は遺伝的に角化(ターンオーバー)の異常が起きる疾患です。元々人の疾患であり、大量のフケが魚の鱗のように見えることから魚鱗癬と名付けられました。その名の通り全身に大量のフケが見られるのが特徴です。
高齢の犬で、全身の皮膚の赤み、フケ、鼻や肉球の色素が抜けてくるなどの症状があれば、皮膚リンパ腫の可能性があるかもしれません。
皮膚リンパ腫は、皮膚にできるガンの一種で、中〜高齢の犬で発生が多く、発症の平均年齢は11歳です。予後が悪い疾患なので、早めに動物病院で診断を受けることが大事です。
冬になり乾燥するシーズンになるとフケが出やすくなることもあります。暖房器具などの近くにいると乾燥がひどくなることがあるため注意が必要です。
シャンプー後にフケが出る場合は、シャンプーのやり方やシャンプー剤に問題がある可能性があります。犬の皮膚は人間より薄く、ゴシゴシ洗いは皮膚へのダメージになるため避けましょう。
ドライヤーの熱を当てすぎるのも乾燥の原因となります。フケや乾燥が気になる場合は、なるべくタオルドライで乾かしましょう。
健康な皮膚と被毛の維持のためにはタンパク質が必要です。したがって、皮膚の健康維持に必要なタンパク量を摂取できていないとフケの原因になることもあります。
タンパク質以外にも脂肪酸やビタミン、亜鉛などは皮膚の健康維持に必要なので、総合栄養食やAAFCOの基準にのっとった適切なフードを与えるようにしましょう。
ストレスでフケが出る場合もあります。病院の診察台の上に乗るだけで、そのストレスからフケが目立つようになる子もいます。また、ストレスは免疫力を低下させるため皮膚病の悪化因子になることもあります。
脱脂作用が強いシャンプーは、脂漏症などベタつく皮膚には効果的ですが、通常の皮膚に対しては皮膚に必要な脂を落しすぎることもあります。
シャンプー後にフケが多い場合は、保湿作用があるシャンプーや低刺激シャンプーの使用がよいかもしれません。どのシャンプーが適切かは皮膚の状態により変わるため、動物病院で相談してみてください。
また、シャンプーの頻度が多すぎても同じことがいえますので、獣医師と相談しながらシャンプーの頻度を決めましょう。
保湿はフケの予防だけではなく、皮膚のかゆみを押さえたり、乾燥を防いだりできます。しかし、人によく使われているワセリンやヘパリン類似物質入りのクリームなどは、べたつきが多く、毛に絡むなど犬には使いづらいです。
シャンプー後にかけ流すタイプや、泡で出てすり込むタイプの保湿剤がおすすめです。
犬のフケにはさまざまな原因があります。自宅でできるケアもありますが、病気が原因の場合もありますので、気になる場合はかかりつけの動物病院を受診しましょう。