賢さと高い運動能力で、世界中で活躍するジャーマン・シェパードは、人のパートナーとして多くの仕事をしてくれる大型犬です。厳しい表情で働く姿が印象的な犬種ですが、落ち着きがあり、愛情深い一面もあるため家庭犬としても人気です。ここではジャーマン・シェパードの性格や特徴、歴史、飼い方について解説します。
もくじ
働く犬として有名なジャーマン・シェパード・ドックは、世界で活躍するエリート犬です。
ジャーマン・シェパードは運動能力が高く、知性も優れた犬種です。ピンと立った耳と筋肉質な体をしており、腰を落として姿勢を低くするようにして歩きます。
生後60日を過ぎるとグングン大きくなり、成犬になればあらゆるシーンで活躍します。
オスの体高は60〜65cm、体重は30〜40kgがスタンダードとされています。メスは一回り小さく、体高は55〜60cm、体重は22〜32kgです。
※体高…四つ足をついて立ったときの、地面から背中までの高さ
全身が黒のオールブラック、こげ茶や明るめの茶色、イエロー、グレーなどが基本です。毛色に関する規定は厳しく、白いスポットが入るものは好ましくないとされており、鼻もブラックの単色でなくてはならないと決められています。
忠誠心が強く、常に冷静で、与えられた仕事を忍耐強くこなす責任感を持ち合わせています。そのため、難しい仕事にも粘り強く取り組むことができるでしょう。
また、クールな見た目に反して穏やかで愛情深い一面も持ち合わせています。小さな子どもや他の動物にも優しく接することができるため、家庭犬としても人気の高い犬種です。
ジャーマン・シェパードの祖先は、ドイツの農家で牧羊犬として飼育されていたオールド・ジャーマン・シェパードだといわれています。第一次世界大戦の際には、軍用犬として活用するため訓練能力の向上を目指した交配が繰り返され、戦場では通信役としても大活躍しました。
戦後は映画やテレビで活躍する姿が見られたことから、世界中で人気が高まり、特にアメリカでは大人気となっています。現在は、その能力の高さから、警察犬や盲導犬、麻薬探知犬、災害救助犬など、人のパートナーとしてさまざまな仕事に従事しています。
ここでは、知能が高いジャーマン・シェパードと上手に暮らすための、飼い方のポイントを紹介します。
ジャーマン・シェパードは働く犬のイメージが強いため、訓練は簡単というイメージを持たれがちな犬種です。しかし、能力が高いからこそ、しつけを行い、能力をコントロールする必要があります。
しつけは子犬の頃から行い、飛びつきや噛みつきを抑止し、事故につながらないようにしましょう。また、飼い主さんの横を歩くリーダーウォークや無駄吠えをしないための社会化訓練を行うことで、安心して日常生活が過ごせるようになります。
しつけの際には、常に落ち着いた態度で接し、うまくいったらよく褒めるとよいでしょう。自分でしつけを行うのが大変だと感じたら、必要に応じてドックトレーナーにお願いするのもよい方法です。
ジャーマン・シェパードは並外れた体力と持久力を持っているため、運動量が必要です。運動不足になるとストレスを感じるため、1日2回、最低1時間程度の散歩に出かけましょう。平坦な道をただ歩くだけでなく、ジョギングをしたり、コースを変えたりと工夫が必要です。
またドッグランなどでボールやフリスビーで遊んだり、自由に走り回ったりするのもよいでしょう。
賢いジャーマン・シェパードは、いつでも飼い主さんのことをよく見ています。「自分にとって頼れるリーダーではない」と判断したら、指示に従わなくなってしまうかもしれません。
「トレーニングの時だけ」頑張るのではなく、散歩や食事、遊びの中にトレーニングを組み込んで、飼い主さんがリーダーであるということを、毎日の習慣の中で意識づけることが大切です。
豊かなダブルコートを持つジャーマン・シェパードは、寒さには強いですが、夏の暑さには非常に弱く、熱中症になってしまう可能性もあります。そのため、気温の高い時には、適度な休憩を入れるなど工夫が必要です。
室内で過ごす際には温度管理に留意し、涼しく過ごせるように工夫しましょう。
ジャーマン・シェパードは、短毛のためトリミングを行う必要はありません。しかし、抜け毛が多いためブラッシングは必要です。
特に換毛期には大量の毛が抜けます。抜け毛を取り除き、皮膚を清潔に保つためにも、こまめなブラッシングを心がけましょう。
ジャーマン・シェパードの平均寿命は9歳〜13歳程度。飼い主さんが健康状態に注意し、適切に管理することで寿命は変化するともいわれています。
日頃から食事の量や運動量、表情や行動などよく観察し、おかしいなと感じることがあればできるだけ早く獣医に相談するように心がけましょう。
ジャーマン・シェパードの注意しておきたい病気について紹介します。
股関節がうまく発育せず、関節に異常を起こす病気です。足を引きずって歩く、腰を左右に振って歩く、つまずく、運動を嫌がるなどの様子が見られたら、早めに獣医師に相談しましょう。
夏の暑さはジャーマン・シェパードにとっても辛いものです。夏場の散歩や室温には特に気をつけましょう。よだれが多くなった、荒い呼吸や心拍数の上昇、舌や口の色が赤い、フラフラしているなどの症状は熱中症が疑われます。重篤化しないよう、早めの対処が大切です。
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大量のガスによって胃がねじれる病気です。症状がひどければ胃の周りの血管を圧迫するため、重篤な症状を引き起こします。落ち着きがなくなる、吐こうとしても吐けない、大量のよだれなどの症状があらわれたら胃拡張・胃捻転を疑ってみましょう。この病気は緊急を要することがあるため、怪しいと思ったらすぐに動物病院へ連絡してください。
この病気は、遺伝性の病気と考えられており、治療法もありません。歩き方の異常から始まり、ゆっくりと麻痺が進行していきます。進行に合わせて介護をすることで、できるだけ快適に過ごせるように対処していきます。
シェパードは遺伝的に心疾患にかかりやすいといわれています。運動を嫌がる、呼吸に様子がおかしい、舌の色が悪い、失神などが見られる場合には、速やかに受診しましょう。
膵臓から分泌される消化酵素が分泌されなくなり、食べ物(特に脂肪)の分解ができなくなる病気です。泥状の白っぽい軟便が特徴で、1日の便の量が増えるとされています。たくさん食べているのに太らない、便に異常がある、酸っぱい匂いがするなどの症状がある場合には、膵外分泌不全の可能性があります。
ジャーマン・シェパードの生体価格は30~40万円ほど(2024年7月時点)。ただし、犬の値段は毛色や血統の良し悪しで変動します。
日本のペットショップでジャーマン・シェパードの子犬に出会えることは、ほとんどありません。ジャーマン・シェパードを迎えたいのであれば、まずはブリーダーにコンタクトを取るとよいでしょう。
ブリーダーは、全国各地に存在する犬の繁殖を専門とする人のこと。犬種の知識、飼育経験が豊富なブリーダーから犬を譲り受けることができるため、事前に飼い方、注意点を教わることができます。犬の飼い方がわからないペット初心者でも安心して迎え入れることができるでしょう。
また、実際に親犬の様子を事前に確認することができるため、成犬時のサイズ感などを予測する助けになります。飼育環境などの質問にもきちんと答えてくれる、信頼できるブリーダーを見つけましょう。
里親制度は、保護団体、保健所など引き取り手のいない犬、飼い主さんがいない犬を迎え入れて里親になる制度です。ペットショップ、ブリーダーと比べると費用が掛からないメリットがあります。
ただし、里親募集によっては譲渡、引取後も必要に応じて飼育状況の確認しなければならないケースもあります。また、ジャーマン・シェパードは数が少ない上、人気犬種なのでいつでも出会えるとは限りません。
犬を迎え入れるまでに、準備しておきたいものは、以下の通りです。約4~5万円ほどをみておくとよいでしょう。
【寝床の準備】
・ペットサークル
・クレート(ペット用キャリー)
・ベッド
【日用品の準備】
・ドッグフード
・フードボウル
・水飲みボウル
【トイレ用品の準備】
・トイレトレー
・トイレシーツ
【ケア用品】
・ブラシ
・爪切り
・ペット用シャンプー
・歯磨きグッズ
【その他】
・首輪
・リード
事前に飼育環境を整えておく必要もあります。危険なもの、噛まれては困るものは片づけるなどしておきましょう。
夏場はクーラーなど空調設備のできるものも備えておくと安全です。余裕があれば、犬が遊べるおもちゃなども買っておきましょう。
【関連リンク】
犬を迎える前に準備しておきたいもの
犬を迎える前に整えておきたい室内のポイント
犬をペットとして迎える時の心構え
役所への登録料やワクチン接種・健康診断の費用として2万~3万円ほどがかかります。
大型犬の平均的な飼育費用は、1カ月あたり2万~4万円になります。
フードやおやつといった食費。価格はピンキリですが、平均すると1カ月で5,000~1万2,000円ほどかかります。
トイレシーツなどの日用品が1カ月で5,000~1万4,000円前後。
シャンプーなどのお手入れをトリミングサロンにお願いする場合は、大型犬の場合1回1万円以上かかるでしょう。
フィラリアやノミ・ダニの予防薬なども含め、健康であっても医療費として年間で4~6万円ほど必要でしょう。1カ月にすると4,000円程度です。
初めて犬を飼う方の盲点となるのが、ペットの医療事情です。ペットには公的な健康保険がなく、治療費は全額自己負担となります。自由診療のため病院によって料金が異なる点が、人とは違います。
子犬は、骨折や異物誤飲が多いです。
ただし、どちらも場合によっては20万円を越えるケースもあるため、住環境を整えるなど事前の予防が大切です。
お迎えしたばかりの頃は環境変化によるストレスで軟便や風邪にもなりやすいので体調の変化にも気を付けてあげましょう。
*ペット&ファミリー損保調べ(2023年4月~2024年3月 保険金支払い実績をもとに算出)
ペットの年齢によって保険料は変わりますが、大型犬の1ヶ月の保険料は2,300~5,900円*ほど。0~3歳の間に加入するケースが多いです。
ペット保険は、健康でないと加入できず、加入可能年齢が「満7歳まで」のように制限のある場合がほとんど。人と同じように犬も年齢が上がれば病気のリスクも上がるため、早めに加入したいものです。
ペット保険はたくさんの種類があり、どれも同じように見えるかもしれませんが、各保険商品によって補償内容は大きく異なります。
保険料だけではなく、以下の補償内容をよく理解し、最もご自身に適した保険を選ぶようにしましょう。
*参照:慢性疾患にも、高額治療にも対応したペット保険!ペット&ファミリー損害保険「げんきナンバーわんスリム プラン50」
*犬の加入タイプ(小型犬・中型犬・大型犬・特大犬)は、ご加入時・ご継続時の体重で決まります。ただし、1歳未満の幼犬の場合「犬種分類表」を参考に、1歳時のおおよその予測体重で加入タイプが決まります。
家族になる前からたくさんのことを学ぶことで、快適な暮らしをスタートすることができます。お迎えする犬の特徴や費用などをよく知ってよきパートナーとして信頼関係を築いていってくださいね。