賢く飼い主さんに忠実で、たくましい体を持つボクサー犬は、ドイツ生まれの犬種です。クールでかっこいい印象が強く、一見すると怖そうにも見えますが、実は明るくて愛情深い性格をしています。アメリカでは特に人気が高く、家庭犬としても有名です。ここではボクサー犬の性格や特徴、歴史、そして飼い方について解説します。
もくじ
忠実で忍耐力があるボクサー犬は、愛情深さと賢さで愛される人気犬種です。まずはボクサー犬の特徴や性格、歴史について紹介します。
たくましい四肢を支える筋肉質な体、がっしりとした骨格をもち、力強さを感じさせる外見です。顔にはブルドッグの特徴が濃く出ており、アンダーショットと呼ばれる独特の受け口。耳は垂れ、鼻はくぼんでいます。
がっしりと力強い印象のドイツタイプとスマートなアメリカンタイプの2種類が存在し、日本ではスマートなアメリカンタイプがほとんどです。
狩猟犬として繁殖されていたため、断尾や断耳が習慣とされていましたが、現在では動物愛護の観点から多くの国で禁止されています。
標準的なオスの体高は57~63cm、メスは53~59cmとされています。がっしりした筋肉質の体は重く、小さめの個体でも25kgほどあり、30kgを超えることも珍しくはありません。
※体高…四つ足をついて立ったときの、地面から背中までの高さ
ゴールドに黒の差し毛が混ざったフォーンと、基本となる毛色に虎のようなしま状模様が入ったブリンドルが認められています。
フォーンは濃淡さまざまなトーンがあり、薄いものから濃いものまで存在しますが、最も美しいのはちょうど中間のレッドフォーン(赤茶色)です。
まれに全身が白の個体も存在しますが、遺伝性疾患が懸念されるため公式な毛色としては認められていません。ただし、体の一部に白の斑が入っているのは好ましいとされます。
飼い主さんに忠実で忍耐強く、勇気に溢れた頼もしい犬種です。見知らぬ人には警戒心をあらわにしますが、忠誠を誓った飼い主さんには非常に愛情深く寄り添います。
頭がよく、粘り強く訓練にも取り組みますが、こだわりはさほど強くありません。そのため、使役犬としてはもちろん、家庭犬としても世界中で愛されています。
ボクサー犬は、紀元前2000年ごろに野犬から家畜や闘犬を守っていたマスティフから派生したといわれています。
しかし、現在のボクサー犬の歴史は浅く、19世紀ごろにドイツのブレンバイザーやイングリッシュブルドッグと交配したことで誕生しました。
高い狩猟能力を持つボクサー犬は、狩猟家によって改良が繰り返されました。その結果、全てにおいて高い能力を兼ね備えたボクサー犬は、第一次世界大戦、第二次世界大戦で軍用犬としても活躍。
終戦後は軍人に引き取られ、ペットとしてアメリカを中心に人気が高まりました。
飼い主さんに従順で運動能力の高いボクサー犬はトレーニングしやすい犬種です。
ボクサー犬は賢く、物覚えが早いため、しつけやすい犬種だと考えられます。
しかし、非常に力が強い犬種のため、しつけを失敗すると大きなトラブルへと発展することもあります。子どもの頃から社会化トレーニングを行い、飼い主さんとの間に強固な信頼関係を築くことが必須となります。
飼い主さんはいつも毅然とした態度を取り、過剰に叱ったり誉めたりするのではなく、落ち着いた態度でボクサー犬と接するようにしましょう。
ボクサー犬は散歩が大好き。体力が溢れているため、毎日たっぷり運動させてあげましょう。
運動不足はストレスのもと。1日2回、1回あたり最低1時間程度を目安に、散歩をしましょう。ジョギングやコース変更を取り入れたり、ドッグランなどでボールやフリスビーで遊んだり、自由に走り回ったりするのもおすすめです。
ボクサー犬は本能的に「噛む」ことへの欲求を持っています。しかし、大きなアゴは獲物をとらえて離さないため、家庭で人と暮らしていくためには「噛む」欲求を上手にコントロールすることが大切です。
子犬の甘噛みであっても毅然とした態度で静止し、「噛んではいけない」ということをしっかりと教えましょう。代わりにロープやコングなどを用いた噛む遊びを取り入れるなど、適度に欲求を発散しましょう。
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鼻が短いボクサー犬は、暑さと湿度に弱いです。暑い季節にはエアコンを使用するなど、暑さ対策には十分に気をつけましょう。夏場の散歩は暑い時間を避け、気温の高い場所や時間帯の運動は控えましょう。
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短毛種ですが、週に2〜3回はラバーブラシと獣毛ブラシを使用して優しくブラッシングを行いましょう。
ラバーブラシは抜け毛を取り除き、獣毛ブラシは汚れを取り除いて艶を出してくれます。頻回なシャンプーは必要無く、軽い汚れは蒸しタオルなどで拭くだけでも十分です。
また、忘れてはいけないのが耳の掃除です。綿棒や洗浄液を使用して綺麗に汚れを落とし、外耳炎を防ぎましょう。
ボクサー犬の平均寿命は10歳〜12歳程度ですが、飼い主さんが健康状態に注意し、適切に管理することで寿命は変化するともいわれています。
日頃から食事の量や運動量、表情や行動などよく観察し、おかしいなと感じることがあればできるだけ早く獣医に相談するように心がけましょう。
ボクサー犬の注意しておきたい病気について紹介します。
日本の高温多湿の気候は、皮膚炎の原因となります。普段のお手入れの際には毛の下に隠れている皮膚の状態をよく観察し、脱毛や出血がないかしっかりと確認しましょう。体をかゆがっている、体を地面に擦り付けている場合には特に注意が必要です。
背骨(脊椎)に挟まれた椎間板が飛び出してしまうことで背骨の中の神経(脊髄)を圧迫し、様々な神経障害が起こる病気です。遺伝や加齢によって起こり、最悪の場合には下半身が麻痺してしまいます。
大量のガスによって胃がねじれる病気です。症状がひどければ胃の周りの血管を圧迫するため、重篤な症状を引き起こします。落ち着きがなくなる、吐こうとしても吐けない、大量のよだれなどの症状があらわれたら胃拡張・胃捻転を疑ってみましょう。
またこの病気は緊急を要することがあるため、怪しいと思ったらすぐに動物病院へ連絡してください。
心臓の筋肉の収縮力が弱まることで、全身に血が行き渡らなくなる病気です。大型犬に発症しやすく、遺伝性の病気だと考えられています。
症状が進むと呼吸器に症状が現れ、ゼエゼエと苦しそうな呼吸をするようになり、運動を嫌がる、食欲がなくなるなどの様子が見られます。突然死の可能性もあるため、おかしいなと思ったら早めの受診を心がけましょう。
甲状腺ホルモンの分泌が減少することで元気がなくなり、脱毛、肥満、低体温など、様々な体調不良が見られるようになります。
犬の死亡原因の上位を占めるがんの一種です。体のリンパの部分が腫れる他、元気がなくなり、食欲が低下するなどの症状が現れます。放置しておくと進行してしまいます。早期発見、早期治療が何よりも大切です。
ボクサー犬の生体価格は15~30万円ほど(2024年7月時点)。ただし、犬の値段は毛色や血統の良し悪しで変動します。
日本のペットショップでボクサー犬の子犬に出会えることは、ほとんどありません。ボクサー犬を迎えたいのであれば、まずはブリーダーにコンタクトを取ると良いでしょう。
ブリーダーは、全国各地に存在する犬の繁殖を専門とする人のこと。犬種の知識、飼育経験が豊富なブリーダーから犬を譲り受けることができるため、事前に飼い方、注意点を教わることができます。犬の飼い方がわからないペット初心者でも安心して迎え入れることができるでしょう。
また、実際に親犬の様子を事前に確認することができるため、成犬時のサイズ感などを予測する助けになります。飼育環境などの質問にもきちんと答えてくれる、信頼できるブリーダーを見つけましょう。
里親制度は、保護団体、保健所など引き取り手のいない犬、飼い主さんがいない犬を迎え入れて里親になる制度です。ペットショップ、ブリーダーと比べると費用が掛からないメリットがあります。
ただし、里親募集によっては譲渡、引取後も必要に応じて飼育状況を確認しなければならないケースもあります。また、ボクサー犬は数が少ない上、人気犬種なのでいつでも出会えるとは限りません。
犬を迎え入れるまでに、準備しておきたいものは、以下の通りです。約4~5万円ほどをみておくとよいでしょう。
【寝床の準備】
・ペットサークル
・クレート(ペット用キャリー)
・ベッド
【日用品の準備】
・ドッグフード
・フードボウル
・水飲みボウル
【トイレ用品の準備】
・トイレトレー
・トイレシーツ
【ケア用品】
・ブラシ
・爪切り
・ペット用シャンプー
・歯磨きグッズ
【その他】
・首輪
・リード
事前に飼育環境を整えておく必要もあります。危険なもの、噛まれては困るものは片づけるなどしておきましょう。
夏場はクーラーなど空調設備のできるものも備えておくと安全です。余裕があれば、犬が遊べるおもちゃなども買っておきましょう。
【関連リンク】
犬を迎える前に準備しておきたいもの
犬を迎える前に整えておきたい室内のポイント
犬をペットとして迎える時の心構え
役所への登録料やワクチン接種・健康診断の費用として2万~3万円ほどがかかります。
大型犬の平均的な飼育費用は、1カ月あたり2万~4万円になります。
フードやおやつといった食費。価格はピンキリですが、平均すると1カ月で5,000~1万2,000円ほどかかります。
トイレシーツなどの日用品が1カ月で5,000~1万4,000円前後。
シャンプーなどのお手入れをトリミングサロンにお願いする場合は、大型犬の場合1回1万円以上かかるでしょう。
フィラリアやノミ・ダニの予防薬なども含め、健康であっても医療費として年間で4~6万円ほど必要でしょう。1カ月にすると4,000円程度です。
初めて犬を飼う方の盲点となるのが、ペットの医療事情です。ペットには公的な健康保険がなく、治療費は全額自己負担となります。自由診療のため病院によって料金が異なる点が、人とは違います。
子犬は、骨折や異物誤飲が多いです。
ただし、どちらも場合によっては20万円を越えるケースもあるため、住環境を整えるなど事前の予防が大切です。
お迎えしたばかりの頃は環境変化によるストレスで軟便や風邪にもなりやすいので体調の変化にも気を付けてあげましょう。
*ペット&ファミリー損保調べ(2023年4月~2024年3月 保険金支払い実績をもとに算出)
ペットの年齢によって保険料は変わりますが、大型犬の1ヶ月の保険料は2,300~5,900円*ほど。0~3歳の間に加入するケースが多いです。
ペット保険は、健康でないと加入できず、加入可能年齢が「満7歳まで」のように制限のある場合がほとんど。人と同じように犬も年齢が上がれば病気のリスクも上がるため、早めに加入したいものです。
ペット保険はたくさんの種類があり、どれも同じように見えるかもしれませんが、各保険商品によって補償内容は大きく異なります。
保険料だけではなく、以下の補償内容をよく理解し、最もご自身に適した保険を選ぶようにしましょう。
*参照:慢性疾患にも、高額治療にも対応したペット保険!ペット&ファミリー損害保険「げんきナンバーわんスリム プラン50」
*犬の加入タイプ(小型犬・中型犬・大型犬・特大犬)は、ご加入時・ご継続時の体重で決まります。ただし、1歳未満の幼犬の場合「犬種分類表」を参考に、1歳時のおおよその予測体重で加入タイプが決まります。
家族になる前からたくさんのことを学ぶことで、快適な暮らしをスタートすることができます。お迎えする犬の特徴や費用などをよく知ってよきパートナーとして信頼関係を築いていってくださいね。