普段、愛猫を触る際、どこに触れていますか。触らせてくれない場所はないですか。「お家ではとってもいい子なのに、病院に行くと悲鳴が聞こえてしまう」「少しでも病院に行きやすいようにお家でできることは無いかな」と悩む飼い主さんもいらっしゃると思います。病院での猫の触り方をご家庭でも少しずつやっておくことで愛猫が病院に行った際のストレス軽減に繋がります。マッサージしながら、お家でも全身をチェックしましょう。
もくじ
基本的に猫は、触られることや抱っこされることが苦手な生き物。「うちの子は触っても大丈夫」というのは、大好きな飼い主さんだからこそ触らせてくれている、育ち方によって撫でてもらうことが大好きになっている可能性が高いです。
しかし、動物病院に行くと猫は、よく知らない場所で知らない人に普段されない触れられ方をします。さらには、やったこともない姿勢を取らされ、恐怖を感じて暴れる子も少なくありません。「じっとしていてよい子」といわれる子も、実は怖くて固まっているだけであることが多いです。
そんなふうに恐怖を感じている猫にとって、「普段と同じこと」や「慣れていること」があれば、病院でのストレスを軽減できます。体調不良であれば、ストレスを少しでも軽減して回復に力を使ってもらいましょう。
普段からできる、愛猫との上手なコミュニケーションの仕方をお話しします。日々の生活の中に少しずつ取り入れ、愛猫ともっと仲良くなって受診時のストレス軽減につなげましょう。
こんな時は「ありがとう」の気持ちをこめてドライフードを1粒あげましょう。
猫は1回の食事でたくさん食べるより、少量でも頻度が多いほうが満足度は高いです。食事以外のタイミングで1粒でもフードをもらえると「どんなことをしたら美味しいものくれるかな?」とワクワクしながら過ごしてもらえるでしょう。
ただし、与えすぎや肥満を防ぐため、1日に必要なフードの量を計り、お礼のフード量を抜いた分を食事として与えてください。また、猫の食欲も確認した上で行いましょう。
「飼い主さんに撫でられたら美味しいものをもらえた」「飼い主さんに触らせてあげたら遊んでくれた」など、愛猫に美味しく楽しい経験とともに、人に触られも大丈夫な経験を積み重ねてもらいましょう。
「触られるのが苦手な場所でもドライフードを1粒食べながらなら大丈夫」「ドライフードだと怒るけど液体おやつを1口舐めながらなら大丈夫」など、飼い主さんが見極めていくことも大切です。
猫はもともと警戒心が強く臆病な生き物。大切な臓器を守るため「背中は触らせてくれても、お腹は触らせてくれない」という猫はとても多いです。ゆっくりと、お腹を触れる関係性を作りましょう。
いきなり仰向けにせず、背中側からすこしずつ撫でていき、手をお腹に近づけてはフードを1粒あげるといった方法で慣らしていきます。子猫をお家に迎えた場合は、子猫のうちからお腹をたくさん触らせてもらいましょう。
ただし、毎日触っていないと、触られて大丈夫だったことを猫が忘れてしまいます。日常的に全身を触るようにしてください。
愛猫が全身を触らせてくれるようになったら、毎日の全身チェックをかねたマッサージがおすすめ。マッサージの方法を紹介します。
普段、撫でている時の指先を曲げて、手ぐしをするように全身を触っていきます。猫の頭側からしっぽ側へ、縦方向に少し毛を引き延ばすようにマッサージをします。毛がたっぷり抜けてくるでしょう。
長毛の猫の場合、手ぐしでマッサージするだけでは毛が少しずつ束になって毛玉になってしまうため、手ぐしでマッサージした後に目の細かいコームを使ってブラッシングをしましょう。
新しいコームは使い始める前に愛猫の生活空間に置いたり、触って飼い主さんのニオイが着くようにしたり、コーム自体に慣れる時間を設けましょう。
お腹は特に嫌がる部位です。液体おやつを舐めながら実施する等、愛猫にとってブラッシングの時間が楽しいものになるように工夫してあげましょう。
毛もつれや毛玉がコームに引っかかると痛いです。痛い思いをすると、猫は飼い主さんがコームを持っただけで逃げてしまうようになります。事前に毛もつれや毛玉を見つけてほぐすために、しっかり手ぐしマッサージをしてあげましょう。
毛玉は大きくなりすぎると皮膚炎の原因になります。お家でほぐせないものは、早めに動物病院やトリミングサロンに相談し、対処しましょう。処置時間が短く済み、愛猫のストレスも小さく済みます。
マッサージ中には毛玉やケガ、脱毛、しこりなどがないか確認し、気になることがあれば動物病院に相談してください。
お腹を触れられるようになったら、愛猫の乳首を探してみましょう。猫はオスもメスも6~8個の乳首があります。猫の乳首は写真のように妊娠すると目立つようになりますが、普段は目立ちません。
初めて見る場合は腫瘍などと区別しにくいため、動物病院で一緒に確認してもらうと安心です。
猫の場合、8割が悪性といわれる乳腺腫瘍は、乳首周辺をくるくると円形にマッサージしながら探します。
腫瘍に限らず、何か異変が無いか日常的に確認してあげることができるのは飼い主さんです。いつもはお腹お腹を触らせてくれるのに「今日は怒る」「お腹に力が入っている」ときなどは、病気のサインかもしれません。
人と猫では口腔内のpHが異なるため、猫は人でいう「虫歯」にはなりません。しかし、歯垢や歯石の付着は歯肉に炎症を起こしたり、歯が破壊吸収されたりと様々なトラブルの原因になります。口の痛みから食欲が落ちてしまう猫も多いため、デンタルケアはとても大切です。
しかし、頭を触らせてくれても口周りを触らせてくれない猫がほとんどです。「歯磨きをしよう!」と思うと、歯ブラシをいきなり猫の口の中に入れてしまう飼い主さんが多いですが、まずは頬のマッサージから始めてみましょう。
手を使って、顎から徐々に頬へとマッサージを移行しましょう。口のまわりをマッサージする際は、頬から鼻の方へ指を動かすことで、口の中に指を入れずに歯肉のマッサージができます。
歯の表面に付着したフードが歯垢となり、3日ほどで歯石になるといわれています。頬の上から歯の表面を撫でて、付着した汚れを動かすイメージで実施します。
頬マッサージをうっとりした顔でさせてくれるようなら、頬マッサージの動きのまま、口の中に指を入れてみましょう。指に液体おやつなどを付けておけば、愛猫も喜びます。
歯の表面を指で触らせてくれるようになったら、指に歯磨きシートを巻き付けてデンタルケアを進めましょう。シートを使う際は、猫の舌に引っかかって誤食させてしまう事があるので、確実に指に巻き付けてください。
お顔周りや歯を触らせてくれるようになったら、いよいよ歯ブラシを使っていきます。指と同様に歯磨きシートや歯ブラシに液体おやつを付けて美味しく楽しく続けてあげましょう。
おやつが歯につくことについては、3日間同じものが付着することで歯石になると考えて、デンタルケアの度に付着したものを更新していけばよいのです。
歯ブラシで頭など猫が喜ぶ場所をゴシゴシと撫で、気持ちいいものだと学んでもらいます。数日は撫でるだけで終了しましょう。歯ブラシに液体おやつやフレーバー付きの猫用歯磨き粉を付け、歯ブラシを徐々に口に近づけて舐めてもらいましょう。口の中に歯ブラシを入れる時間を少しずつ長くしていきます。
「切歯や犬歯のような前歯は歯磨きできても奥歯は難しい…」という相談が多いです。しかし、猫の歯で歯石が着きやすいのは奥の臼歯(きゅうし)。ぜひ、臼歯を優先して磨いてあげましょう。
歯磨きは1日1回が理想的です。歯垢は3日かけて歯石に変化するため、少なくとも3日に1回は実施しましょう。
日常的にお口のケアをしていても、歯石が着くことはあります。歯石取りは全身麻酔下で超音波の機械を使用して実施します。動物病院で定期的に口の様子を診てもらい、炎症の有無などから処置が必要か確認してもらいましょう。
日頃から飼い主さんに全身を触られることに慣れておくことで、動物病院受診の際のストレスを軽減させてあげられます。さらに、日常的に動物病院での触られ方を経験していれば、少しでも落ち着いて受診することができるでしょう。
猫にとって「聴診器を当てられる=お腹側に知らない物を当てられる」という一大事。マッサージが日常的にできるようになったら、お家でもペットボトルのキャップなどを、胸からお腹にかけて当て、フードを1粒食べる経験をさせてあげましょう。
耳をめくったり、まぶたを触ったり、診察をイメージしながら愛猫を触ってください。
動物病院での採血や心臓の超音波検査では、横倒しになって四肢を伸ばした姿勢になります。また、レントゲン撮影や腹部の超音波検査では、仰向けの姿勢になります。
日頃のマッサージの際、検査の姿勢をしてご褒美をもらう経験をしておけば、実際の検査ではパニックにならずに済む可能性が高まります。治療に集中してもらえるよう、愛猫に「大丈夫」を積み重ねていってもらいましょう。
動物病院になれることも大切。お家で練習ができたら、動物病院と相談しながら愛猫の受診練習をしていけると理想的です。
マッサージと聞いて、リラックス効果を狙ったアロマオイルを思い浮かべる飼い主さんもいるでしょう。しかし、香りのついた製品は基本的に猫にとって不快です。アロマオイルの使用は推奨できません。
人や犬に比べて、猫は肝臓にダメージを受けやすい生き物です。犬用やペット用と表記されていても、猫への安全性がしっかり評価されているか不明のものも多いため注意してください。
猫は毛づくろいで全身を舐めます。その際、空間に漂うものが全身に付着し、猫の口に入ります。そのため、アロマディフューザーも、猫の生活するエリアでの使用はやめましょう。デンタルシートや全身の拭き取りシートを選ぶ際は、無香料のものがおすすめです。
猫への触れ方やマッサージ方法についてお話ししました。初めはご褒美のフードなどが必要ですが、猫の様子を見極めながら続けていけば、次第にマッサージ自体を大好きになるでしょう。
とろける愛猫を見ることができ、健康チェックもできる、よいことづくめのマッサージ。愛猫とのコミュニケーションの一環に取り入れていただけると嬉しいです。