新しい猫を迎え入れたとき、その子が成猫でも子猫でも寄生虫に感染している可能性があります。寄生虫で思いつくのはノミ、ダニが一般的ですが、 実はお腹の中に隠れている寄生虫もあるのです。今回はその中でも代表的な猫の回虫とはなにか、治療方法や人にも感染するのかについて解説していきます。
もくじ
猫回虫とは、腸の中に寄生するヒモのような姿をした寄生虫です。猫のお尻から寄生虫が出てくることがあり、この場合には感染していることがすぐにわかります。しかし、感染しているかどうかは糞便検査をしないとわからないことが多いです。
糞便検査では猫回虫の卵を見つけていきます。この卵は非常に小さく、顕微鏡でないと発見できません。また、1回の検査だけでは発見できないこともあり、複数回の検査をする必要があります。
猫回虫は卵が猫の口から入る事で感染します。体の中に入った卵は胃で孵化(ふか)し、幼虫が小腸に移動します。幼虫は小腸の壁を破って血管に入り、肝臓から心臓、肺へと移動します。
肺へと移動した幼虫は気管から喉へ排出され、それを飲み込んで再度、小腸に移動して成虫になります。猫が咳き込むことで、喉に移動した幼虫が口から出ることもあり、それで感染していることに気づく場合もあります。
母猫が猫回虫に感染していると、母乳に猫回虫の卵が混じります。子猫が母乳を飲むことで感染が成立します。また、猫回虫は成虫になると腸の中で卵を産むことで増殖していきます。この卵はうんちに含まれて体の外にも出るため、猫回虫に感染した猫のうんちを別の猫が舐めても感染してしまいます。
猫回虫に感染した猫のうんちには、大量の卵が含まれています。この卵は非常に丈夫で、猫の体の外に出ても条件が良ければ1年以上も感染能力を維持することができます。猫回虫に感染した猫がいろいろな場所でうんちをすると、卵がばら撒かれます。
つまり家の外では、どこでも回虫に感染する機会があるということです。猫が外に出ると、いろいろな場所の匂いを嗅いだり舐めたりします。そこに猫回虫の卵が混ざっていると、それが体の中に入ってしまい感染につながります。
そのため、猫が脱走してしまった場合や野良猫を拾った場合には検査を行った方がよいでしょう。
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寄生している猫回虫の数が少ないと、ほとんど症状が出ないことが多いです。「症状がない=感染していない」ということではないため注意しましょう。
寄生している数が多い場合は、さまざまな症状が出ます。一般的なものとしては以下の通りです。
また、あまりにも寄生している数が多いと腸閉塞を起こし、手術で猫回虫を取り出さなければならない場合もあります。
早期発見、早期治療が重要ですので定期的に検査をしていきましょう。
猫回虫の卵は非常に小さく、道路や砂場などに落ちている卵を目でみつけることはできません。猫回虫を予防するためには、猫と猫回虫の卵が接触する機会を減らすことが大切です。
具体的には、猫を外に行かせないこと。これにより、猫回虫の卵と接触する機会を減らせるでしょう。
ペットショップやブリーダーから新しい子を迎えた場合も、回虫の検査は必要です。上述したように回虫の卵は顕微鏡でしか確認できません。
口やお尻から回虫が出てくれば感染に気付きますが、症状がない場合もあり、実は感染していたというのも少なくありません。そのため、新しく迎え入れた子はもれなく検査することをおすすめめします。
猫回虫は、寄生虫駆除薬を使って治療をします。猫回虫の薬には、錠剤と背中に垂らすタイプがあります。後者を使えば、薬を飲むのが苦手な猫であっても治療は可能です。
ただし、薬の種類によっては幼い猫には使えないものもあります。また、猫の年齢や薬の種類によって投薬回数などが変わるため、回虫に感染している事がわかったら動物病院で相談しましょう。
猫回虫は猫の寄生虫ですが、人にも感染します。動物にも人にも感染する病気を「人獣共通感染症」といい、人の場合も猫と同じで回虫の卵が口から入ることで感染します。
通常、猫では回虫の幼虫は体の中を移動して小腸で成虫になり感染が成立します。しかし、猫回虫が人に感染すると幼虫はどこに移動したらいいかわからなくなり、さまざまなところに入り込んでしまいます。脳であれば発作、肺であれば咳や呼吸困難、眼であれば失明することもあります。
最大の予防法は、猫回虫に感染している愛猫をしっかり治療し、猫回虫との接触機会を減らすことです。また、感染している猫の世話をする場合には、うんちを触ったらしっかりと手洗いをすることも重要です。
外にいる猫は、公園の砂場などをトイレとして利用する事があります。外にいる猫は猫回虫に感染している可能性が高いため、このような場所では卵が紛れている可能性が高いといえます。
砂場を利用する事があれば遊んでいる最中に手を口に近づけない、遊び終わったらしっかりと手洗いをすることを忘れないようにしてください。
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