猫に牛乳を与えてもよいのでしょうか。牛乳とペット用のミルクには違いがあり、まったく同じものではありません。牛乳を与える際の基本的な知識と、注意点を学ぶことで、適切に食事管理を行いましょう。
もくじ
牛乳には、乳糖(ラクトース)と呼ばれる炭水化物が100gあたり4.4gも含まれています。猫は、この乳糖を分解する乳糖分解酵素(ラクターゼ)の活性が高くありません。そのため、乳糖を消化吸収できず、下痢を引き起こしてしまうことがあります。
これを乳糖不耐症と呼びます。
乳糖不耐症は猫に限ったものではありません。人でも牛乳を飲むとお腹を崩してしまう方は乳糖不耐症の可能性があります。
猫がどの程度の量の乳糖を分解でき、下痢などの消化器症状を引き起こさないかは、個体差があるため、「この量なら大丈夫」という量を一概に設定することはできません。
また、温めたり、薄めたりしても乳糖は分解されないため、注意が必要です。
消化できない乳糖を大量に摂取したこととなるため、牛乳の排泄がすめば改善傾向になるはずです。しかし、それが引き金となりおなかの調子が乱れ、下痢が長く続く場合もあります。改善が乏しい場合には、動物病院を受診してください。
猫が乳糖を分解する能力は、生後間もない頃が最も高く、成長とともに落ちていきます。
親猫の育児放棄や野良猫の保護により突然子猫を育てることになり、手元に子猫用のミルクがない場合に、牛乳や卵黄を混ぜたミルクが使用されることもあります。しかし、これはあくまでも、緊急用としての方法であり、決して継続使用が推奨されるものではありません。
子猫用のミルクは乳糖が含まれておらず、栄養バランスが調整されています。乳糖が問題なく消化できる子であったとしても、子猫用のミルクを与えることをおすすめします。
不測の事態に備えるために、愛猫の妊娠が分かった時点で子猫用のミルクを準備しておきましょう。
チーズは、製造工程で乳糖がほとんど除去されているのが一般的です。そのため、チーズを与えても、乳糖が原因の下痢をすることは少ないです。
しかし、チーズはカロリーやカルシウムが高く、肥満や尿石症のリスクとなるため、制限して与える必要があります。
ただし、リコッタチーズには乳糖が多く含まれていますので、注意してください。
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ヨーグルトの乳清(上澄み液のこと。ホエイとも呼ぶ)には、乳糖が多く含まれているため、ヨーグルトを与える場合はホエイをできる限り取り除くようにしてください。また、ヨーグルトに含まれる乳酸菌が乳糖を分解するため、牛乳よりは乳糖が少なく下痢をしにくいといわれますが、注意は必要です。
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やぎミルクに含まれる乳糖の量は、牛乳よりも若干少ないといわれていますが、乳糖の量に大差はありません。脂肪球(脂肪のサイズ)が小さいため下痢をしにくいといわれることもありますが、注意しましょう。
乳糖が除去されておらず、砂糖が大量に使用されており、カロリーも高いため注意が必要です。
粉の状態で、100gあたり47.8gもの大量の乳糖が含まれています。
人の場合は、一部の薬と牛乳を一緒に飲むと薬の作用や吸収を低下させることがあります。猫の場合は、それに加えて、牛乳に含まれる乳糖が下痢を引き起こすリスクが常にあるため、積極的に猫に与えたい飲み物ではありません。
便秘の時に、大量に牛乳を与え下痢を引き起こし、解消させようとする飼い主さんがいらっしゃいますが、猫が乳糖を消化する能力は個体差があるため、どの程度飲ませれば効果があるか事前に判断がつきません。
また、牛乳は、100gあたり61kcalとカロリーが高いため、与えすぎは肥満を引き起こすことから、おすすめできる方法ではありません。便秘になってしまった場合は、動物病院へ受診するようにしましょう。
牛乳といえばカルシウムが豊富であることが有名ですが、総合栄養食やAAFCOの基準に則ったフードを主食としていであれば、すでに必要量のカルシウムは摂取できています。フードのみで十分摂取していることから、追加摂取は不要です。カルシウムを摂取するために牛乳を与える必要はありません。
動物たちの食事は、いかに健康を害する可能性があるものを避けるかが大切です。飼い主さんがしっかりチェックをして、安心安全な食事を心がけましょう。