【獣医師監修】猫がすりすりする理由は仲間の証?すりすりする猫の気持ちを解説します
2022.02.09 作成

【獣医師監修】猫がすりすりする理由は仲間の証?すりすりする猫の気持ちを解説します

獣医師

濵口 美香

濵口 美香

帰宅した際、愛猫にすりすりされると愛情表現されているようで嬉しいですよね。猫はどんな気持ちで「すりすり」してくるのでしょうか。飼い主さんに甘えたい気持ちももちろんありますが、猫のすりすりには飼い主さんにとっても愛猫にとっても嬉しい効果があるのです。

もくじ

    猫はニオイでコミュニケーションをとっている

    【獣医師監修】猫がすりすりする理由は仲間の証?すりすりする猫の気持ちを解説します
    (Magui RF/shutterstock)

    猫の嗅覚は人より圧倒的に優れており、その能力は、人の数万から数十万倍ともいわれます。音と違い長くその場に残るニオイは、猫にとってコミュニケーションツールとしてとても重要な役割をもっています。

    もともと単独行動をしていた猫。ニオイの範囲や古さでほかの猫との接触を避けて、むやみに喧嘩をしないようにしたり、自分のニオイを残すことで縄張りに侵入者が滞在しないよう警告したりしていました。

    また、ニオイを残すことで、健康状態やメッセージなどをほかの猫に伝えることもあります。

    尿・糞・爪とぎ(指間腺)・皮脂腺からのニオイ付けによってメッセージを残すため、猫の「すりすり」は、この皮脂腺からのニオイ付けだと考えられます。

    猫の嗅覚が人より優れている理由

    猫の嗅覚が人より優れている理由
    (Photographerivanova/shutterstock)

    人に比べて猫の嗅覚が優れているのは、嗅神経細胞の数が多いことと、ニオイの種類を嗅ぎ分ける受容体の種類が豊富だからです。

    嗅覚神経細胞はニオイを感じる部位である嗅上皮(きゅうじょうひ)に存在します。人の嗅上皮は約2~4㎠であるのに対し、猫の嗅上皮は約20㎠と人の5倍の面積があります。嗅上皮の面積に比例して嗅覚神経細胞の数も増え、人が500万個であるのに対して、猫はその4倍の約2千万個の嗅覚神経細胞を持つといわれています。

    また、遺伝子の中に組み込まれているニオイの種類を嗅ぎ分ける受容体の種類は、人が約390個であるのに対して、猫は約680個。受容体の種類が多いことで、さまざまなニオイを嗅ぎ分けることができます。嗅神経細胞数の多さによって、人が気づくことのできないわずかなニオイも嗅ぎとることができるのです。

    「クッサー」のお顔はフレーメン反応

    ニオイを嗅いだ後に、鼻にしわを寄せて口を半開きにする行動を、フレーメン反応といいます。上唇と上の歯茎の間にある鋤鼻器(じょびき)を使ってニオイを嗅ぎとっている状態で、鼻とは別のルートで脳へニオイの情報が伝わります。

    愛猫がフレーメン反応をしている場合は、「ニオイ分析中」と考えてあげましょう。

    鼻と鋤鼻器の2つのルートでニオイを嗅ぎわけるほど、猫の生活にとってニオイがとても重要であることが分かります。

    【関連記事】
    猫がニオイを嗅いだ時に見せる変顔には名前があった!その名も「フレーメン反応」

     

    すりすりして作る仲間のニオイ

    すりすりして作る仲間のニオイ
    (Jaromir Chalabala/shutterstock)

    猫は単独行動をしていたとはいえ、社会性はあります。特に家庭内で過ごすようになった猫たちは、集団で生活する必要があるため、情報交換だけでなく群れ特有のニオイを作っているといわれています。飼い主さんに「すりすり」することで、猫は自身のニオイと飼い主さんのニオイを混ぜて、仲間のニオイを作っているのです。

    愛猫にすりすりされるということは、仲間として認識されている証拠といえるでしょう。

    帰宅時のすりすりはたっぷりと

    帰宅時に「おかえり~!」といわんばかりにしっぽをピーンとあげてすりすりするのは、お出かけで薄れた自身のニオイを、飼い主さんにつけているから。仲間であると再認識し、安心感を得ている可能性があるため、すりすりする時間をたっぷり設けてあげましょう。

    多頭飼いの1匹が外出から帰ったときの対応

    多頭飼いの飼い主さんなら、1匹が動物病院を受診して帰宅した際、ほかの猫からシャーと威嚇された経験があるかもしれません。これは、動物病院のニオイや他の動物のニオイがついて帰ってきたから。

    仲間と認識していいのか驚いて、威嚇している可能性があるため、シャーと威嚇した他の子を怒ることはおすすめできません。

    動物病院などから戻ったら、ほかの猫と対面させる前に、飼い主さんの香りのついたタオルで受診した猫を包むなどして、ニオイ付けをしてあげましょう。猫同士の関係も飼い主さんの一工夫でよりよいものにしてあげることができます。

    【関連記事】
    猫の多頭飼いに必要な準備や上手くいくコツは?

    すりすりして付けるニオイはどこから出ている?

    皮脂腺からの分泌物をこすりつけ、お互いにニオイを交換し合って、独特のニオイをつくる「すりすり」。愛猫がすり寄ってきて撫でるときは、皮脂腺の位置を意識するのがポイント。ニオイを付けやすくなり、猫が喜んでくれることでしょう。

    皮脂腺の場所

    皮脂腺の場所を紹介します。

    • 顎の下にある下顎腺(かがくせん)
    • 口角の両側にある口周囲腺
    • 前頭部左右にある側頭腺
    • しっぽの付け根やしっぽにそって点在する尾腺

    その他、耳の外側にもあるようです。

    すりすりしてきた愛猫を撫でてあげると、おしりがポンポンと上がることがあります。これは、しっぽにある尾腺からニオイをもっとつけるためと考えられます。

    メス猫の場合、発情している可能性がある

    メス猫の場合、発情している可能性があります!
    (A.Krotov/shutterstock)

    今まで飼い主さんに対してあまり甘えたりしていなかった猫が、急に目の前で寝転がってお腹を見せたり、すりすりしたりすることがあります。

    「やっと心を開いてくれた」と感じる飼い主さんも多いのですが、メス猫の場合はすりすりすることで、発情していることをメッセージとして残そうとしている可能性があります。

    発情するとよく鳴くようになるとは限らない!

    猫が発情すると、よく鳴くようになると認識されていることが多いです。そのため、あまり鳴かない猫は発情に気づかれないこともあります。

    もし、愛猫が生後6カ月前後ですりすりを頻繁にするようになったら、発情の可能性を考えて動物病院へ相談しましょう。避妊手術の予定が未定の場合は、獣医師と相談して早めにスケジュールを立ててください。手術の日程が決まっている人も、日程を早めなければならない可能性があります。

    尿や糞や爪とぎの跡なら、わたしたち人も視覚的に見つけることができます。しかし、すりすりによって付けられたニオイは気づくことができません。嗅覚の優れた猫たち同士にしかできないメッセージのやり取りに、すりすりされることで仲間に入れてもらえているような気持になることができますね。

    著者・監修者

    濵口 美香

    獣医師

    濵口 美香

    プロフィール詳細

    所属 猫の診療室モモ(東京都品川区) 勤務医

    略歴 1988年 鹿児島県に生まれる
    2007年 麻布大学獣医学部獣医学科入学
    2014年 獣医師国家資格取得
    2013年~2015年 千葉県の犬猫動物病院にて勤務
    2015年~2016年 ペット保険会社にて勤務。動物病院での診察業務・ペットショップの子犬子猫の往診・イベントでの健康相談業務・動物看護専門学校での講師を務める
    2016年~2017年 子育てに専念
    2018年~ 品川区の猫の診療室モモにて勤務

    資格 獣医師免許
    JSFM CATvocate認定プログラム修了

    ページトップに戻る