頭突きと聞くと、攻撃のように思いがちですが、実は猫の頭突きは猫同士の挨拶の一環で、ニオイ付けの意味があります。ほかにも、飼い主さんに対して要求を伝えている場合も。どんな気持ちで頭突きしているのかを解説しながら、その他の猫流挨拶も紹介します。
もくじ
猫は皮脂腺から出る分泌物をこすりつけることでニオイ付けをし、「ここを通ったよ」「これは私の」といったさまざまなメッセージを交換しています。
猫の体で最も高い位置に皮脂腺があるのは額(ひたい)で、高い場所にニオイを付ける際、頭部をズンっとこすりつけます。この動作が、人から見ると頭突きに見えるのです。
頭突きというと攻撃のように感じますが、ニオイ付けは猫にとってコミュニケーション手段のひとつです。
猫同士や人にニオイ付けをするのは、仲間同士のニオイを作っているからだと考えられます。
飼い主さんが帰宅した際や、一緒に暮らす仲良し猫が外出から戻った際なども、頭突きをすることがあります。どちらの場合も、愛情表現ととらえてよいでしょう。
頭突きが猫の挨拶であることもあります。ニオイ愛猫が頭突きをしてきたら、飼い主さんも同じように額で答えてあげて大丈夫。ズンっとより力を込めて頭突きしてくれるでしょう。
猫からの挨拶に応える生活をしていれば、飼い主さんが頭を向けたときに頭突きで応えるくれることもありますが、私たち人側から無理に頭突きをすると嫌われるので注意しましょう。
猫たちは、人の動きをよく観察し、どうしたら自分の思うように動いてもらえるのかを日々学んでいます。
このように、「頭突きをしたらよいことが起きた」と、繰り返し経験することで、要求があるときに頭突きをするようになることもあります。
「愛猫がこうした時に、こう返すと嬉しそうだな…」と観察してあげることはとても大切。頭突きに限らず、日常生活の中で飼い主さんと愛猫の特別な関係が築けるよう、細やかな対応ができると理想的です。
猫は、しっぽ・耳の動き・目の様子など、さまざまなボディランゲージでコミュニケーションをとっています。頭突き以外の挨拶についてお話しします。
愛猫への対応はもちろん、猫がいる家庭へお邪魔する際などの参考にしてください。
子猫の頃からたくさんの人間に出会い、よい思い出をたっぷり作ることができている猫は、来客があっても友好的に近づいてきてくれます。
といった場合は、おかえりなさいの挨拶だと考えられます。
また、猫がお客さんに対してしっぽをピーンと立てて近寄る場合は、「いらっしゃい」「こんにちは」といった歓迎モード。よい思い出を増やしてもらうために、飼い主さんはあらかじめ、お客さんから渡してもらう用のおやつを準備しておくとよいでしょう。
猫は基本的に臆病な性格なので、知らない人が来ると不安になります。
といった場合は、人側から近づかずに、猫側がニオイをかぎに来てくれるまでは知らないフリをしておきましょう。安全な人だと判断してもらえれば、猫側から近づいてきてくれます。
ゆっくりと壁やテーブルなどにすりすりしながら、ニオイ付けをして猫の縄張りを主張しつつもこちらをうっとり見つめてくるようであれば「触ってもいいよ」の合図です。
壁に頭突きしているようなら頭を、頬をこすりつけているようなら頬をというように、猫がその時ニオイ付けに使っているからだの場所をそっと撫でてあげましょう。猫の触ってほしい場所を撫でてあげられれば、仲良くなることができます。
パタンと横に倒れたり、チラリとお腹を見せてくれたりすると、「お腹を触らせてくれるの?」と撫でそうになります。しかし、「かかってこい」と戦いごっこに誘っていることが多いため注意してください。
「かかってこい」が分からず、撫でようとして噛まれてしまうことも多いです。ぬいぐるみなど、噛まれても大丈夫なもので参戦してあげましょう。
その際、噛みながらキックしてくるようであれば「捕まえた!」と楽しんでいます。唸り声が聞こえることもありますが、猫の遊びは狩りに繋がるもの。唸り声をあげるほど、野生の本能をむき出しで遊んでくれていると捉えましょう。猫じゃらしなどを使った遊びに誘うのもおすすめです。
ただし、単純に休憩するために横になっていることもあります。よく観察して対応しましょう。
耳が倒れて小さく丸まり、しっぽをからだに巻き付けているようなときは怖がっています。それ以上、近づかないようにしましょう。
耳の後ろ側が前から見えるように倒れ、前傾姿勢をとっている場合は、攻撃準備ができた合図です。口周りがやや膨らんでいたり、威嚇のためにシャーと鳴いていたりする場合は、危険なので注意してください。
猫は見つめられると緊張してしまいます。あまりにもかわいいからと、猫の目を見つめることはやめましょう。
視線を向けずに興味のないフリをし、穏やかな声で話すことを心掛けます。いきなり近づかず、ゆっくりとニオイを嗅いでもらいましょう。猫に触るときは、上からではなく下からアプローチするように意識するとよいです。
人間に慣れてもらうためには、生後7週齢までの環境がとても大切です。お家に子猫を迎えた場合は、たくさんの人に優しく触れてもらえる機会を設けることをおすすめします。
その他にも、人懐こさの要因としては父猫からの遺伝や、祖母猫・母猫の栄養状態の影響を受けるといわれています。来客など人との出会いに限らず、出会った猫にとって何が大丈夫で何が苦手なのか、しっかり見極めましょう。
おやつなどのよい思い出をプラスすれば、苦手なことも乗り越えられることもあります。克服を無理強いすることは禁物ですが、じっくり付き合って日常生活のストレスを軽減してあげてください。
頭突きなどで楽しくコミュニケーションをとっていると、愛情表現としてキスをしてしまう飼い主さんもいらっしゃいます。しかし、人と動物の間で感染する「人獣共通感染症」はたくさんあります。
パスツレラ菌はほとんどの猫の口に存在していますが、猫は無症状。人の場合は、噛まれた部位や周辺のリンパ節が腫れたり、発熱したりします。猫とキスをすると接触感染し、肺炎なども起こりうるといわれています。猫とのキスは避けましょう。
もともとノミの体内にいる瓜実条虫は、猫が全身を毛づくろいすると口の中に入ります。猫の口を介して飼い主さんに感染してしまうこともあるでしょう。
定期的なノミ・ダニ予防の実施は、猫の健康のためだけでなく、一緒に生活する飼い主さんの健康を守ることにもつながります。かかりつけの動物病院での相談をおすすめします。
糞便検査でよく見つかる寄生虫である、回虫も人獣共通感染症です。感染している猫の糞便の中に一緒に排泄された虫卵を口にすることで新たに感染します。
虫卵は、排泄されたばかりの頃は未熟なため感染力はありません。便をすぐに片付け、その後しっかり手洗いをしていれば、人への感染リスクは最小限にすることができます。
しかし、猫の手足などに付着し排泄から時間が経過してしまった虫卵を、猫が毛づくろいすることで、猫の口を介して回虫が人に感染する可能性もあります。
回虫にとって、人は本来の宿主ではないため、虫卵が口に入っても必ず成長するわけではありません。しかし、免疫の弱いときは発熱や咳、まれに視覚障害などの症状が出ることがあります。お子さんや高齢の方などは特に気を付けましょう。
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猫の頭突きの理由と猫との付き合い方についてお話ししました。猫と飼い主さんがもっと仲良くなるきっかけになってくれると嬉しいです。