たまごは、人にとっても犬にとっても身近なタンパク質源。安価で手に入りやすいという点から、多くのドックフードで使用されています。犬にたまごを与えるときは、どんなことに気を付けて与えればよいのでしょうか。
もくじ
たまごは、消化吸収のよいタンパク質源です。安価で入手しやすいことから、市販のドックフードに使用されていることも多い食べ物です。
タンパク質はアミノ酸が沢山つながってできた化合物です。アミノ酸にはさまざまな種類が存在しますが、大きく、体の中で合成ができない必須アミノ酸と、合成できる非必須アミノ酸に分けられます。
必須アミノ酸がバランスよく含まれているたまごは、効率よく体が利用できるため、良質なタンパク質と認識されています。
犬にたまごを与える際は加熱が必須です。ゆでたまごなどは食道で詰まる可能性があるため、細かくして与えることをおすすめします。
たまごは、ブドウやたまねぎのように少量で中毒症状を示す物質は含まれないため、健康な子犬・老犬に与えても問題ありません。
犬にたまごを与える際には注意が必要です。与える際に注意が必要なもの、与えない方がよいものについて解説します。
生たまごの白身には、ビオチンと結合し吸収阻害を起こすアビジンと呼ばれる成分が含まれています。ビオチンは、正常な皮膚や被毛を維持するのに必要な成分です。欠乏すると皮膚に異常(赤みや脱毛など)を引き起こすことが知られています。
一度与えたからといって、すぐに症状が出るものではありませんが、長期的に与えると症状が出てくる可能性があります。
たまごの白身を与える際は、アビジンの効果がなくなるよう、茹でたり、炒めたりして熱を加えましょう。
ちなみに、たまごの黄身にはビオチンがたくさん含まれています。黄身には熱が加わらず、白身のみに熱が加わっている半熟たまごのような状態であれば問題にはなりません。
たまごの殻はカルシウムでできており、卵殻カルシウムを使用した犬用サプリメントなども販売されています。
カルシウムは骨によいというイメージから、積極的に摂取したほうがよいと思っている飼い主さんもいますが、カルシウムを過剰摂取すると尿石症などのトラブルにつながることがあるので注意しましょう。
総合栄養食やAAFCOの基準にのっとったフードを食べている場合は、すでに十分なカルシウム量を摂取できています。
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手作り食の場合は、食材だけで犬が必要なカルシウム量を満たすのが難しいです。栄養組成を計算したうえで、足りない場合は補うようにしましょう。
自宅で余ったたまごの殻を利用しようとする方もいますが、細かく粉砕しないと口腔内を傷つける恐れがあり、保存に手間がかかります。カルシウムを補給する際は、市販のサプリメントを利用したほうがよいでしょう。
卵殻カルシウムを使用したサプリメントは、原材料欄に「焼成カルシウム」「未焼成カルシウム」などと記載されていることが多いです。
病気によっては、タンパク質を制限しなくてはならない場合もあります。もっとも有名な病気としては腎臓病です。
腎臓病になると、タンパク質を代謝して出た老廃物をうまく排泄できなくなります。タンパク質を多く与えると体の中に老廃物がたまり、気持ち悪くなったり、嘔吐下痢などの尿毒症の症状を示したりすることがあります。
そのため、タンパク質制限が必要な病気をもつ犬の場合は、タンパク質が多く含まれるたまごを与えることには、慎重にならなければなりません。
一般的には、腎臓病で療法食を与えるレベルの状態では、市販の食事にたまごを追加で与えるのは難しいと考えられます。どうしても与えたいという場合には、かかりつけの先生に相談してください。
また、腎臓病以外にもタンパク制限が必要な病気があります。現在治療中の病気があり、たまごや肉といった高タンパクなものをフードにトッピングしている場合は、かかりつけの先生に申告をお願いします。
犬のアレルギーには、大きく分けて、環境因子による犬アトピー性皮膚炎と、食物による食物アレルギーの2つがあります。
一般的に、特定の物質に対して、過剰に反応してしまうことをアレルギーと呼び、例えば、小麦アレルギーならば、小麦を食べると皮膚の赤みやかゆみ、嘔吐や下痢といった症状を起こします。
しかし、中には、食べ物や環境因子の類似するタンパク質の構造に反応して、アレルギー反応が出ることがあります。これを「交差反応」と呼びます。
犬の交差反応については詳しく調べられていないため、明確なことはいえません。人ではたまご(鶏卵)にアレルギーがある場合は、うずらの卵にも反応する可能性があります。
たまごは吸収率がよく消化器症状を起こしにくい食べ物ではありますが、与えて問題がないかを確認するために、少量から与えるようにしてください。
また、ドックフードの中に、たまごが含まれていることも多いため、知らず知らずのうちにたまごを摂取している場合もあります。
飼い主さんが初めてたまごを与えると思っていても、たまごを食べた後に皮膚の痒みや赤み、消化器症状などの問題が起きないか注意するようにしましょう。
中毒を引き起こす成分が入っていたり、消化が困難な食べ物だったりしない限り、おやつとして犬に与えることができます。
しかし、カロリーや栄養を考えて与えなければ、カロリー過多で肥満になったり、主食である総合栄養食のフード量が減って栄養バランスを乱したりしてしまいます。
では、犬にはどれくらいの量を与えてよいのでしょうか。目安をご紹介しましょう。
一般的に一日に与えるおやつやトッピングの量(間食)は、一日に必要なカロリーの10%程度にとどめるべきといわれています。体重1kgの犬が1日に必要なカロリーは約100kcal程度ですので、その10%だと10kcalとなります。
体重1kgの犬にゆでたまごをおやつとして与える場合は、1日最大でたまご1個の1/8程度までとなります
(たまご1個60g、80kcalとして算出。参考:文部科学省の食品成分データベース)
ここで、注意したいのは、1日に必要なカロリーと体重は比例していないことです。体重ごとの摂取目安量を紹介します。
体重3kgの犬の標準的な1日の摂取カロリー:約220kcal
おやつとして与えるたまごの量は、1/4個弱程度
体重5kgの犬の標準的な1日の摂取カロリー:約330kcal
おやつとして与えるたまごの量は、2/5個程度(25g程度)
体重8kgの犬の標準的な1日の摂取カロリー:約460kcal
おやつとして与えるたまごの量は、3/5個程度(35g程度)
上記の量は、おやつとしてたまごのみを与えた場合の目安です。他にもトッピングやおやつも与えているようであれば、カロリーを算出し、その分のカロリーを引いた上でたまごの最大摂取量を決定しなければなりません。
人の感覚だけでカロリーを正確に測るのは難しく、測ったものが実際のカロリーとは大きくかけ離れていることも少なくありません。
飼い主さんの感覚で犬におやつを与えていると、消化器症状を引き起こしたり、長期的には栄養素の過剰や欠乏になったりする可能性があります。ぜひ、愛犬の1日の摂取カロリーを計算し、安心しておやつを与えられるようにしましょう。