DC one dish獣医師の成田有輝です。市販のペットフードには数えきれないほどの製品があります。「カリカリ」とよくいわれるドライフードや、ペースト状のウェットフードなど、形状によって大まかな分類ができます。ペットフードにはどういった形状の製品があり、どのように作られているのかを知ってみましょう。 前回の記事:【獣医師監修】犬って肉食?雑食?犬にとってバランスの良い食事とは?|vol.4
もくじ
近年のペットフードは、形状や製造方法の違いだけでなく、好みや予算、体調(病気)などに合わせていろいろなフードが作られています。
ドライフードを与えている飼い主さんが最も多く、一般的だと思われている方も多いと思いますが、様々な選択肢があることを知っていただき、ご自身と愛犬・愛猫に合ったフードを選びましょう。
飼い主さんの中では「ドライ」「カリカリ」と表現されることが多いドライフード。ペットフード公正取引協議会では、「乾燥発泡品で水分がおおむね10%前後ともの」と定義されています。
製造方法は多岐にわたりますが、水分を減らすことで細菌などの繁殖を防ぎ、常温で長期保存できるようになっています。しかし、パッケージを開けたり閉めたりしていると徐々に酸化していくため、開封後は1か月をめどに食べきるとよいとされています。
ドライフードの主な製造方法を挙げてみましょう。
市場に最も流通しているもので、皆さんがドライフードといって想像するものがこれにあたります。エクストルーダーと呼ばれる機械の中に原材料を入れ、高圧、高温(最大で180℃程度)をかけて成形を行います。
安価で大量に製造でき、同時に原料の殺菌もできる方法です。
製造中にメイラード反応が起こるため、色の濃い薄いはあっても、着色料を使用しない限り、「茶色」以外の色で製造することは難しいです。
エクストルーダーとは異なり、加熱工程をオーブンで焼く、いわばクッキーを作るように製造する方法です。
加熱温度がエクストルーダー製法よりも低く、フードに含まれる栄養素が壊れにくいといわれています。
温風をあてて乾燥を行う方法です。ジャーキーを作るのに似た方法になります。
エクストルーダー製法と比較して、機械の中を通ることが少ないため、意図しない原料の混入(コンタミネーション)のリスクが少ないといわれています。そのため、食物アレルギーをもつ子には、よいといわれることもあります。
しかし、製造に手間がかかるため非常に高価な製品が多く、この方法で国内製造されている製品は、少ないのが現状です。
ウェットフードは、ペットフード公正取引協議会において「缶詰、アルミトレー、アルミパウチなどに密閉容器入りで水分が80%程度のもの」と定義されています。
水分が非常に多いため、水分摂取が必要な尿石症などの病気を持つ犬や猫に推奨されたりします。また、水分含有量が多いため、ドライフードと比較して、多くの重量を食べなければなりません。
密閉、脱気後に加熱を行い製造しているため、長期保存も可能です。しかし、開封後は劣化が早いためすぐに冷蔵保存をしたとしても数日以内に食べきる必要があります。
一般的に、犬はドライフードに比べてウェットフードを好んで食べてくれることが多いとされています。
猫の場合は、今までの食事歴にも影響を受けるため、どちらを好むのかは一概にいえません。
エクストルーダー製法のドライフードと比較し、カロリー当たりの価格や重量(g数)当たりの価格は高くなります。
水分含有量が25~35%程度で、空気を含んでいるものをソフトドライ、空気を含んでいないものをセミモイストといいます。どちらも立ち位置としてはドライフードと、ウェットフードの中間にあたります。
製造できるメーカーが少ないことや、水分量が多く細菌などが繁殖しやすいことから、保存料、湿潤調整剤などを使用しています。
愛犬の食事を気にする方が増えてか、市場から徐々に減っている印象があります。
フレッシュフードは一般的に、人の食品と同じ原料や工程(調理)によって、製造されるフードのことをいいます。
冷凍で販売されているものが多く、近年シェアを拡大している分野のフードです。人と同じ原材料が使用されていることや、原材料が目に見えることでの安心感が選ばれる理由となっています。
しかし、フレッシュフードには明確な定義が存在しておらず、「人の食品と同じ原材料(食材やサプリメント)」を使用している製品を指すのか、「調理方法が人と同じ」なのか、「衛生面まで人の基準」であるのかなどが混在しています。
好んで食べてくれることが多いとされていますが、原材料・調理・衛生面が人と同じであれば、人の食費と同じくらいコストがかかると考えたほうがよいでしょう。
フリーズドライフードは、真空凍結乾燥と呼ばれる方法で製造したフードのこと。原材料中の水分を凍結し、真空状態で水分を極限まで飛ばす特殊な機械で作ります。他のフードに比べて水分含有率は低く、5%以下となります。
人のインスタント味噌汁でなじみのある方も多いかと思いますが、宇宙食や非常食にも使われる方法で、原材料の形態を保持したまま、加工工程による栄養素や風味の変化が少なく、長期保存が可能です。
水分が抜け、細かい穴が開いているため、水分を足したときの復元性に優れています。
原材料そのものの形が見える安心感と、好んで食べてくれることが多いという点から選ばれることが多いです。しかし、フリーズドライフードは加工費用が高いため、結果として、価格も非常に高くなります。
液体タイプのフードで、主に犬や猫の流動食として使用されています。
何かしら病的な理由があり固形のものを食べにくい、または、食べることができない状況の時に最適です。
一般的にリキッドタイプのフードは、カテーテル内で詰まらないように設計されているため、1mlあたりのフードのカロリーは低く1kcal~1.5kcal程度です。
近年では胃からの排泄時間が早いことから、手術前の栄養補給として提案される場合もあります。
自ら食事を口にしなくなった場合にも活躍し、カテーテルを設置し、チューブで与えることも考慮された流動性となっています。
価格帯、好み、形状、水分量、原材料、加工工程など、何を重視してフードを選ぶかは飼い主さん次第です。
飼い主さんが、ペットの健康への関心が高まるのと同時に、さまざまなフードが販売されるようになりました。
しかし残念ながら、ペットフードは人の食品ほどの透明性をもつものは極めて少なく、飼い主さんにとっては少ない情報で判断をしなければならない状況にあるといえます。そんな中でも、愛犬・愛猫に合うフードを探し、最適なフードを選べたらよいですね。
次回は犬猫の食物アレルギーについて解説していきます。